お酒の飲み方でも風邪を遠ざける ポイントは「頻度」風邪と飲酒【後編】

日経Gooday

寒く、乾燥したこの時期に注意したい風邪。対策のポイントを聞いていこう。写真はイメージ(c)Michael Heim-123RF
寒く、乾燥したこの時期に注意したい風邪。対策のポイントを聞いていこう。写真はイメージ(c)Michael Heim-123RF
日経Gooday(グッデイ)

誰もがかからないように注意している「風邪」。前回「お酒を飲む人ほど風邪をひきにくい 3つの論文の答え」では、飲酒が風邪の予防になる可能性があるという、うれしいご報告をさせていただいた。後編では、前回に引き続き、呼吸器疾患のエキスパート・池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに、風邪のリスクを下げるために心掛けたいお酒の飲み方から、大谷さんが実践している日々の風邪予防対策、意識して摂取したい食事までを、酒ジャーナリストの葉石かおりが聞いていく。

◇  ◇  ◇

「飲酒は風邪予防に役立つ可能性がある」――。

前回記事「お酒を飲む人ほど風邪をひきにくい 3つの論文の答え」において、風邪・インフルエンザ・肺炎対策などの呼吸器疾患のスペシャリストで、体調管理のプロフェッショナルでもある池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんから、このような力強いお墨付きをいただいた。

イギリス、スペイン、日本と3国で発表された酒と風邪に関する論文も丁寧に解説いただき、「お酒は風邪にいい」という一般のイメージを裏付けするデータがあることも分かった。酒飲みとしてはうれしい限りである。

エビデンスもきちんと踏まえたポジティブな結果は、酒飲みが大手を振って飲むのに最高の口実ではないか。「さて、今夜は何を飲もうかな♪」とウキウキしているところを、大谷さんに即たしなめられた。

「前回紹介した論文からも分かるように、お酒を飲む頻度が高い人ほど風邪を引きにくかったというデータが出ているのは確かですが、何事も過ぎたるは猶及ばざるがごとしです」(大谷さん)

そうだった、飲み過ぎが体に悪いのはもちろんとして、お酒は少量であっても体に悪いという論文が2018年に発表されるなど、今、アルコールの健康リスクが世界的にクローズアップされるようになっているのだ。

では、具体的にどのような飲酒を心掛ければいいのだろうか。

カギは「飲む頻度」、小分けに飲むのが理想的

最初に、お酒の飲み方について聞いてみた。先生、風邪のリスクを下げるために心掛けるべき飲み方を教えてください!

そう尋ねると、大谷さんはこう話し始めた。「飲酒は風邪予防に役立つ可能性があると話しましたが、それは『ほどほど』に飲んだ場合です。酒量は適量までに抑えるのが基本です。過剰な飲酒は健康リスクを高めます。適量と言われる、1日当たり純アルコール20gを守りましょう」(大谷さん)

適量については、それこそ耳にタコができるほどお伝えしてきたが、念のため説明すると、厚生労働省の「健康日本21」では、1日当たり純アルコール換算で20gを適量としている。これは、日本酒換算で1合、ビールで中ジョッキ1杯程度、ワインならグラス2~3杯程度に相当する量だ。

どこまで行っても「適量」は守らねばならないのが常か…。だが風邪に限ったことではなく、体調管理のためにも、飲み過ぎて二日酔いになってしまったら逆効果である。

がっかりする私に、大谷さんはこうフォローしてくれた。

「前回紹介した、日本の東北大学の研究、そしてスペインの研究でも、お酒を飲む頻度が高い人ほど風邪の罹患リスクが低いという結果が出ています。風邪予防という観点でポイントになっているのは『お酒を飲む頻度』、飲む頻度が多いほうが風邪予防の効果が期待できるということになります」(大谷さん)

適量は守る必要があるが、飲む頻度は多いほうがいい…というと?

「小分けに飲むということです。適量を週単位で考えると日本酒にして7合になりますが、週のうち1日や2日は3~4合を一気に飲むけれど、他の日は飲まないといった集中した飲み方は避け、日々適量を上限に飲むということです。前回紹介したように、東北大学の研究でも週7回(毎日)飲む人が風邪の罹患リスクが一番低くなっています。ただし、できれば週に1回くらいは休肝日も設けるようにしてくださいね」と大谷さん。

なるほど、少しの酒に抑えつつ、日々楽しむようにするということか。夕食の晩酌に1合飲むといった形でルール化していけば、無理なく実現できそうだ。休肝日も取りつつ、日々実践しながら、しっかりと風邪予防につなげたいものである。

風邪予防にと、無理に酒を飲む必要はない

大谷さんは、風邪予防になるからと、無理にお酒を飲む必要はないと念を押す。お酒は少量であっても健康リスクになるという報告が出ていることも忘れないようにしよう。

「特に、元々お酒に弱い方が、風邪予防にいいからと無理に飲む必要は全くありません」(大谷さん)。個人差があるものの、女性や高齢の人はアルコールの分解能力が低いので、お酒の量はより減らすことが望ましい。お酒を飲んで顔が赤くなる人も同様である。

ここで大谷さんは、自分が酒に強いか弱いかを確認しておくといいと話す。連載の以前の回でも紹介したように、酒に強いか弱いかは、主にアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性がカギを握っている。ALDH2の活性は遺伝的要素で決まるため、遺伝子検査サービスで調べることで確認できる。

遺伝子検査はお金もかかるのでちょっと…という人は、あくまで簡易チェックだが、「アルコールパッチテスト」で確かめる手もある。

やり方は簡単で、脱脂綿に市販の消毒用アルコールを含ませ、上腕部の内側にテープで7分間固定し、はがした直後と10分後に、脱脂綿が当たっていた肌の色を見るだけだ。脱脂綿をはがした後、肌の色が変化しないのがお酒に強いタイプ、10分後に赤くなるのはお酒に弱いタイプ(顔が赤くなる人が多い)、直後に赤くなるのはまったく飲めない人だ。

「飛沫感染」を防ぐためにマスクが有効

続いて、この機会に、飲酒以外の風邪予防のポイントについても聞いていこう。風邪予防という観点では、マスク、手洗い、栄養など飲酒以外の要因の方が重要であろう。

「風邪予防」について語るためにも、まず風邪の感染経路を知っておきたい。先生、いったいどんなところから風邪はうつるのでしょう?

「風邪をはじめとする上気道感染症の感染経路は主に3つあります。第1は、風邪に感染している人のくしゃみ、咳(せき)によって、ウイルスなどの病原体が飛沫として排出され、それを吸い込んで起こる飛沫感染です。この場合、約1~2メートルの距離で感染してしまいます」(大谷さん)

「次に、感染ウイルスが含まれた鼻汁、唾液が手につき、口や鼻を触ることで感染する接触感染。また感染している人から排出された飛沫が、乾燥によって微細な飛沫核となり、それを吸い込んで感染するパターンもあります」(大谷さん)

これらの中で、風邪、インフルエンザのウイルスの感染経路は主に飛沫感染と接触感染の2つなのだと大谷さんは話す。

感染経路が分かったところで、早速、具体的な風邪の予防方法を大谷さんに教えていただこう。まずは、なんといってもマスクではないだろうか。

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