スニーカー、値決めの主は消費者 活況に沸く転売市場

スニーカーがブームです。スポーツブランドを中心とした、ストリートファッションの人気の高まりが背景にあります。そのスニーカーの値段に今、大きな変化が起こっています。完売してしまう人気モデルがほしいという人向けの転売市場が盛り上がっているのです。

人気モデルは即日完売

値段の方程式

BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

最近のスニーカーは新作が出るとその多くが即日完売します。ネットでは10分もかからず完売。店頭で買う場合も行列ができます。写真は行列に並んでいる人の足元。みんな同じスニーカーを履いています。新作のスニーカーを買うために特定のスニーカーを履いていかないと売ってくれないという「ドレスコード」まで存在しています。

バスケットボールの神様と呼ばれたマイケルジョーダンのために作られた「エアジョーダン」というモデル。2019年9月に発売しました。日本人NBAプレーヤーとして話題の八村塁さんも使用しているモデルです。バスケットボールが好きな人なら欲しくなるかもしれません。

転売市場で65万円で取引されている(ストックXのホームページ)

ナイキの公式サイトでは売り切れです。転売市場ではなんと65万円です。どうしてそんなに高いのか。ポイントは「限定商品」だという事です。このスニーカーはナイキとオフホワイトという人気ファッションブランド、さらにMOMA(ニューヨーク近代美術館)が共同で開発し、数量限定で売り出しました。ブランドの人気と、販売数量の少なさが相まって超人気になりました。

そういう人の需要を満たす形で、増えたのがスニーカーの転売です。スニーカーの転売は今までもありましたが、今、主流となっている転売にはある特徴があります。

「商品はすべて本物」

2016年にアメリカで生まれた「ストックX」というサイト。ここの大きな特徴の一つが「商品はすべて本物」ということです。運営会社に「なんでも鑑定団」の鑑定士みたいな人がいっぱいいて、本物か偽物か鑑定しています。本物以外は流通させない仕組みになっている。高額商品を買ったのに偽物をつかまされた、というリスクが少なく、安心して購入できます。

さらに画期的なのがチャートです。このスニーカーが発売されてから今まで、いくらで取引されたのかを、株価チャートのようにデータ化して公開しています。「ストックX」の創業者は株式市場をモデルに、このサイトを作ったそうです。

ストックXのサイト画面。スニーカーの取引価格を株価チャートのように表示する

チャートで今までの取引履歴を見れることで、今売っている値段が高すぎるのか、安いのか、わかります。さらに全てのスニーカーが「いつ」「いくらで」「何足」売れたかの数字も全部公開されています。需要に合わせて、値段が適正化されるというメリットがある。

メーカーも「転売」に参入

利ザヤ稼ぎのための転売には常に批判もつきまといます。でも、需要と供給という側面を見ると、「お金を多く払っても、ほしい」という人がいる限り転売は「なくならないもの」とも言えます。スニーカーを作っている、ナイキやアディダスといったメーカーもこれを理解しつつあり、新しい動きも起きています。

メーカーも転売サイトを利用しているのです。この「ストックX」がナイキやアディダスといったメーカーと組んでこのサイトでしか買えない、限定モデルの発売を始めています。メーカーは通常、自社の店やサイトなどで新作の発売を告知するか、メディアに露出するかして商品をPRします。

「ストックX」で発売すれば、幅広いブランドのファンが集まるため、スニーカーファン全体にPRでき、新規のファンを開拓できます。

転売サイトの値付けで面白いのは、「値段が決まっていない」ということ。発売が告知されたら、数日間「入札期間」を作って、買いたい人は、好きな値段で入札します。限定モデルの販売を決めたメーカーは誰がデザインした、どんなデザイン(サンプルは完成していることが多い)のスニーカーがどの期間、入札受け付けるか、何足売るかを告知します。株式公開のように目安になる値段はありません。入札期間は、入札金額を変更したり、キャンセルしたりは自由。原則、ほかの入札者の金額を知ることはできません。

入札期間が終わると、入札者のうち、入札金額の高い方から順番に購入権利を得ることができます。何足売るかあらかじめ決まっているので、200足なら入札金額上位200位までが購入権利を得ます。売値は全員一律 。「購入権利を得た人の中で」入札金額最下位 (200足の場合200位)の値段になります。先月、アディダスのこちらの3種類のスニーカーが全部で999足限定で売り出され3日間でおよそ1万件の入札があり、それぞれ200ドル前後の値段がつきました。

このサイトはメーカー公式の転売サイトでの販売を株式市場の新規株式公開(IPO)にならって、「IPO」(イニシャル・プロダクト・オファリング、新規商品公開)と呼んでいます。大小様々なメーカーが、続々とこの「IPO」を始めています。

転売市場で消費者が決める

スニーカーの値段の方程式はこうなります。スニーカーの値段は「転売市場で消費者が決める」。スニーカーの転売サイトは他にも数多く登場しています。中でも過熱しているのは、中国です。オークション市場ではスニーカー以外にも高級ブランド品の取引で本物を保証する動きが出そうです。AIを使って本物か偽物かを判定をするサービスも登場しています。

(BSテレ東「日経モーニングプラス」コメンテーター 村野孝直)