事実だけを聞くのはNG 部下を動く気にさせる質問術『その聴き方では、部下は動きません。』 岩松正史氏

相手の気持ちに耳を傾けていますか?(写真はイメージ)=PIXTA
相手の気持ちに耳を傾けていますか?(写真はイメージ)=PIXTA

相手の話をしっかり聞くのは仕事で必須のこととされるが、実は聞き方をちゃんと教わった人はそう多くない。部下から報告や相談を受ける上司も同じだ。『その聴き方では、部下は動きません。』(朝日新聞出版)を書いた岩松正史氏は「ほとんどの上司が聞き方を知らないまま、部下と向き合っている」とみる。相手の本音を引き出す「聞き方」のポイントを、日本傾聴能力開発協会の代表理事でもある岩松氏に聞いた。

増える「1on1」ミーティング

働き手の本音を引き出そうと、上司と部下が1対1で向き合う「1on1」ミーティングを採用する企業が増えてきた。じっくり話し込んで、丁寧に語り合おうとする試みとしては意味がありそうだ。しかし「現実には従来の定期面談と同じようなやりとりに終わっているケースが少なくない」と、岩松氏は指摘する。なぜ変われないか。聞く技術が足りないからだ。「単に『最近、困っていることはないですか』と尋ねるだけでは、部下は口も心も開かない」という。

一般的な半期ごとの業務評価面談では、上司が部下に成果報告シートを書かせ、その文面に基づいて実績を報告する格好になりがちだ。期間内の仕事の成果を聞き取るうえでは、それなりに効果があるが、岩松氏は「形式的な報告に終わりがち。文字を声に出して読むだけ」と改善の余地を感じ取る。

もっとレベルの低い上司になると『じゃあ、ここから10分、ざっと成果をしゃべって』と一方的に告げる。部下は自分なりに報告を試みるが、上司は質問をはさむこともせずたまにメモを取るだけ。部下が一通りしゃべり終えると、「はい、ありがとう。次の人を呼んで」。部下の言葉をきちんと聞いていたのかどうかすら定かではない。「勝手にしゃべってくださいと言われて、本音を語る部下はそう多くないはず。そもそも対話するという姿勢が見えないと、部下は不信感を抱いてしまう」(岩松氏)

意外に難しい「あいづち」

では、頻繁にあいづちを打って対話に参加している態度を見せればよいのかといえば、そうでもないらしい。会話テクニックの指南本では、あいづちをたくさん打つよう勧めていることもある。だが、岩松氏は「相手の話に安っぽく相乗りするようなあいづちは逆効果になりかねない。相手が『同意した』と勘違いするおそれもある」と、表面的な調子合わせとしてのあいづちを勧めない。

部下と対話するにあたって重要になるのは、部下の気持ちを理解しようと努めることだ。当たり前ではないかと思うかもしれないが、多くの人が勘違いしている点だと岩松氏はみる。たとえば、先に挙げた業務評価面談の場合、上司は部下に実績の具体的な報告を求めることが多い。人事部からは「具体的な業務成果を聞き取ってください」と指示されていることもある。つまり、話題の柱に据えているのは事実の確認であり、「事柄」といえる。だが「事柄ばかりを聞こうとすると、気持ちが見えにくくなってしまう」と、岩松氏は事柄優先の対話の危うさを見抜く。

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