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佐藤眞一著 光文社新書

佐藤眞一著 光文社新書

今のところ4大認知症(アルツハイマー型、脳血管性型、レビー小体型、前頭側頭型)を治す術(すべ)はない。科学的根拠のある予防法もない。しかし周囲の対処の仕方次第で生活の質を上げること、症状を緩和することはできる。

本書はとりわけ重要な、認知症の人とのコミュニケーションについて、最新の研究成果から具体的な方法を示す。随所で紹介される介護現場の事例は興味深い一方、気分が重くもなるが、親を持つすべての人に関わる問題だけに目をそらすわけにはいかない。将来に備えたい人も既に介護に直面している人もぜひ読みたい本。介護者と要介護者、双方への優しさがにじむ筆致に元気が湧いてくる。

要点1 認知症の人の会話には特徴がある

認知症の人の会話には、何度も同じ質問をする、相手が誰かの認識が曖昧、話に関心を示さない、質問をしても答えられずごまかす、話に具体性がない、話がどんどんそれる……などの特徴がある。著者が作成に関わった「日常会話式認知機能評価 CANDy」のようなツールでこれらをチェックすると、認知症かどうか、認知症なら現在どのような状態にあるかを判断できる。それにより、相手の反応にイライラせず気軽に話しかけられるようになるなど、コミュニケーションを改善できる。

要点2 途方もない不安が認知症特有の言動に

認知症の人の言動にはそうせざるを得ない背景、理由がある。脳の機能低下により記憶がない、状況を理解できない、判断できない、自分を客観視できない、などの状態にあるため、不安が募ったり自分を守ろうと過剰に反応したりする。同じことを何度も聞くのは、それが本人にとって大事なことなのに記憶がないから。「自分は天皇の末裔(まつえい)」といった誇大妄想的なことを言うのは、日々、自己評価が崩れていくなかでなんとか自尊心を保つため。認知症になると、表情や言葉遣いから相手の心中を推察する社会的認知のスキルも低下する。そのため婉曲な断りを理解できない、ルールを破って周囲が嫌な顔をしても平気でいる、といったことになる。認知症の人に違和感や不快感を覚えたら、努めて「病気のせいなのだ」と考えたい。

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