遺言「自筆」でも安心 新保管制度、法務局がチェック

遺言者は自らが法務局に出頭し、自筆証書遺言の保管を申請する(名古屋法務局)
遺言者は自らが法務局に出頭し、自筆証書遺言の保管を申請する(名古屋法務局)
相続で家族がもめないよう今から遺言書を書こうと思います。7月から遺言書の保管制度が始まるという話を聞きましたが、どんな仕組みですか。

遺言書は法律上、大きく2種類あります。「公正証書遺言」は元裁判官や元検察官などがなる公証人が、遺言者本人から内容を聞き、まとめます。原本を公証役場が保管するので紛失や改ざんの恐れがありません。

300以上の法務局で受け付け

自ら手書きするのが「自筆証書遺言」です。財産目録を除いて全文を自書する必要があり、パソコンによる作成は認められません。書式が決められており、日付を「2月吉日」などとしたら無効です。内容を改めるときはその部分を書き直してなつ印します。細かな決まりが多く、書くのをためらう人もいます。

書いた遺言は家の金庫や仏壇の中などに自ら保管するのが一般的です。自分が死んだときに遺族がきちんと見つけてくれるか、誰かが都合の良いように改ざんしないか、心配する人もいるようです。

そんな悩みを和らげようと国が7月10日から始めるのが保管制度です。自筆証書遺言を法務局に持ち込んで保管してもらいます。全国に416ある法務局のうち「300以上」(法務省)で申請を受け付ける予定です。

申請時には担当官(遺言書保管官)が遺言に目を通し、書式通り正確に書かれているかチェックします。誤りがあれば修正すればよく、不備を防げます。受け付け開始の7月10日よりも前に書いていた遺言も受け付けてくれます。

法務局は原本を保管するとともに画像データとしても残します。本人が亡くなった後は遺族が請求すると、画像データが担当官の証明付きで印刷され、遺言の証明書として交付されます。閲覧請求も可能です。

公正証書よりはコスト低い

自筆証書遺言は開封するときに家庭裁判所で裁判官が立ち会う「検認」を受けるのが原則です。しかし保管制度を利用していた場合は証明書の形でもらうので、面倒な検認はありません。相続人が遺言の保管を知らされていなかった場合、法務局に問い合わせれば確認してもらえます。

保管制度は利用費用がかかります。詳細は未定ですが保管料として数千円、証明書交付に1通当たり数百円かかる見込みです。公正証書遺言の場合、作成費用が数万円かかるうえ、2人以上の証人が必要になるためその謝礼金が発生することもあります。コストは自筆証書遺言の保管制度の方が安くなります。

保管制度を申請する際は必ず本人が法務局に出向く必要があります。代理人による申請は不可です。病気などで出歩けない場合、公正証書遺言なら公証人が家に来て作成してもらえますが、自筆証書遺言の保管制度は自力で手続きを済ます必要があります。

[日本経済新聞朝刊2020年2月8日付]