苦しい心に寄り添う会話 認知症ケアの質を高める人生の景色が変わる本(11) 『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』

要点3 認知症の人たちは違う世界を見ている

認知症の人が見ている世界は、私たちのそれとは違うと考えたほうがいい。例えば見当識(場所・時間・人を認識し、自分が置かれている状況を理解する能力)に障害が起きた状態とは、眠っている間に知らない場所に連れていかれたようなものだ。どこにいるのか、今はいつか、そこにいる人が誰なのかも分からない。そこに来た経緯を思い出そうにも記憶がない。症状によっては、慣れ親しんだ場所も家族も分からなくなる。不安で仕方なくなるのは当然だ。

要点4 怒らない、否定しない こまめに話しかける

周囲の人が心がけるべきは、苦しんでいる相手の立場に立って考え、怒らないこと、否定しないこと。ただでさえ不安なのに、声を荒げられたら拒絶されたと感じ、心を閉ざしてしまう。うつ状態になったり、妄想や徘徊などの症状が悪化したりする恐れもある。いつも笑顔で接し、同じことを聞かれたら何度でも答えてあげる。いちいち間違いを訂正しない。そして面倒がらずに話しかける。認知症ケアの質を高める一番の要素は、コミュニケーションなのだ。

要点5 認知症の人にお礼を言う場面をつくる

介護者は進んで人の力を借りよう。「認知症の人と家族の会」「認知症カフェ」などで、同じ立場の人と関わりたい。また、「何が虐待か」は常に意識する。体を拘束する、食事を与えない、振り払うなどは、事情を問わず虐待だ。簡単な作業を頼むなどして、認知症の人に「ありがとう」と言う場面をつくることも大事。面倒を見られるばかりで引け目を感じている相手も自分も気持ちが安らぐ。

(手代木建)

[日経ウーマン 2020年1月号の記事を再構成]

認知症の人の心の中はどうなっているのか? (光文社新書)

著者 : 佐藤眞一
出版 : 光文社
価格 : 924円 (税込み)

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