購入はインターネットのみ
テスラが公表している数字を見ると、テスラ3は好調だ。2019年第4四半期の納車台数(世界)は、モデルSとモデルXの総数が1万9450台だったのに対して、モデル3は9万2550台。つまりモデル3は、既存モデルの約5倍を販売した計算となる。
テスラ・ジャパン広報によれば「販売台数は明かせないものの、モデル比率は日本でも同様な傾向になるだろう」とのこと。それが現実になれば、都市部で、テスラを目撃する機会は一気に増えることになりそうだ。
ただ日本におけるテスラの販売が、そのペースを維持できるかは、まだまだ予測が難しい。そう考えるのはいくつか理由がある。
1つは独自の販売方法だ。日本では東京(青山)、神奈川(川崎)、大阪(心斎橋)、愛知(名古屋)の4カ所にショールームがあり、それ以外の都市でも展示や試乗イベントを行っている。ただ店舗やイベントでは、あくまで試乗や説明を受けるのみ。セールスを通した購入の申し込みをすることはできない。自分でテスラのホームページへ接続し、注文を確定する必要があるのだ(納車は専任のスタッフが行う)。近年、限定車の販売などでインターネット受付が行われるケースは多いが、商談の段階になると販売店とのやり取りになるのが一般的だ。クルマの購入方法としてどの程度受け入れられるか。

試乗せずに購入する人も多い
メインのクルマを購入する場合、サポートも気になる点だろう。テスラの場合、サポートが必要になった場合は、サービスセンターに連絡を取る。テスラのクルマは、車載通信機を搭載しており、インターネットを通じてテスラとつながっているので、実車を見なくてもある程度までの状況を確定できるという。軽微なトラブルでは、モバイルテクニシャンが現地へ向かい、それ以上の場合はサービスセンターへ持ち込むことになる。
もちろんレッカーサービス会社や各地の整備工場との連携もあり、サポート体制はしっかり整っているが、同価格の高級車がディーラーのショールームで行っているような、手厚い対応は望めない。それだけに、EVへの理解だけでなく、テスラというプロダクトへの理解も重要となってくる。
現時点でのモデル3の購入者は、購入前に試乗をせず、納車が初コンタクトという人も多いという。やはりテスラという企業、ブランドに何かしらのシンパシーを感じている人たちなのだ。そういったシンパシーを持つ人たちをどれだけ増やしていけるか、同時にクルマとしてのテスラに興味を持つ人たちもどれだけ増やせるか。本当の意味でのテスラの大衆化は、これからが正念場だということだろう。

1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。