今もひっきりなしに噴火 世界遺産の火山島に暮らす人

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

ストロンボリ島の火山は常に穏やかな活動を続けており、ときおり、激しい噴火が起きる。2019年夏に大規模な噴火が相次いだ後、イタリア市民保護局は不安定な状態と判断し、標高約290メートルから先への立ち入りを禁止した(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「地中海の灯台」とも呼ばれるストロンボリ。イタリア、シチリア島の北方にあって、七つの火山島で形成されるエオリア諸島の一つだ。面積は米ニューヨークのマンハッタン島の4分の1ほど。海上に出ている部分は標高926メートルとあまり高くないが、今も世界有数の活発な火山で、2500年近くにわたって溶岩を吐き出し続けている。

ストロンボリと周辺の火山島は、2000年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された。火山学にとって重要というのがその理由だ。毎年夏になると、黒い砂がきらめくビーチで過ごそうと、旅行者が船で訪れる。夕暮れどきには、多いときには500人もの旅行者が4時間をかけてストロンボリの頂上を目指す。夜の暗闇の中で花火のように爆発する溶岩を見ることが目当てだ。

ストロンボリの北斜面にあるシャーラ・デル・フオコ(火の小川)。噴火すると、溶岩がここを流れ、海に注がれる(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

2019年7月、ストロンボリで激しい突発的な噴火が起こり、噴煙は約4800メートルの高さに達した。高温の火山れきや火山灰が降り注ぎ、南西の斜面で山火事が発生。住民や旅行者を救命ボートで避難させる事態となった。ガイドツアーが始まっていない時期だったが、登山者1人が死亡し、数人が負傷した。

それから間もない8月28日には、ストロンボリで大噴火が起きる。山頂の火口から急勾配のシャーラ・デル・フオコ(「火の小川」)で火砕流が発生。海にまで達し、小規模だが津波が引き起こされた。イタリア市民保護局はストロンボリが不安定な状態にあると宣言し、3合目にあたる標高約290メートルから先の立ち入りを禁止した。

ティレニア海を一望できるストロンボリの大広場(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

死者が出て、安全に関して国が動いたことは、火山ツアーの危険性を浮き彫りにした。19年12月にニュージーランドのプレンティ湾に浮かぶホワイト島(マオリ名はファカアリ島)の噴火で犠牲になった人々も火山ツアー参加者だった。火口のすぐそばにいた人が複数亡くなっている。ホワイト島の場合、噴火そのものは取り立てて珍しいものではなかったが、火口のそばに人がいたことが惨事を招いた。

旅行者は自ら危険に飛び込むべきではないだろう。そこで、私は19年11月にストロンボリを訪ねることにした。山頂からの360度の眺望や、火口を覗き込まなくても、ストロンボリを楽しめるかを確認したかったのだ。

地元のツアー会社マグマトレックのベアトリス・ファッシ氏は「夏に噴火が起きて以降、火山ツアーは激減した」と話す。「ツアーを続けるにしても、内容を根本から変えないといけませんね」