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みうらじゅんの落第救った 中島信也の武蔵美時代

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

CMディレクターの中島信也さん(東北新社副社長)、「ゆるキャラ」などの名付け親で漫画家、ミュージシャンとしても活躍するみうらじゅんさん、工業デザイナーの奥山清行さんの3人は、武蔵野美術大造形学部(視覚伝達デザイン学科)で同級生だった。武蔵美時代から3人は青春を謳歌し、才能を競い、時にはぶつかり合う場面もあったそうだ。

前回の「ライバルはみうらじゅん・中島信也 武蔵美はトキワ荘」に続き、今回は中島さんの視点から、学生時代の交流や制作活動の原点、当時描いていた将来のビジョンなどについて振り返ってもらった。前半・後半の2回に分けてインタビューをお届けする。

「社会を見てこい」、西新宿の高層ビル街でポートレート撮影

――武蔵美時代、奥山さんは写真の授業での中島さんの撮った作品に衝撃を受けたようですね。

「ええ、あれはとても印象深い授業でした。街に出て、見ず知らずの通行人に声をかけ、ポートレートを撮らせてもらう授業だったんですが、通行人に怪しまれ、なかなか撮らせてもらえないんです。当然ですよね。だから、心がかなり傷付きました。おそらく先生は、授業を通じて『温室でぬくぬくとしている集団ではダメだ。社会を見てこい』と言いたかったのかもしれません。学生なんて、世の中でいかに役に立たず、ちっぽけな存在なんだということを分からせたかったのでしょう」

「学生が楽をしようとして、知人や親戚のポートレートを撮影してくると、先生はちゃんと見抜くんです。人物の表情や全体の雰囲気から分かるんでしょうね。仕方がないので僕は氏名や学校名、連絡先などを手書きした名刺を作り、趣旨を丁寧に説明したうえで信用してもらい、ポートレートを撮影しました。場所は西新宿の高層ビル街辺りだったと思います。若者や女性ではなく、家族やサラリーマンらの顔をよく撮っていました。その作品を奥山君は覚えていてくれたんでしょうね。僕の作品をあんな風に評価していてくれたなんてまったく知りませんでした。とても光栄なことです」

みうらさんの単位取得に助言、タイプが異なる同級生3人

――先生の評価は厳しかったんですか。

「先生は学校や学生に対して不満を抱いていたようです。竹の棒を振り回しながら『なんだ。この作品は!』なんて怒鳴ったりしていた。でも、与えられた課題をきちんとこなせば、少なくとも単位はくれるんです。ところが、みうらは授業をサボってばかり。まったくやる気がなく、とても単位を取れそうな状況ではなかった。『信也、どうすればええねん』とさすがに困っていた様子だったので、みうらが落第しないように僕が導いてあげました」

「彼に伝えたのは『とにかく誰でもいいから、胸から上の写真をきれいに撮ってこい』ということ。それだけです。『ほんまけ?』とみうらが半信半疑で聞くので、『そうや。それだけでええから』と説き伏せて写真を提出させ、なんとか無事に単位を取ることができました。みうらは自分の漫画やイラストを表現することには興味があったけど、授業に真面目に取り組む気は全然なかった。一方、僕は後に大学の芸術祭の実行委員長をやるなど硬派な学生でみうらとは正反対。奥山君はサーファールックで軟派な学生だった。だから3人はタイプがまったく違っていましたね」

「むなしいのぉ~」、ファインダーから見えた虚飾の街並み

――写真の授業を通じて得たものはなんですか。

「ファインダーからのぞいた世界がまったく違って見えたのは驚きでした。ちょうどクリスマスの時期で、街全体が鮮やかに飾り付けられ、商店が歳末セールをしていたんです。整備されたばかりの人工的な街並みを見ているうちに『何だか、むなしいのぉ~』なんて虚無的な気持ちになってしまった。風景がいかにも上っ面で、真実がないように感じたんです。デザインのウソとか、虚飾とか……。僕はそんなことを考えるようなひねくれた学生でした」

――なぜ風景がそんなふうに見えたんですか。

「人間はどう生きるべきか、学生と学校の関係はどうあるべきか、デザインの果たすべき役割とは何か……。そんなことを真面目に考えていました。当時、学生運動はすでに下火でしたが、芸術祭実行委員会にはまだ学生運動の名残があって、『学生は社会と対峙し、世の中を良い方向に変えるために行動すべきだ』とずっと考えていた。現実逃避したい気持ちもあったかもしれません。身の回りに立ちこめる暗雲のさらに高い場所から社会を見てやろうという感じですね。その癖は今も持ち続けている気がします」

