アニメ系の話し方にイライラ著述家、湯山玲子さん

NIKKEIプラス1

著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。
著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。

職場に来ている派遣社員の女の子が、舌足らずで甲高いアニメ系のしゃべり方をします。普通に話すこともできるのに、なぜあんな風に話し続けるのか。私のストレスです。(東京都・40代・男性)

あるベテランの声優がインタビューで非常に興味深いことを言っていました。少年やカワイイ動物の声で人気がある彼女に、役柄に入り込む秘訣を尋ねると、その答えは「声がその人物のキャラを勝手に作る。だから声が決まれば、あとはその声に乗って、自然にキャラが走り出してくれる」というものでした。

そう、声とそれを発する人間との間には面白い関係があるのです。声が変わると別の人格になり得るというケースを、相談者氏のお悩みに当てはめれば、派遣社員の女の子は、その声でもって、本来の自分と違う社会的なキャラを作っていると考えられます。

それは、彼女が自分と切り分けて仕事を頑張るための流儀ともいえるでしょうし、派遣社員としていろいろな会社に出向いた際、その場に必ず存在する同調圧力への抵抗かもしれません。

マニュアル化されたサービスの現場では、「いらっしゃいませ」「どうぞ、お手にとってご覧ください」といった定型文を、民謡の節回しのように発し続ける店員を見かけることがありますが、彼らはつくり声を出すことで、辛い労働を仮面遊戯のようにこなしているかのようです。

現実に存在しないアニメの2次元アイドルの多くは、甲高く舌足らずで小学生のように話します。幼くて可愛(かわい)くて受け身で優しくてドジッ子というキャラの体現がアニメ声。つまり、日本の男性が伝統的に好んできた女性像が、消費文化のなかで綿々と受け継がれてきているのです。

「男性から好感をもたれる方法」として、そういう声の表現をする女性は少なくありません。日本人の若い女性の子供っぽいしゃべり方は、海外のコメディー番組でネタにされるほどです。

相談者氏は、そういった派遣社員の女性の特徴ともいえるアニメ声の背景を理解して、「これも多様性だ」と我慢するしかない。なぜなら、アニメ声を支持し、欲求してきたのは男性なのですから。

しかし、その派遣女性に見どころがあって、(下心ではなく)関係を深めたいなら、何かの機会に「そのアニメ声は他人から侮辱されるし、いろんなチャンスを遠ざける」とアドバイスしてもいいかもしれません。男性の意識も変わりましたし、今後、女性が増えていく仕事の現場では、アニメ声による「ぶりっこ」は確実に嫌われるからです。

[NIKKEIプラス1 2020年2月15日付]

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