入場者4倍にV字回復 ピューロランドを救った女性館長サンリオエンターテイメント社長 小巻亜矢氏(上)

――みなさん、話してくれましたか。

「吐き出してくれました。真剣でした。みなさん口をそろえていっていたのは、『気持ちを話して』と言われたことはなかったということ。話してみて初めて、みなさん気づいたらしいんです。いろんなことがあるけれど、やっぱりピューロランドが好きだって。聞いていて本当に感動して、泣きました」

――会社勤めをしていて、気持ちを聞かれることはそう多くないと思います。

「ほとんどの会社がそうだと思います。私はサンリオに復帰する前にコーチングを学んでいました。コーチングは気持ちを聞くことから始まります。だから、アウェーの立場の私はまず、みんなの気持ちを聞くことから始めるべきだと思ったのです」

心のコップを空っぽにしてあげたかった

「改善策を考える前に、まずはスタッフの心のコップを空っぽにしてあげたかったのです。それまで、長期間にわたって経営が低迷し、社内の空気も決して明るくなかった。働いている人たちの心には、相当いろいろな思いがたまっているだろうと思いました。それをとにかく吐き出してもらったんです。コップがいっぱいいっぱいだと、他人の言葉も聞けませんから」

「吐き出した後は、いわゆる『美点凝視』をしてもらいました。いいところ探しです。ピューロランドを自慢するとしたら、これからどんなアピールをしたいか。気持ちを前に向けてほしかった」

「私はただ、卵の殻をつついてみただけ」と語る

――どうやって話を聞いたのですか。

「入社して最初の2カ月くらいでほぼ全員の話を聞きました。執行役員は1対1の面談、管理職とはワークショップの形式で、それ以外の人たちとは、部ごとのワークショップも開きました。また、『対話フェス』も開催しました。部署も世代も異なる社員たちが集まって、話をしてもらうのです。よく知らない社員同士も、少し話をすることで垣根が取り払われます。たとえば、男性社員が実はキティ好きだったなんてこともわかる。そういうコミュニケーションを生むことが狙いでした。私もまわりで聞いて、対話に出た話題を共有するようにしました」

朝礼は1日に10回以上も

「朝礼も始めました。アルバイトも含め全員が朝礼に参加します。出社時間がばらばらな職場なので、朝礼は多いときは1日に10回以上。朝礼は社員同士の自己紹介から始まり、接客を確認し合います」

――社内は変わりましたか。

「ものすごく。しかも、直後から変わりました。まず笑顔が増えた。それまでは会議でも発言が少なかったのに、お互いに絡むようになった。コーチングの経験から、対話には効果があると知っていましたが、ここまで効くとは思いませんでした。特に、40~50歳代の男性が自分の心を素直に開示するのは難しいものですよね。でもね、みんなが照れながらも、『もっとよくなりたいよね』という方向に変わっていったんです」

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
次のページ
言葉を変えると行動も考え方も変わる
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら