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自治体で「香害」対応進む 成分開示や基準求める声

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NIKKEI STYLE

「強い香りに困っているお子さんがいます」。茨城県つくば市は2019年春、市内61の小中学校や幼稚園にこんなタイトルのチラシを配りました。洗濯に用いる柔軟剤などの残り香で体調を崩すケースを周知し、給食の当番衣など共用物への使用は控えるよう呼びかけました。

柔軟剤や制汗剤に含まれる人工的なにおいで体調を崩す人は「化学物質過敏症」として知られ、全国の自治体が対応を強化しています。患者や家族でつくる任意団体「CS憩いの仲間」の調べでは、1月時点で全国105の都道府県や市町村が過敏症についてウェブサイトやポスターで周知しています。強い人工的な香りには「香害」という言葉も用いられ、自治体の議会での関連質問の数は過去20年あまりで300を超えました。

過敏症の中では住宅の化学物質に反応する「シックハウス症候群」が有名ですが、最近増えているのは洗剤などのにおいへの反応です。国民生活センターには柔軟剤のにおいに関する相談が13年度に328件届いて以降、件数は18年度まで年100件を上回っています。

埼玉県草加市の青山和子さん(75)は01年に新築住宅へ入居するとせきやだるさが止まらなくなりました。過敏症と診断されてからは投薬や点滴による治療を続けましたが、今も不慣れなにおいに接したりすると発症してしまいます。

青山さんは「人工香料を使うメーカーは個別成分を開示してほしい」と訴えています。市民団体などからも化学物質の成分表示や規制を求める声が上がっています。政府は過敏症の病態を解明する研究を進めているものの「発症の経路が明らかになっていない」として、現時点で目立った規制はしていません。

過敏症に対しては医療機会が乏しいという問題もあります。数少ない専門外来を設ける国立病院機構盛岡医療センター(盛岡市)には九州からも患者が訪れていますが、専門医が少ないため新規患者の受け入れを制限しています。同センターの水城まさみ呼吸器内科医師は「国は患者の実態把握を進め、化学物質の使用基準などを定めてほしい」と話しています。

柔軟剤などのにおいは生活のニーズと関係しています。マーケティングを研究する一橋大の松井剛教授は「加齢臭といった言葉が広がるのにしたがい、人々が自分のにおいを気にするようになった」と指摘します。自分のにおいを隠すための良い香りが相手を傷つける場合もあります。化学物質過敏症を30年にわたり研究する北里大学の宮田幹夫名誉教授は「せめて学校や病院など公共施設では強い人工香料を控えてほしい」と話しています。

×   ×   ×

人工香料に反応する化学物質過敏症はどんな病気なのでしょうか。患者や家族が集まる任意団体「CS憩いの仲間」の青山和子代表と、そよ風クリニック(東京・杉並)院長で、約30年にわたり過敏症を診断している北里大学の宮田幹夫名誉教授に話を聞きました。

青山和子・「CS憩いの仲間」代表「症状は『十人千色』」

――どのように発症したのですか。

「01年に新築住宅に入居したのをきっかけに、頭痛やせきが止まらないようになりました。目がちかちかして涙も止まりませんでした。私の場合は幸いにして早めに化学物質過敏症の専門医の診断を受けることができました。(建築基準法で規制対象となった)ホルムアルデヒドが原因の1つとわかってからは、解毒剤を飲んだり点滴したりするなどの治療を受けました。住宅洗剤から野菜に含まれる農薬まで様々な化学物質に体が反応してしまいます。何を食べたらいいのか、何を使ったらいいのか、わからない時期が続きました。同じ場所に暮らし、同じ物を食べても家族は反応しませんでしたから、周囲の理解を得るのも大変でした」

「農薬や肥料を使わない野菜や天然原料のせっけんなどを使うことで少しずつ反応を避けられるようになりましたが、今も不慣れな場所で洗濯の柔軟剤や住居の芳香剤に接すると体調を崩してしまいます。患者が集まって症状について話し合うと、それぞれ別々の香料に反応し、症状もバラバラであることがわかりました。化学物質過敏症の症状は十人十色ではなく『十人千色』といえるほど個人差が大きいと思います」

