日経平均と新型肺炎 「VI」で読む先行きの波乱株式投資の超キホン 日経平均を知ろう!(16)

年明け以降、新型コロナウイルスによる肺炎の患者数が世界的に増えています。工場の操業休止や見本市の開催断念など、日本企業の経済活動に影響が出ており、日経平均株価の値動きも国内外の感染状況に左右されるようになってきました。

世界的なニュースとなった発端は日本の株式市場が年末年始で休場となった2019年12月31日です。中国の武漢市衛生健康委員会は「市内の医療機関で27人が原因不明のウイルス性肺炎を起こした」と発表しました。その後も感染者は増え続け、日本国内では翌20年1月16日、厚生労働省が1例目を発表しました。ただ、まだ感染の規模や経路が分かりづらかった面もあり、日経平均への影響は限られていました。

株式相場への影響がみられるようになったのは1月下旬、武漢市で主要交通機関がストップし、中国政府が国内だけでなく海外の団体旅行を禁じるようになったころからです。1月27日に日経平均は今年最大の下げ幅(483円67銭)を記録し、2月3日には19年11月1日以来、約3カ月ぶりの安値となる2万2971円94銭をつけました。春節(旧正月)の大型連休期間のインバウンド(訪日外国人)消費を見込んでいた衣料品や化粧品、テーマパークなどの銘柄が軟調となりました。

横浜港に着岸したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の前に並ぶ救急車両(6日午前、横浜市鶴見区)

米国や欧州の株式市場でも新型肺炎が世界の景気や企業業績に与える影響を警戒した売りが出ています。発生源の中国ではいまだに感染者数や死亡者数が増え続けていますし、日本でも感染経路が不明瞭な患者が出始め、海外渡航歴のない患者が亡くなりました。事態は深刻さを増しているように見えます。収束の道筋が見えないなか、投資家たちは今後の日経平均の値動きをどう捉えているのでしょう。

手掛かりになる指標の一つが「日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)」です。一言でいえば「この先の日経平均の値動きの大きさを予測する指数」で、日本経済新聞社が10年11月19日に公表を始めました。データは1989年6月12日までさかのぼっており、いまは毎営業日、15秒間隔で算出しています。

皆さんはオプションという言葉を聞いたことがありますか。投資の世界では、あるモノ(例えば株式としましょう)をある時点に、ある値段で売り買いする「権利」を指します。買う権利をコールオプション、売る権利をプットオプションと呼びますが、こうした権利の価格は、あるモノ(株式)の将来の変動率をもとに決まります。例えば先行きの相場が下がりそうなら、売る権利の人気は高まるかもしれません。相場反転を狙って、買う権利も活発に売買される可能性もあります。日経平均VIの数値は、オプションの価格がより高く、幅広いレンジで売り買いされていれば、大きくなるように設計されています。話がややこしくなりましたが、ここではざっくり「オプションの投資家の相場観を映したのが日経平均VIだ」としておきましょう。

先行きの値動きが荒くなるとみる投資家が増えると、日経平均VIは上昇します。その動きは日経平均と逆相関と言われています。過去の事例を踏まえると、30が一つの目安で、この水準を上回り続けると投資家は現物株の値下がりリスクを意識するようになるようです。数値が30であれば、1年後に日経平均がプラスにもマイナスにも30%変動する可能性が7割ほどある、ということを意味しています。

30が目安なら、現在の日経平均VIは低水準と言えます。ただそんななか、新型肺炎の広がりで日経平均が大きく下げた1月27日には跳ね上がり、翌28日には節目の20を一時上回りました。2019年8月26日以来、約5カ月ぶりの20台乗せでした。2月に入ると日経平均VIは小康状態にあります。事態がまだ収束を見通せないなかでも、日経平均VIを見る限り、現時点ではこの先の日経平均にそれほど大きな波乱はないという見方が広がっているのです。

かつて、感染症が株式相場に影響を及ぼした事例として、02~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)があります。02年11月に中国の広東省で発生し、03年7月に世界保健機関(WHO)が終息宣言するまで感染者は8098人、死者は774人に達しました。

当時の日経平均は国内の景気先行きに対する不安や北朝鮮の核問題などもあり、03年3月に8000円を割り込みました。翌4月にはソニーの業績悪化を受けて日本株が大きく下げた「ソニー・ショック」が起こり、当時としてはバブル経済崩壊後の最安値となる7607円88銭まで下落しました。

日経平均VIは特に03年3月に上昇しました。その前までは25~26近辺だったのが、3月に入ると30を超え、しばらくその水準で推移しています。SARSがアジア諸国・地域を中心に世界で急速に広がり、日本でも政府がSARSを新感染症に指定しました。03年4月23日付日本経済新聞朝刊は「感染拡大に伴い、中国進出企業の生産に支障が出始めた」ため株式市場に企業業績への警戒感が台頭した、と伝えています。

日経平均が大きく下げたのは03年4月で、翌5月から1万円台に向けて反転していきますが、日経平均VIは3月に目立って跳ね上がった後は低下傾向をたどりました。SARSの拡大不安が広がった当初こそ日経平均の波乱を見込んだ投資家が多かったのかもしれませんが、その後はある程度の影響を織り込んだのでしょう。5月に日経平均VIは20を割り込む日が出始め、WHOの終息宣言が出る7月まで大体20台前半で推移しました。

ほかにも例えばエボラ出血熱の感染不安が広がった14年10月中旬以降、日経平均VIはその前の月までの16~17から一時は30台に上昇しています。その後14年末まで25近辺の水準で推移しました。

今回の新型肺炎はこれから世界の実体経済への影響が見えてくるようになります。現時点で日経平均VIは落ち着いていますが、中国の1~3月期の国内総生産(GDP)成長率や、主要企業の本決算発表などで影響が明らかになれば、数値が上昇することは十分に考えられます。

リアルタイムの日経平均VIは日本経済新聞社の指数公式サイト「日経平均プロフィル」から指数一覧をたどっていくと確認できます。相場を見通す一つの手がかりとして、日経平均の値動きと一緒にチェックしてみるといいでしょう。

(インデックス事業室 遠藤繁)

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