自治体で「香害」対応進む 成分開示や基準求める声

化学物質過敏症を周知する自治体が増えている(2月、東京都練馬区の保健相談所)
化学物質過敏症を周知する自治体が増えている(2月、東京都練馬区の保健相談所)

「強い香りに困っているお子さんがいます」。茨城県つくば市は2019年春、市内61の小中学校や幼稚園にこんなタイトルのチラシを配りました。洗濯に用いる柔軟剤などの残り香で体調を崩すケースを周知し、給食の当番衣など共用物への使用は控えるよう呼びかけました。

柔軟剤や制汗剤に含まれる人工的なにおいで体調を崩す人は「化学物質過敏症」として知られ、全国の自治体が対応を強化しています。患者や家族でつくる任意団体「CS憩いの仲間」の調べでは、1月時点で全国105の都道府県や市町村が過敏症についてウェブサイトやポスターで周知しています。強い人工的な香りには「香害」という言葉も用いられ、自治体の議会での関連質問の数は過去20年あまりで300を超えました。

過敏症の中では住宅の化学物質に反応する「シックハウス症候群」が有名ですが、最近増えているのは洗剤などのにおいへの反応です。国民生活センターには柔軟剤のにおいに関する相談が13年度に328件届いて以降、件数は18年度まで年100件を上回っています。

埼玉県草加市の青山和子さん(75)は01年に新築住宅へ入居するとせきやだるさが止まらなくなりました。過敏症と診断されてからは投薬や点滴による治療を続けましたが、今も不慣れなにおいに接したりすると発症してしまいます。

青山さんは「人工香料を使うメーカーは個別成分を開示してほしい」と訴えています。市民団体などからも化学物質の成分表示や規制を求める声が上がっています。政府は過敏症の病態を解明する研究を進めているものの「発症の経路が明らかになっていない」として、現時点で目立った規制はしていません。

過敏症に対しては医療機会が乏しいという問題もあります。数少ない専門外来を設ける国立病院機構盛岡医療センター(盛岡市)には九州からも患者が訪れていますが、専門医が少ないため新規患者の受け入れを制限しています。同センターの水城まさみ呼吸器内科医師は「国は患者の実態把握を進め、化学物質の使用基準などを定めてほしい」と話しています。

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青山和子・「CS憩いの仲間」代表「症状は『十人千色』」
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