日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/2/14
パルクと呼ばれるそりを引くオブレイディ氏。100キロ以上の物資を積み、54日間で約1500キロを踏破した(PHOTOGRAPH COURTESY, COLIN O'BRADY)

その後の3日間で、極地探検の経験が豊富な年上のラッド氏がオブレイディ氏に迫り、ドラマティックな幕引きの舞台が整った。ところが、52日目、オブレイディ氏の日課になっていた夕方の投稿がなく、遠くから見守る人々を心配させた後、午前1時、彼はある宣言を行った。

「今朝、ゴールから約130キロの地点で目覚め……一見不可能な疑問が頭に浮かびました。最後まで一気に進めるだろうかという疑問です」

南極は夏でも氷点下だが、太陽は沈まない。オブレイディ氏は世界最大の氷帽で、歴史的な大陸横断を最初に成し遂げるのは誰かという問題の答えを出した。

「やってみせます」とオブレイディ氏は宣言した。「これから休みなく進み、ゴールまでの130キロを一気に駆け抜けようと思います。現在、18時間で80キロ弱進んだところです」

氷の大陸をスキーで横断することは多くの危険を伴う。どこに深いクレバスが待ち受けているかわからず、骨の髄まで凍りそうな気温はどんなに健康な人の命でも奪う。2カ月近くにわたって超人的な旅を続けた後、このような環境で130キロを駆け抜けるというのは考えられないことだ。しかし、自身の探検を「不可能第一主義」と呼び、しばしば「私たちは皆、未開発の潜在能力を隠し持っています」と断言するオブレイディ氏は、その言葉を体現してみせた。オブレイディ氏は30時間以上休まずスキーを走らせ、ロス棚氷に到達し、世界初の人力による単独での南極横断を成し遂げた。

一方、ラッド氏はクリスマスの夜、ゴールまで約130キロだと報告した。「状況、路面、天気が許せば」、3日間かけて進む予定だ。オブレイディ氏の大胆さとは対照的に、53日間、すでに世界一過酷な環境で体力の限界に挑戦し続けてきたラッド氏にとっては、非常に大きな挑戦となる。

それがラッド氏の計画だ。「南極のことはわかりません。何が起こるか予想もつきません」

ラッド氏は56日目となる12月29日、ロス棚氷に到着し、2人目の単独、無支援での南極大陸横断をなし遂げた。オブレイディ氏はラッド氏の到着を待っており、ラッド氏の到着を歓迎した。

(文 AARON TEASDALE、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年12月28日付]