入場者4倍にV字回復 ピューロランドを救った女性館長サンリオエンターテイメント社長 小巻亜矢氏(上)

――業績にも表れましたか。

「長年赤字が続いていたのですが、2016年から単年度黒字が出せるようになりました。でも、私はただ、卵の殻をつついてみただけだと思うんですね。低迷続きではありましたが、スタッフの中にはいろいろなアイデアとかノウハウ、スキルが蓄積されていた。でも試すチャンスがなかった。私がやったのは、みんなの中にあるものがどうやったら出てくるか、つついてみることだけ。その最初のきっかけが、対話だったのです」

――組織を対話で変えるときに、気をつけるべき点はありますか。

「私が最初にみなさんにお願いしたのは、否定しないことでした。会議でどんな意見が出ても否定しないで、『そうね。それで……』と話を継ぐんです。否定してしまうと、その後を続けにくくなってしまいますよね」

「もう一つが、『優しい話し方とあたたかな聞き方』。標語にしてもらって、紙にプリントして会議の際にはテーブルの上に置いて見えるようにしました」

言葉を変えると行動も考え方も変わる

――言葉遣いを変えると、雰囲気も変わりますか。

「変わりますよ。何か発言したときに『何言ってんだよ』ではなくて『ああそうか、面白いね』って言ってもらえたら、安心して発言できますよね。きれいごとかもしれないですけど、本当にこれが大切なんです。ハラスメント防止策を考えるより、優しい話し方とあたたかい聞き方を心がける方がよっぽど効果的ではないかしら、と思うくらい」

「以前はやはり、強い言葉遣いをするスタッフもいたのですが、1年くらいかけて地道に働きかけ、ずいぶん変わりました。日々の言葉を変えると行動が変わるし、行動が変わると全体的に考え方も変わります」

――どう変わりましたか。

「アイデアが出てくるようになりました。対話フェスや朝礼で、管理職からアルバイトの学生までみんなのコミュニケーションが活発になって、いろんな意見をシェアできるようになったのがとってもよかったんです」

「エレベーターの中とか、昼食を食べているときなど、社員同士の雑談が生まれ、そこからヒントが得られるようになる。そうして社員からアイデアが出てきて始めたのが、イケメンが登場するショーとか歌舞伎とのコラボなどなんです。子供だけでなく大人も楽しめるピューロランドにする、という流れが、こうやって始まりました」

――対話の力は大きいですね。

「テクノロジーの世界だと、1人の天才的なイノベーターが研究を突き詰めて新しいものを生み出すことがあるでしょう。でも、エンターテインメントの世界は違うと思います。いろいろな感性の人たちによる、日々の小さなイノベーションが大事です。そのためには、声が出やすい『畑』をつくっておかないといけない。豊富な対話が生まれる畑にしておかないと、企業は生き残れない。私はそう確信しています」

小巻亜矢
サンリオエンターテイメント社長、サンリオピューロランド館長。東京出身、東大大学院教育学研究科修士課程修了。1983年、サンリオ入社。結婚退社、出産などを経て、サンリオ関連会社にて仕事復帰。2015年サンリオエンターテイメント取締役、16年サンリオピューロランド館長、19年6月から現職。子宮頸(けい)がん予防啓発活動「ハロースマイル(Hellosmile)」委員長、NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、一般社団法人SDGsプラットフォーム代表理事も務める。

(藤原仁美)

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