Men's Fashion

ヘンリー王子 抜群のスマートカジュアルに内助の功

@ニュースなルック

コラムニスト いで あつし

2020.2.12

ロイター

記者会見でのスーツ姿、人気ドラマの主人公のファッションなど、メディアで話題にのぼる人の着こなしは気になるもの。そんな「ニュースな人」のファッションの背景にあるものとは。男性ファッションに詳しいコラムニスト、いであつし氏が解説します。




トホホ、長年愛用していたお気に入りの「マッキントッシュ」のゴム引きコートの裏地の防水テープがボロボロにはがれてしまい、ついに着られなくなってしまった。新しいやつを買ったほうが早いと言われたのだが、ここは筆者も昨今ファッション業界でよく耳にする「サステナビリティー(持続可能性)」に乗っかって、直してまだまだ着ることにしました。

格好に無頓着だったヘンリー王子が結婚で一変

まぁでも英国の老舗ブランド、特に王室からロイヤルワラントを授かったブランドは、大概にして長持ちする。むしろ、着られなくなったら修繕をして何十年も着込んでボロボロになったほうがアジも貫禄も出て、逆にお洒落(しゃれ)なんて言われちゃいますからね。

その最たる例が、ご存じチャールズ皇太子であります。有名なのが、通称「チャールズ皇太子のパッチ靴」。二十歳の時に「ジョンロブ」でビスポークしたストレートチップのアッパーには数カ所にわたって継ぎはぎした箇所があり、トゥもピカピカに磨かれて今でも履いている。他にも「バブアー」のワックスドジャケットも継ぎはぎ修繕を繰り返して、もはや原形をとどめていないパッチワークバブアーを愛用している。30年以上着ているというサビルロウ通りの「アンダーソン&シェパード」で仕立てたビスポークスーツの裾にも、なんとアータ、継ぎはぎをしている箇所がある。

まさにこれぞプリンス・オブ・サステナブル。格好いいったらありゃしない。ウェルドレッサーとして知られるMr.クラシックこと「ハケットロンドン」のデザイナー、ジェレミー・ハケット氏なんぞは、チャールズ皇太子の着こなしにリスペクトを込めて、わざわざ裾やラペルホールに継ぎはぎのステッチを施したオーダースーツを着たりしているのだ。

さて、そんな英国紳士を代表するスタイルアイコンでもある御父上のご子息であられる、絶賛毎度お騒がせ中のヘンリー王子の格好とは、いかがなものか。

くしくも、英国がEUから離脱とほぼ同時期にメーガン妃と王室から事実上の離脱が決まってロイヤル・ハイネス(殿下・妃殿下)の称号を返上しましたから、王子とはいえ、もう一民間人ですけどもね。筆者はことさら英国事情に詳しいジャーナリストや王室ウオッチャーでもないので、ここは服好きな一民間人としてヘンリー王子のファッションを下馬評してみたいと思う。

ロイター

18年、オーストラリア。第1子妊娠発表後初めて公の場に姿をみせた2人。このときのメーガン妃のドレスは露出が多いと話題になった=ロイター 

服飾史家の中野香織氏の名著「ロイヤルスタイル 英国王室のファッション史」を拝読すると、結婚前のヘンリー王子の装いは、公務以外ではジーンズや襟元を開けたシャツ、野球帽やラガーシャツなど、ごく庶民的で、シャツの裾がズボンからはみ出していることもあり、そんな服装には無頓着なところが、くしゃくしゃの赤毛とはにかんだ笑顔とあいまって、愛すべきひょうきん者という印象を与えていたのだそうだ。

まぁ早い話が、ヘンリー王子ってぇのは数々の着こなし伝説を持っているウェルドレッサーな御父上と全然違って、格好にはまったく無頓着なんですねぇ。

そんなヘンリー王子のファッションセンスを一変させたのが、そうです、セレブファッション大好きなメーガン妃であります。