格安スマホの今 安さ追求から独自機能重視に進化佐野正弘のモバイル最前線

料金だけではない各社の個性に注目を

これらの変化によって、MVNOは分かりやすく安心感のあるサービスを重視する方向に向かっている。しかしそれはMVNOならではの個性が失われつつあるということでもあり、携帯電話大手やそのサブブランドが低価格サービスに一層力を入れてくるようであれば、今後生き残りも厳しくなってくるだろう。

一部のMVNOは、料金以外のサービス面で独自性を打ち出し、存在感を高めようとしているようだ。例えばインターネットイニシアティブのIIJmioは、自社でSIMを発行できる「フルMVNO」であることを生かし「データ通信専用SIM eSIMプラン(ベータ版)」を提供している。

eSIMとはあらかじめスマホなどの中に組み込まれているSIMのこと。アップルの「iPhone 11」シリーズなどは、通常のICカード型のSIMだけでなくeSIMも利用可能なデュアルSIM構造となっている。そこでIIJmioはeSIM向けのプランを提供することで、こうした端末のeSIMを有効活用できるようにしているのである。

IIJmioはフルMVNOである強みを生かしてeSIM向けのデータ通信サービスを提供。現在はまだベータ版のサービスとなるが、既にiPhone 11などのeSIM搭載機種で利用可能だ

このサービスをiPhone 11などで利用すれば、例えば音声通話は携帯電話大手の回線を使い、データ通信にはより安価なIIJmioの回線を使うといった使い分けによって、料金の節約も可能になる。現在はあくまでベータ版としての提供となるが、将来的には正式なサービスとして提供される可能性が高いだろう。

またオプテージのmineoは、これまでユーザー間でデータ通信量を融通し合う「フリータンク」など、ユーザー同士で協力し合いながらサービスを向上させる取り組みを進めてきた。それをさらに進めた「ゆずるね。」を20年3月23日に開始すると発表している。

mineoは2020年1月29日に混雑時のネットワークをユーザー同士で譲り合う「ゆずるね。」の提供を発表している

これは最も通信回線が混雑する平日の正午から午後1時の間に、利用者があえて宣言をしてデータ通信をしないことで、さまざまな特典がもらえるというもの。MVNOは平日昼休みの時間帯に通信速度が劇的に落ちることが最大のウイークポイントとなっており、それをユーザー同士で融通し合いながら解消する狙いだ。mineoらしさをうまく生かしたサービスといえるだろう。

そうしたことから今後MVNOを選ぶ上では、料金の安さだけでなく分かりやすさ、そしてサービスの独自性が重視されることになりそうだ。一方でMVNOはサポートにかけるコストを減らして低価格を実現しているため、大手と同じ充実したサポートが受けられない点は今後も変わらないだろう。契約後のトラブルを防ぐためにも、携帯電話大手から乗り換える際はその点をよく覚えておいてほしい。

佐野正弘
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
MONO TRENDY連載記事一覧
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