歳を重ねただけで/人は老いない/夢を失ったとき/はじめて老いる
日本でもよく知られた、サムエル・ウルマンの著名な詩「青春とは」(自由訳・新井満)の一節です。こんなくだりもあります。
臆病な二十歳がいる/既にして 老人/勇気ある六十歳がいる/青春のまっただなか
溌剌(はつらつ)として見えるか否かは何の差で決まるのでしょうか。心の中に情熱が詰まっている男と、詰まっていない男との差でありましょう。まことに耳の痛い名言であります。
80歳で結婚したピカソ、晩年まで「青春真っただ中」
「画家に年齢なし」を貫いたのがパブロ・ピカソであります。ピカソはスペインのマラガに生まれ、世を去ったのは1973年4月8日。92歳でした。そしてピカソは晩年まで作陶とその絵付けに没頭したのです。
晩年のピカソが偏愛したものに、フレンチカジュアルでおなじみのカットソー、「バスクシャツ」があります。バスクシャツとは一般的にはボートネックで七分袖のコットンジャージーのこと。ボートネックは船底のように鎖骨に沿って横に開いた襟元をいいます。厚いコットン地でできたバスクシャツはTシャツとスエットシャツの中間といっていいでしょう。たたずまいは海辺にぴったりです。
61年にピカソはジャクリーヌ・ロックと結婚しました。ピカソは80歳、ジャクリーヌは33歳でありました。2人は地中海に近い山あいの陶芸の街、南仏のヴァロリスで出会い、ピカソがひとめぼれしてプロポーズ。まさにこの時のピカソは、「青春真っただ中」だったのです。
ピカソはアトリエで絵を描く時、バスクシャツを着ることが多かったようです。青いボーダー柄が定番ですが、無地のバスクシャツも好んでいました。バスクシャツは実によくできており、袖まくりの必要がありません。コットンジャージーですから身体を締め付けることなく、動きやすいのも絵を描くには都合がいいところです。

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