起業支援の新潮流 日本の資金を世界へ(渋沢健)コモンズ投信会長

写真はイメージ=123RF
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海外を中心に活動する日本人起業家のネットワーク組織である一般社団法人WAOJE(ワオージェ、東京・千代田、猪塚武代表理事)は2020年1月30日、「WAOJE海外進出支援基金」を設立すると発表しました。基金の総額は1億9000万円で、京都信用金庫、第一勧業信用組合、フューチャーベンチャーキャピタルなどが関わっています。

同基金は海外での起業や事業拡大を目指すWAOJE会員(国内外25支部、会員数約560人)向けに投資しますが、日本のスタートアップ支援の新たなうねりとして注目に値すると筆者は考えています。

WAOJEは「World Association of Overseas Japanese Entrepreneurs」の略で、04年に香港で発足した「香港和僑会」が母体となっています。アジア各地に広がった同会を統括する「和僑総会」が10年に発足し、16年に日本で一般社団法人となり、17年にWAOJEと名称を変更しました。代表理事の猪塚さんは23年末までに50支部、会員数2500人を目指しています。世界で築かれている華僑や印僑のネットワークと比べると規模は小さいかもしれませんが、WAOJEが掲げる「日本人がグローバルで勝つためのインフラ」というコンセプトは重要度が高まっています。

地域金融機関の新たな挑戦

一方、日本から世界へ羽ばたくチャレンジャーへの成長資金の供給は乏しいと言わざるを得ません。猪塚さんが指摘するように日本の大企業が保有する資金は有効に活用されていないのが現状です。「海外での起業や事業拡大を目指した際には国内金融機関の融資審査は厳しく、また補助金・助成金は後払いになることが多いため、起業・進出時に経営者自身の資金があるか無いかによって事業展開を縮小・変更しなければならないケースが多く見受けられる」と猪塚さんは話します。

また途上国の政府関係者や経済界などから「日本人は視察などに来てくれるが、案件がなかなか実現に結びつかない」という耳が痛い指摘もよく聞かれます。物事をしっかりと検討することは善ですが、意思決定のスピード感がないのは残念なことです。

こうした現状を打破しようと作られた基金に京都信金と第一勧業信組が参加していることに大きな変化を感じます。従来、地元の内側の事情に目線を寄せてきた信金・信組が外側にも関与を強めようとしているからです。