「キャリア迷路(モヤキャリ)」から抜け出すためのコミュニティーを主宰する池田千恵氏は、会社でやりたいことを実現して、副業と本業のシナジー効果を得られるようにするためには、自分の勝ちパターンを客観的に知り、自分自身をマネジメントすることが大切と説きます。今回は雑誌や単行本編集で身につけた「編集力」を横展開し活躍している前「レタスクラブ」編集長の松田紀子さんから、自分自身をマネジメントするコツについて池田氏が聞きました。
「公私混同力」を磨くために必要な「編集力」とは?

シリーズ累計300万部の大ヒットとなった「ダーリンは外国人」(小栗左多里著、メディアファクトリー)を手がけ「コミックエッセイ」というジャンルを確立、料理雑誌編集経験ゼロで編集長に就任した主婦向けの生活情報誌「レタスクラブ」は4回完売、2018年には料理・レシピカテゴリーの雑誌で売上1位を記録と、華々しい実績をお持ちの松田さん。現在はファンベースカンパニー(東京・港)にて、今まで培った「編集力」を横展開し活躍中です。
――松田さんは今まで、コミックエッセイというジャンルを確立して、レタスクラブをV字回復させるなど、編集の分野でご活躍でしたが、ファンベースカンパニーではどのようなお仕事をされているのですか?
ファンベースカンパニーは、社外・社内にすでに存在している「ファン」をベースにして中・長期的に売り上げや価値を上げていくという取り組みをしている会社です。クライアントと一緒にファンベースプロジェクトを立ち上げ、伴走し、プランニングや実践をしています。
クライアントのそれぞれの課題や思いによって実行していくプランは様々です。初段階で多いのは「ファンミーティング」ですね。これは、コアな少数のファンに集まってもらい、ファン同士で「その商品の好きなところ」などを自由に話してもらいます。
ファンベースカンパニーは昨年5月に生まれたばかりで、上下間のないフラットで自由な会社です。文化も社是もこれからつくって、みんなで育てていこう、という感じですね。
――レタスクラブで結果を出されたのであとは安泰というか、そのまま役員になったり、編集者としての道を究めたり……が一般的なのでは?と感じるのですが、どうして今、ファンベースカンパニーに参画したのですか?
レタスクラブの編集長職は3年で結果を出す!と決めて全力で取り組みました。ここで私が編集長を抜けないと、後に続く人たちのポジションが生まれないので譲りたいと思ったんです。組織の中での役員コースも正直興味はありませんでしたし、他の出版社で編集者をするイメージもあまりわきませんでした。
そんなとき、レタスクラブ再建の時期に通わせてもらった「さとなおオープンラボ」を主宰するさとなおさん(注:コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さん)がファンベースカンパニーを立ち上げると聞き、私が行くべき場所は絶対にここだ!とピンときました。いわば野生のカンですね。
さとなおさんが提唱するファンベースの考え方は、レタスクラブで実践し、手応えもありました。雑誌だけじゃなく、もっといろんなところでファンベースを試してみたいと感じていました。
コンテンツをつくるときに必要な「編集力」は、「そこに横たわる名もなき 『価値観』 を言語化し、パッケージにして『ほら!』と差し出す力」だと思っています。雑誌や本づくり以外でも「編集力」を使えるんじゃないの?と思うとワクワクが止まらなくなってしまいました。