「すごく影響を受けた書籍がありました。デザイン評論家の柏木博さんの『近代日本の産業デザイン思想』。すべてのデザインはイメージでしかないなんて書いてあって、『これはえらいこっちゃ。デザイン学科の学生は全員この本を読まなきゃあかん』と真剣に考えた。そこで『研究室からのお知らせ』という偽のビラを作って学校からの告知を装い、この本を読むように学生に勧めたりしていました。今から振り返ると若気の至りですが、『手段を選ばず』という信念で行動していたんです」

みうらさんとデュオ、青春ならではのケンカやもめ事も

――みうらさんとは音楽活動も一緒にしたそうですね。

「ええ。あまり長続きはしなかったけど、『野球』というデュオを即席で組み、何曲か録音した記憶があります。なぜ『野球』という名前だったかは覚えていません。2人とも大学に入る前から音楽をやっていたし、音楽で女性にもてたいという下心だけは強かったので、音楽で食べてゆきたいという淡い夢を持っていたんです。でも音楽性が違っていました。僕が好きだったのはピンキーとキラーズやチューリップ、ビートルズ。一方、みうらが好きだったのはボブ・ディラン。僕はめちゃくちゃポップだったし、彼はめちゃくちゃフォークだったので……」

 ――時にはケンカもしたとか。

「みうらとは基本的に仲は良かったですが、よく一緒につるんでいたので、青春時代にありがちなケンカやもめ事もありました。女の子のことだったか、理由は忘れましたが、酒を飲んでケンカになり、『ほんだら、えーわい』と僕がたんかを切ったこともあるし、『信也、ゴメン。悪いのは俺や』なんてみうらから書き置きの手紙をもらったこともある。結構、熱い青春時代を過ごしていたんです。みうらと一緒に地方へ旅行に出かけたこともあります」

大阪府立豊中高校の落ちこぼれ、父の勧めで美大受験を決意

――なぜ美大を受験したんですか。

「僕は大阪で育ちましたが、小中まで成績が良かったので、そのまま進学校の高校(大阪府立豊中高校)に進みます。でも勉強する方法をきちんと身に付けていなかったから、すぐに落ちこぼれてしまった。『このままでは大学に行かれへん』と諦めかけていたら、父に『実は中島家には絵の才能がある。美大を受けたらどうだ』と勧められ、それで1浪して武蔵美に入ったんです。東京芸大も受けましたが、残念ながら落ちました」

――大阪時代はどんな少年でしたか。

「両親ともに厳しかったので、ビクビクしながら周囲の顔色をうかがうような少年でした。『喜んでくれるかな』『怒られるかな』といつもセンサーを働かせていた。この経験は、後に広告の仕事をするようになると、とても役に立ちます。とにかく僕は学校ではひたすら人気者になりたくて、アホなことばかりやっていた。ホウキをギター代わりにグループ・サウンズ(GS)のまねをしたり、壁新聞で漫画を連載したり……。空回りすることも多くて『中ポンはアホや』なんてよく言われました」

音楽でメシを食うのが夢、ひょんな偶然からCM制作会社へ

――大学では将来、何になろうとしていたんですか。

「できれば音楽でメシを食っていきたいなとは考えていました。チューリップやビートルズが好きだったし、作詞、作曲もしていましたから……。でもあまり本気で頑張ってはなかったかな。もっと本気でやるべきだったと思います。自分の限界にうすうす気が付いていたのかもしれません。ただ、在学中から美術の予備校で講師のアルバイトをしていて結構収入があったし、同級生4人でデザインのチームを作って芸術活動も始めていたので、無理に就職するつもりはなかったです」

「実は広告やデザインは、いかにもウソ臭くて、汚れたものだと嫌っていました。むしろ軽蔑していたくらいです。でも人生は皮肉ですね。あれほど広告を嫌っていた僕が、ひょんな偶然からCM制作会社に入社し、CMディレクターとして仕事をするようになるんですから。まさに交通事故に遭ったようなものです」

(聞き手は編集委員 小林明)

※次回(2020年2月14日)は東北新社に入社し、心の中にジレンマを抱えながらも売れっ子ディレクターとしてヒットCMを連発、東北新社副社長になるまでの軌跡を回想する。

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