世界株高変わらず 新型肺炎の影響に濃淡も(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

新型肺炎の感染拡大は訪日外国人の減少など日本経済への影響が懸念されている(写真は2月11日まで開催していた「さっぽろ雪まつり」)=共同
新型肺炎の感染拡大は訪日外国人の減少など日本経済への影響が懸念されている(写真は2月11日まで開催していた「さっぽろ雪まつり」)=共同

新型コロナウイルスが世界経済のリスク要因となりつつある。肺炎の感染拡大が伝わるたびに世界景気への懸念から主要国の株式相場が下落する場面が増えている。しかし長期的にみれば世界の株価上昇基調に変化はないとみられる。とりわけ米国株に対して大きな影響を与えることはなさそうであり、米国株は引き続き世界株のけん引役を果たすだろう。ただし日本株は中国への依存度が他の主要国に比べて高いため、調整の度合いが短期的に大きくなる可能性がある。

中国経済の規模、SARS当時より拡大

新型コロナウイルスの影響を分析するには、重症急性呼吸器症候群(SARS)の例が有効であろう。広東省を発生源とする重症な肺炎であるSARSは2002年11月に症状が報告され、32カ国・地域に拡大した。世界保健機関(WHO)は03年3月に世界的警報を発表し、その後に香港と広東省や台湾への渡航延期勧告を出した。終息宣言を出したのは同年7月で、感染拡大が深刻だった時期は3カ月ほどであった。

現在の中国経済の規模は当時より大きいため、新型肺炎によるマイナスの影響は一段と大きくなろう。中国の国内総生産(GDP)は19年に16.3兆ドル(国際通貨基金による予想)と03年の1.7兆ドルに比べ9倍以上の規模になった。世界のGDPに占める割合は4.3%から16.3%に拡大している。貿易面でも世界に占める割合は03年の6.6%から18年の11.8%まで拡大した。

国別に対中貿易をみると先進国では日本に対する影響が大きい。日本の対中輸出のGDP比率(輸出額は通関統計で19年累計、GDPは1~9月年率換算)は2.7%と米国の0.5%、欧州連合(EU)の1.4%に比べ大きい(輸出額は米・EUとも1~11月年率換算、GDPは米が1~12月、EUが1~9月年率換算)。日本から中国への輸出品目は1位が一般機械(構成比23.1%)で、電気機械(20.7%)、化学製品(17.3%)と続く。一方、中国からの輸入のGDP比率も日本が3.4%と米国の2.1%、EUの2.6%を上回る。

訪日外国人(インバウンド)の数をみても、日本政府観光局(JNTO)によると19年は3188万人だったが、このうち中国人が959万人と全体の30.1%を占める。SARSの感染拡大が本格化した03年の訪日外国人は521万人で、このうち中国人は44万人と全体の8.4%だった。つまり03~19年で訪日中国人数は20倍あまりに増えている。ちなみに18年に米国を訪問した外国人は7988万人であったが、そのうち中国は299万人(全体の3.7%、19年訪日人数の3分の1以下)だった。03年に米国を訪問した中国人は180万人だったので約1.7倍になったにすぎない。日本の場合、韓国からの訪日客数が19年に558万人と前年比25.9%減少している。20年も韓国からの訪日客の減少が続き、訪日中国人数も大幅に減るようだと日本経済への影響はダブルパンチである。

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