顧客の苦情が身に染みた リーダーに求められる誠実さ島津製作所社長 上田輝久氏(上)

「それを聞いて『まずいな』と思いました。日々の業務に追われていることもあり、新規案件を断るのが先となってしまい、いわゆる『上から目線』になっていたのです。そこで共同研究を積極的に増やすことにしました。すると効果は大きく、島津だけではわからなかった新しい知見が得られるようになりました。いまでは、当社が自ら先頭に立って共同研究を進めるようになりました」

自らの考えに固執してはならない

「従来、社外との共同研究はさほど多くはありませんでしたが、社長に就いてからはより強く意識して進めるようにしました。すると、想像以上に我々が必要とする人材が外部にたくさんいることも分かりました。そうした人材と共同研究に取り組めば、新しい知識を得られ、島津の評価も上がる。トップとして、自らの考えに固執するのではなく、いろいろな角度から物事を見る必要があると改めて痛感しました」

――研究成果をどのように事業化できるかが重要です。

「仕組みづくりもリーダーの大きな役割です。以前の研究は論文発表で終わっていましたが、現在はその先の事業化を意識するように改めました。研究計画の立案段階で、期待されるアウトプットを明示するようにしました。ひとつひとつの研究成果は決してゴールではありません。共同研究に取り組む社外のパートナーも中長期的な協働を望んでいます。日本のアカデミズムの世界では、研究資金の確保はいつも難しいのが実情です。いろいろなアイデアをもとに研究開発を進めて、製品化に結びつけていく。そうした長期的な関係は双方のメリットになると考えています」

その働きぶりから「社長は3人いる」と称されるほど。お気に入りのテレビドラマは「科捜研の女」。自社製品が登場するだけでなく、「1時間で様々な問題が科学的に解決する」のがお気に入り。社内にはもっとスピーディーな対応を求めて「『科捜研の女』を見習え」と笑う。社長になって始めたゴルフは練習中。動画投稿サイト「ユーチューブ」を見ながらの練習が「いい感じ」だとか

――研究開発の成果が必ずしも事業化に成功するとは限りません。

「当然『失敗だった』ということもあります。そうした際には、即座に軌道修正する柔軟さがトップには必要です。『朝令暮改』となることもあるでしょう。しかし、それはいたしかたがないことです。なぜなら、リーダーの役割は決断することにあるからです」

「過去いろいろな研究開発プロジェクトを手がけてきました。私が心がけてきたのは、徹底的に理詰めで検討し、実現できるのか否か、その可能性を関係者と議論するということです。技術的な課題についても、ロジックで説明できることが重要です。決して、勢いだけで決めてはいけません。ただし、『正解だ』と結論づけたらとことんやる。諦めないことが大切です」

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上田輝久
1957年(昭32年)山口県生まれ。82年京大大学院工学研究科修了、島津製作所入社。主力分析機器の「液体クロマトグラフ」の開発などを手がける。11年取締役、分析計測事業部長などを経て、15年から現職。

(赤間建哉)

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