賃貸物件、仲介手数料は半月分?1カ月分? なぜ混在弁護士 志賀剛一

 もちろん、多くの場合、仲介業者は借り手からこの「承諾」を得て賃料の1カ月分を受け取っているはずです。ただ、仲介業者が受け取れる上限が賃料の1カ月であることに変わりはなく、借り手から賃料の1カ月分を受領してしまえば、仲介業者としては貸主から仲介手数料を受け取ることはできません(貸主からも広告費という名目で実質的に手数料を受け取っている仲介業者もいるとの指摘もありますが、本稿では触れません)。

 このように、実務上は宅建業法の原則と例外が逆転しているといってもよい状況です。そんな中で、以下のような言い分の借り手が現れ、仲介業者である東急リバブルを被告にして裁判を起こしたのです。

借り手の事前承諾の有無が争点

 「借り手の承諾を得ないまま賃料1カ月分の仲介手数料を支払った。宅建業法の定める仲介手数料の原則は賃料の0.5カ月なのだから返還せよ」

 この裁判、第1審の東京簡易裁判所(争いの額が140万円以下の事件の第1審は原則として簡裁の管轄になります)は借り手の請求を認めませんでしたが、第2審(控訴審)の東京地裁は「仲介業者が賃料1カ月分の仲介手数料を請求する場合は、物件の仲介をする前に承諾を得る必要があるが、仲介業者は事前に借り手から承諾を得ていなかった」と判断し、被告に対して仲介手数料の半額(0.5カ月分)の返還を命じました。借り手の承諾がなければ宅建業法の原則どおり賃料の0.5カ月が仲介手数料となるので、差額分の返還が命じられたのです。

 結論部分だけがややセンセーショナルに報じられたので、「これからは0.5カ月分だけ支払えばいいんだ」というような誤解が一部で出ているようですが、判決をみると「物件の仲介をする前に借り手の事前の承諾があったかどうか」が争点となっています。報道されている範囲では、時系列は以下の流れであるようです。

(1)2012年12月28日 入居申込書を仲介業者に提出
(2)13年1月8日 借り手、契約する意思を仲介業者に連絡
(3)13年1月10日 仲介業者の担当者が契約日を借り手に連絡
(4)13年1月15日 1カ月分の仲介手数料が記載されている明細書を借り手に提示
(5)13年1月20日 賃貸借契約締結

 仲介業者側は、賃貸借契約を締結した1月20日が仲介成立日であり、その5日前である15日の段階で明細書を確認させて借り手も承諾しているのだから、1カ月分の仲介手数料を取ることに問題はないと主張しました。

 しかし、裁判所は仲介業者と借り手との間で仲介が成立したのは、仲介業者の担当者が借り手に契約締結日を連絡した1月10日であり、この時点ではまだ仲介業者は賃料1カ月分の手数料を受け取る承諾を借り主から得ていなかったと認定しました。

裁判所「事前承諾ではない」と判断

 賃貸物件を借りる場合、店頭広告などを見て、まず物件の内覧を申し込むと思います。その際、入居申込書を書く場合もあるでしょう。内覧後、借り手が物件を気に入れば「借りたい」という意思を仲介業者に告げ、仲介業者は貸主にも連絡し、借り手の資力など審査を行います。

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