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いきいき職場のつくり方

2020/2/8

いきいき職場のつくり方

病院などの医療機関での診断ではなく、なぜ産業医の相談を選ぶのか。会社の業務と従業員の仕事内容に詳しいことから、従業員が相談しやすいと思っているのかもしれません。ただし、相談は診察ではありませんので、状態に応じて病院などでの受診を勧めています。

従業員の休職や復職にあたっての面談も産業医の大きな仕事です。主治医があくまでも病気それ自体のレベルを診断するのに対して、産業医は主治医の意見を参考に、業務の内容などを含めて勤務に耐えられるレベルかどうか判断します。

産業医と主治医の意見が違ったら…

IT系企業に勤める30歳代男性の事例です。

不安障害で長期休職していたのですが、主治医が「復職可」と診断しました。産業医が面談して詳しく話を聞いたところ、休職前にあった動悸(どうき)や目まい、吐き気や息苦しさといった症状は解消されたものの、満員電車による通勤などに不安が残ることが分かりました。主治医は自覚症状が無くなったこともあり、以前との比較で「回復した」と判断したようです。一方、産業医は通勤や客先に常駐する業務形態など、実際に働いた際のことを考慮して「時期尚早」と結論づけました。安易な復職は、結果的に本人の体調不良を再燃させ、悪化させる恐れがあるので、慎重な判断が求められます。結果として、会社は産業医の意見を採用しました。

企業で産業医とやり取りするのは総務部門や人事部門の担当者がほとんどです。このため、職場の皆さんからすると、遠い存在に感じているかもしれません。あるいは存在自体をご存じないかもしれません。しかし、産業医はその会社の事業や職場環境をよく知る理解者でもあります。

自身の健康やメンタルに何か不安がある場合はもちろん、管理職であれば部下の勤怠などに心配な点がある場合など、気軽に産業医に相談してみてください。従業員の心身の健康を守り、よりよい職場環境を実現して、仕事のパフォーマンスを上げられるように協力するのが産業医の役割なのです。

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

※紹介した事例は個人が特定できないように一部を変更しています。

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