100年ブランド「カルピス」、周回遅れから再起の舞台裏アサヒ飲料 常務執行役員マーケティング本部長 大越洋二氏(下)

「白いジュース事件」が新たな転機に

「カルピスウォーター」のヒットで好調を取り戻した「カルピス」ブランドだったが、2000年代に入ると、再び停滞期を迎える。商社との合弁会社に出向していた大越氏は社内で「白いジュース事件」と呼ぶ、ある出来事に遭遇したという。

「出向していた会社にいた派遣社員の女性から、『カルピスって白いジュースですよね』と言われたのです。我々の間で、ジュースは果汁を指す。白いのは生乳を原料としているからですが、ただの白くて甘い飲み物ととらえられていると知り、これはカルピスの本質的価値が伝わっていない証拠だと感じました」

消費者調査の結果からも、生乳をベースに乳酸菌と酵母で発酵させて作る「カルピス」の本質が消費者に伝わっていないことは明らかだった。そこで、会社は09年から「牛乳と乳酸菌から作りました」と訴えるキャンペーンを開始。酵母の働きを伝え、18年からは意識して「発酵」という言葉も使い始めた。

「カルピス」ブランドが再浮上するもう1つのきっかけは容器にあった。

「着手したのは98年か99年だったと思います。それまで『カルピスウォーター』のペットボトルは遮光性を保つために緑色でしたが、『カルピスらしさ』を強調するため、これを透明なものへと変えた。同時に、ロゴも細いアルファベットから太字のカタカナへと変えました」

乳成分が入っている「カルピスウォーター」は光の影響を受けやすい。そのため、透明のペットボトルに変更することに関しては、当初、研究所が難色を示していた。それを大越氏が「中身も守り、ブランドの価値も一緒に守ってほしい」と強く依頼し、研究所も中身の開発に苦労するなどした結果、容器の透明化を実現できたという。

100年ブランドを維持するために必要なのは、「守ること」と「挑戦すること」のバランスではないかと、大越氏は言う。

「守ることを守り、挑戦することは恐れずやっていきましょうというシンプルな考えに基づき、ロングセラーをただのオールドブランドにしないように心がけています」

守ることとは、「カルピス」の生みの親である三島海雲が掲げた「おいしいこと」「滋養になること」「安心感のあること」「経済的であること」の4つの本質的価値だ。今ではこの4つを基本に据えながら、「健康」をはじめ、時代に応じた社会的課題を加味しながら、ブランドを発展させることに取り組んでいる。

大越氏は「100周年はひとつの通過点。おいしいだけではなく、健康の価値も深掘りしながら、三島海雲が100年前に作った『カルピス』に、さらにドライブをかけていくきっかけにしていきたい」と語った。

(ライター 曲沼美恵)

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