夫と家事分担進むスマート洗濯機 洗い方はAIにお任せ
スマートホームとは、スマート家電を使って快適に暮らせるように工夫されている家のこと。家電コーディネーターの戸井田園子さんは、「スマート家電を上手に使えば、快適な生活が手に入ります」と話します。今回のテーマは「自動洗濯機」です。人工知能(AI)を活用したイマドキの洗濯スタイルについて知っておきましょう。
洗濯機をスマート家電にするメリットとは
一言で「スマート家電」といっても、そのメリットはさまざま。例えばロボット掃除機は、時間さえ指定しておけば、あとは人間が何もしなくても自動で掃除します。掃除が終わったら、自分で充電ステーションに戻り、充電開始。「ロボット掃除機の登場で、日々の掃除については何も考えずに済むようになりました」(戸井田さん)
しかし今回紹介する洗濯機は、そうではありません。洗濯物を洗濯機の中に入れたり、スタートボタンを押したりするのは、私たち人間。少なくとも、洗濯のことを考えずに済むレベルにはなっていません。
それでは何が「スマート」になるのでしょうか。戸井田さんは「洗濯の初心者が、達人と同じように洗濯できるレベルになること」と言います。「家事をシェアしようとしても、洗濯だけは夫など、家事の苦手な家族に任せられないという人は多いんです。それは『ちゃんと洗わないと大事な服がダメになってしまう』から。この不安を解消するのが、洗濯機のAI機能。AIを備えた洗濯機があれば、安心して家事の苦手な家族に洗濯を頼めるようになります」(戸井田さん)
AIを活用すれば「洗剤の壁」が乗り越えられる
家事の苦手な家族に洗濯を任せられない第一の理由は「洗剤の壁」。
「上手に洗濯するには、適切な洗剤を適切な量で投入すること。ジェルボールの登場でこの壁はある程度クリアされ、家事の苦手な家族が洗濯を担当できるようになったという話を聞きます。ただしジェルボールの場合、適切な量かどうかは疑問。洗濯が多くても少なくてもジェルボール1つ入れるという状況にモヤモヤしている人は多いのでは?」(戸井田さん)
その点、「洗剤自動投入」機能を備えた洗濯機であれば心配なし。洗濯物が入ると衣類の重量を検知し、適量の洗剤や柔軟剤を自動投入します。これなら、洗剤の分量問題にモヤモヤすることもありません。
「もともとは手間を減らす目的で開発された機能ですが、パナソニックが1 年間モニター調査したところ、使う洗剤の量が減ったということ。エコ効果も期待できるんです」(戸井田さん)
適切な洗い方で衣類の寿命を延ばす
問題は洗剤だけではありません。衣類は適切な洗い方をしなければ、すぐに傷んでしまいます。大事な服をいつまでも着たいのであれば、衣類の「アンチエイジング対策」を忘れずに。
例えば、レースがあしらわれているインナーウエアはネットに入れて洗ったり、シルクはそもそも手洗いモードで洗ったり。ところが、家事の苦手な人は、そういった分類が苦手です。そのため、お気に入りの服をダメにされてがっかりしてしまうこともあるかもしれません。
「子どもが好きなプリントTシャツも、洗濯の鬼門。丁寧に洗わないとプリント部分が割れてボロボロはがれてしまったり、襟回りが伸びてしまったりしますよね。そんなことにならないように、衣類は適切な処理をして適切な洗い方をしなければなりません」(戸井田さん)
AI搭載洗濯機なら、そんな問題もクリアできます。例えば、後ほど紹介する日立の洗濯機は、いろんな衣類を同時に洗濯機に入れても、それぞれの衣類の汚れ具合を自動判断し、適切な洗剤の量とすすぎの時間をセットしてくれます。
「洗濯機に洗濯物を入れるとき、セーターやTシャツ、下着などの種類をボタンで選べば適切な洗濯モードで洗ってくれます。場合によっては『それは一緒に洗わないで』と言うアラートが出ることも。この指示に従って洗濯すれば、お気に入りの服もちゃんときれいに仕上がります」(戸井田さん)
帰宅時間に合わせて洗濯スタート
さらに、ネットにつながる洗濯機であれば、スマホを使った遠隔操作も可能です。
「帰宅時間に合わせて洗濯を終わらせておこうとタイマーをかけたけど、残業などで帰宅がずれることもありますよね。そんなときも、スマホアプリで指示すれば、洗濯が帰宅予定時間に完了。洗濯が終わってすぐに干すことができるので、洗濯機の中で衣類がしわくちゃになることもありません」(戸井田さん)
ただし、洗濯機に衣類を入れたり、蓋を閉めたりする必要があるため、完全自動とはいきません。これを解決するには、例えば仕事に行く前に洗濯物を洗濯機に放り込み、蓋を閉めるという習慣を付けておけばOK。洗剤は自動投入されるので、 外出先からアプリで指示するだけで洗濯が終わります。
お薦めスマート洗濯機3種
では最後に、お薦めのスマート洗濯機を紹介しましょう。
パナソニック 【NA-VX900AL/R】
衣類の種類や量に合わせて洗剤を調整するのは面倒なもの。パナソニックのNA-VX900AL/Rは、洗剤を自動で判断して投入する「洗剤自動投入機能」付き。タンクに液体洗剤や柔軟剤を入れておけば、適切な量を自動で計量して投入します。スマホのアプリとも連携しているので、外出先から洗濯スイッチをオンにすることも可能。「うちのパパは汗かきだから、パパの衣類は洗う時間を長めにする」といった具合に、家族や洗濯ものの種類に合わせたオリジナルの洗濯コースを作成し、登録しておくこともできます。
日立 ドラム式【BD-NX120E】/縦型【BW-DX120E】
こちらも洗剤自動投入機能付き。タンクが大きいため(洗剤1000ミリリットル・柔軟剤700ミリリットル)、詰め替え用パックに入っている洗剤が一回で全部入ります。独自のコンシェルジュアプリを使えば、洗剤の銘柄を設定したり、適切なコースをアドバイスしたりしてくれるから、初心者でも安心です。水の硬度や洗剤の種類、汚れの強さから、最適な洗浄時間やすすぎ回数などを判断する「AI洗濯」は、状況に応じて適切な洗濯法を選んでくれる機能。ドラム型・縦型ともに搭載されています。
シャープ ドラム式【ES-W112】/縦型【ES-PW11D】
無線Wi-Fiを搭載し、クラウドサービス「COCORO WASH」と連携。例えば天気予報の情報から、「今日は雨が降るから外に干すより乾燥機能を使うのがおすすめです」といったアドバイスを音声で伝えてくれます。スマホの「COCORO WASH」のアプリ画面から、洗濯の運転状況を確認したり、洗濯終了のお知らせ通知を確認したりすることも可能です。
大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。その後インテリア&家電コーディネーターとして独立。現在は、情報ポータルサイトAll Aboutをはじめ、雑誌・新聞・テレビなど幅広いメディアで活動中。家電業界出身ではない中立的な立場と消費者目線での製品評価や、分かりやすい解説に定評がある。好きな家電は、お掃除ロボットなど、家事を任せられて時間を産んでくれる「時産家電」。
(取材・文 井上真花)
[日経DUAL 2019年11月25日付の掲載記事を基に再構成]
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