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なぜ水路跡から発見? 古代帝国の見事なレリーフ

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ナショナルジオグラフィック日本版

中東イラク北部で、2700年以上前の新アッシリア帝国時代につくられた、精巧な石のレリーフ10点が発掘された。見つかった場所は、当時の水路網の壁面。王宮以外でこれほど見事なレリーフが見つかることはほとんどなく、もっぱら武勇で知られる王、サルゴン2世が公共事業にも貢献していたことを示す貴重な発見だ。

「きわめて珍しい遺構です」と語るのは、イタリア、ウディネ大学の考古学者で、今回の遠征を共同で指揮したダニエーレ・モランディ・ボナコッシ氏。このような石板が元々あった場所で発見されたのは、過去に一例しかない。「水路を埋めている堆積物の下に、まだほかのレリーフが埋まっている可能性はかなり高いでしょう。楔(くさび)形文字が刻まれた記念碑もあるかもしれません」

発掘現場は、トルコとの国境に近いクルド自治区の町ファイダ近郊。だがここは半世紀もの間、紛争のため研究者にほぼ閉ざされてきた。1973年に英国のチームが3つの石板の上部を見つけたが、クルド人とイラク政府の間の緊張が高まり、調査を続けられなかった。2012年になってモランディ・ボナコッシ氏が率いる遠征隊が現地に戻り、さらに6つのレリーフを発見したものの、その後過激派組織イスラム国(IS)が侵攻。2017年まで調査活動は中断された。

2019年の秋、モランディ・ボナコッシ氏とクルド自治区ドホーク考古学局のハッサン・アーメッド・カシム氏は、全長6キロにわたる古代の水路の土手に施された合計10個のレリーフの目録を作成した。モランディ・ボナコッシ氏によると、それらは独特なシーンを描いているという。

レリーフには、竜と角のあるライオンに乗った最高神アッシュールや、その配偶神でライオンが支える玉座に座ったムリッスといったアッシリアの神々の行進を、サルゴン2世らしき王が見守る様子が描かれている。ほかには愛と戦争の女神イシュタル、太陽神シャマシュ、知恵の神ナブなども見られる。

このような彫像は、肥沃な土地があるのは神のおかげでもあると、道行く人に示そうとしたのではないかと考古学者らは考えている。

「王権のパワーや神が与えた正統性を示す図案があちこちに描かれていた可能性を、このレリーフは示唆しています」と言うのは、米ハーバード大学の考古学者で、この地域の古代の水利システムを研究しているジェイソン・ウル氏だ。今回の発見は、このような芸術作品が「王宮だけでなくいたる場所、例えば農民が畑に水を引く水路にまで飾られていたことを示すものです」

水路は丘陵地を巡るように造られており、大麦、小麦などの作物を育てる大規模な灌漑に使われた。当時、世界最大級の都市であったニネベの10万人以上とも言われる住民に食糧を供給していたと見られる。この広大な都市の遺跡は、現在のモスルからチグリス川を越えて100キロメートル近く南まで広がっている。

サルゴン2世の統治

サルゴン2世が統治した、いわゆる新アッシリア帝国によるこの地域の支配は、紀元前911年から、紀元前609年に新バビロニアに破れて帝国が滅亡するまで続いた。

紀元前721年に即位したサルゴン2世は直ちに、抵抗していた北のイスラエル王国を征服し、数千人を捕虜にして強制移住させた。聖書にはサルゴン王が港湾都市アシュドドを攻め取ったと書かれており、最近考古学者らによって、この都市周辺の壁が発見された。壁はアッシリアの脅威を防ぐために急ごしらえで作られたが、その目的は果たせなかった。南のユダ王国は、イスラエル王国の二の舞になることを避けて属国になった。

一方、軍事以外のサルゴン2世の功績は、あまり知られていない。新首都ドゥル・シャルキン(「サルゴンの砦」の意)を建設したくらいだ。今回ファイダのレリーフが見つかったことは、王がアッシリア中心地域の開発を精力的に支援していたことを示すと、考古学者らは考えている。

サルゴン2世の息子、センナケリブは、この水路網を拡張し、世界最古かもしれない水道橋を建設した。これはニネベの近くを流れる川をまたいで造られた、石造りのアーチと防水セメントを用いた構造物である。「余は両岸の切り立った谷に白石灰岩の橋を架けた。その上に水道を通した」と自慢する碑文が残されている。

英オックスフォード大学の考古学者、ステファニー・ダリー氏は、伝説のバビロンの空中庭園が造られたのは、実際には豊富な給水を生かせるニネベだったと主張する。これに対しては異論も多いが、これまで学者たちは軍事面以外のアッシリアの技術力を過小評価してきたと、ウル氏やその他の研究者は語る。

遠征では、レーザースキャンやデジタル写真測量などの先端技術を用いて、石板やその内容にいたる詳細を記録した。ドローンで撮影した高解像度の写真によって、研究者は水路網の全体像を把握できる。

しかし、サルゴン2世の支援を記録したこの貴重な遺構は、「破壊行為、違法な発掘、近隣の村の拡張といった深刻な脅威にさらされている」とモランディ・ボナコッシ氏は警告する。レリーフの1つは、2019年5月に盗掘者による損傷を受けた。別の石板は農民が家畜小屋を増築する際に叩き潰された。2018年には、古代の水路を切り開いて現代の水道が通されている。

モランディ・ボナコッシ氏は言う。最終目標は、そのほかのレリーフも含む遺跡公園をつくり、アッシリアにローマ人がやって来る前の500年間に建設された給水システム全体がユネスコ世界遺産として保護を受けられるようにすることだ。

(文 Andrew Lawler、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年1月22日付]

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