「本物のぜいたく」慶大で解探る 老舗テーラー3代目ニッポン発ラグジュアリー(2)

2020/2/17

有識者巻き込み日本のラグジュアリーブランド発信

SDMでブランドについて研究していた時のことだ。ふと隅谷さんの脳裏にある疑問が浮かんだ。なぜ、日本にはラグジュアリーブランドがないのか。ファッションだけでなく、車、インテリア、リゾートなど多くの分野を見渡しても、ラグジュアリーブランドは欧米に集中している。2020年、世界のラグジュアリー市場は120兆円規模になると試算されているが、その内訳をみると、日本のブランドはほとんど入っていない。

シンポジウムの第2部ではファッションディレクターの森岡弘さんらが参加、日本人のモノに対する価値観の変化などを語った

そこで隅谷さんは、単純に嘆くのではなく、「欧米と日本では消費者がとらえるラグジュアリーの定義が異なるのではないか」と考えた。ならば、まずは日本人が想起する「ラグジュアリー」という感覚を明らかにし、ニッポン発のブランド構築に取り組んでもいいのではないか。19年10月、隅谷さんはともに学んだ有志らと、SDMの中に研究機関「オーセンティック・ラクシュアリーラボ」をつくった。有識者やファッション関係者を巻き込んで、ここから日本のラグジュアリーブランドを発信しようと思い立った。

19年11月、慶応義塾大学(東京・港)で「JAPAN'S AUTHENTIC LUXURY SYMPOSIUM」と題したシンポジウムが開かれた。主催はオーセンティック・ラクシュアリーラボ。欧米と日本を比較しながら、日本らしいラグジュアリーの条件や独特の美意識、ほんものとは何かなどについて意見交換した。いち早く趣旨に賛同した女性誌「FRaU」(講談社)はシンポジウムに合わせて、日本発ラグジュアリーを取り上げた特別号を発行した。今後も発行を続けていく。編集責任者である講談社の吉岡久美子さんは「日本のものづくりのすごさは、使う人を思いやるという情熱から技術が生まれているところにある。日本ラグジュアリーとは和にとどまらない『Global』、伝統にとらわれない『Contemporary』、流行を超えている『Timeless』なものだと思う」と話す。

隅谷さんらは今春にも、メンバーやサポーターを募り、多くの人々を巻き込んで、JAPAN'S AUTHENTIC LUXURYの委員会を発足する計画だ。委員会で再定義したニッポン発ラグジュアリーにかなう製品・サービスを表彰するアワードの創設などを目指す。「1964年の東京五輪には戦後の復興を世界に知らしめるという目標があった。今年は日本の本物を世界に発信する、ジャパンズ・オーセンティック・ラクシュアリー元年にしたい」と隅谷さんは言葉に力を込める。

(Men's Fashion編集長 松本和佳)

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