賃貸物件、仲介手数料は半月分?1カ月分? なぜ混在弁護士 志賀剛一

 本事案に即していえば、審査をパスし、賃貸借契約日を設定した1月10日に仲介が成立したと認定し、それ以後に「仲介手数料は賃料の1カ月分です」と説明して承諾を得ても、それは事前に承諾していたことにはならないというのが裁判所の判断です。

 仲介業者側は上告しましたが、20年1月14日、東京高等裁判所(第1審が簡裁の場合、高裁が上告審になります)は仲介業者側の上告を棄却しました。「仲介手数料の半額を返還せよ」との東京地裁の判断が維持され、確定したのです。

 以上を整理すると、この紛争の争点は(1)仲介業者は手数料を賃料1カ月分とする承諾をいつまでに取得する必要があるのか(2)仲介契約はいつ成立したのか――の2点であったといえます。

 判決は(1)については「仲介契約成立」までに得る必要があるとし、(2)については書面による賃貸借契約の前であっても、紹介した物件について借り手が「ここを借りたい」と希望し貸主側もOKすれば、そこで賃貸物件の「仲介」契約は成立するという判断をしたものと解されます。

業者側は「1カ月分承諾」の書面取り付け

 東京地裁判決以降、仲介業者各社は入居申し込み手続きより前に、借り手から仲介手数料を賃料の1カ月分とする承諾を書面で取り付ける取り扱いを徹底しているようですので、相談のケースも含め仲介手数料が法の原則どおり賃料の0.5カ月分になることはあまり現実的ではないように思います。

 もちろん、「私はそんな承諾はしない! 0.5カ月分の業者を探す」という人もいるかもしれませんが、他の業者を探しているうちに気に入った物件がなくなってしまうかもしれませんし、難しいところです。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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