――政府やメーカーにはどのような対応を求めますか。

「柔軟剤などに含まれる人工香料については個別の成分をすべて開示してほしいです。そうすれば患者はリスクを避けることができますし、開示できないような物質は使わないでほしいとも思います。特定の化学物質に反応してしまう人は一握りかもしれません。しかし多くの患者の経験をたどると、同じものを使い続けることによる蓄積で発症したり、健康だった人が突然発症したりするケースもあります。過敏症が決して少数の人の病気だとは思いません。インターネットなどでも『隣の席の人の香料が強すぎる』といった声は多く上がっています。健康な人からの声が大きくなることで化学物質の使用が減ることを期待しています」

宮田幹夫・北里大学名誉教授「公共の場から規制を」

――化学物質過敏症の患者にはどのような傾向がありますか。

「おおむね男性3に対して女性7と女性の方が多いです。住居は様々な化学物質に接する機会が多い一方、オフィスに比べて空調が行き届かない問題があります。女性の方が住居にいる時間が長いというのが原因の1つでしょう。また女性の方が男性に比べてにおいを記憶する脳の機能が強いことも原因と考えられます。記憶の作用により特定の化学物質への反応を強めてしまうという経路です」

「学校で子どもが発症する問題も深刻です。子どもは口や鼻など呼吸器の位置が低い場所にあるため、空気の中で比重が大きい化学物質に接しやすくなります。さらに内臓による解毒能力も弱い。化学物質に過敏なお子さんがいる部屋や教室は、換気をこまめにするなどの対策が必要です」

――どのくらいの規模の患者がいるのでしょうか。

「12年当時の内山巌雄・京大名誉教授らの調査では人口の約1%が化学物質過敏症と診断されたことがあるという結果が出ました。一方、早くから過敏症への理解や研究が進んだ米国では成人の6%程度が該当するという調査結果もあります。線引きは難しいですが、患者だけでなく化学物質への感受性の高い人も含めると人口の6~7%に相当するとみています」

――反応を引き起こす化学物質は特定できているのですか。

「ホルムアルデヒドのように規制が設けられた物質もありますが、人工香料については特定できていません。化学物質の数が膨大で、患者の反応も人によってまちまちだからです。1日に世界中で新たに合成される化学物質は300種類ともいわれ、現在7千万~8千万種の物質が存在しているとみられます。いったん過敏症になった人はさまざまな物質に反応しやすくなるなど症状のカテゴリー分けも難しいのです」

――医療の機会が乏しいという問題をどう考えますか。

「化学物質過敏症には、誰にでも効く特効薬はありません。薬の処方が少ないということは医師にとって収益になりにくいということです。化学物質過敏症は(09年から)保険診療の対象となってはいますが、医師が保険診療だけで専門クリニックを運営することは経済的に難しいでしょう。そうすると患者の自費診療ということになりますが、患者は過敏症のせいで仕事を辞め、転居せざるをえないなど経済的に苦しい場合が多くあります。医師の教育の過程で過敏症への理解が進み、少しでも多くの専門医が生まれることも望みます」

――化学物質に成分表示や使用基準を設ける必要があるとの意見もあります。

「たしかに空気を汚している物質の使用に基準を設けることは必要でしょう。ただしこれだけ多くの化学物質が生まれている現状から考えると、環境問題のように対策がモグラたたきとなる恐れもあります。ある化学物質を規制しても、異なる物質はすぐに生み出されるでしょう」

――どのような対策が有効でしょうか。

「人々が良いにおいを求めることで、空気を汚してしまっていることも知ってほしいと思います。たばこの害が知られることで公共空間が禁煙となっていったように、まず学校や病院、介護などの公共施設では強い人工香料の使用を控えるようにしてほしいと思います。それだけでも大きな違いです」

(高橋元気)

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