日経Gooday

【マスクの使い方】

感染者がマスクを着けることは重要、使用後の取扱いに注意

新型コロナウイルスに限らず、呼吸器感染症の拡大を防ぐために重要なのは、感染者がマスクを着けることです。マスクを隙間なく、正しく着用していれば、くしゃみや咳の際に、また、会話中に、口からウイルスを含む唾液が飛び散ることは避けられます。注意しなければならないのは、マスクを外すとき、そして外した後の廃棄法です。

南東北第二病院の解説[注9]は、マスクの適切な使用の役に立ちます。特に、以下の「正しいマスクの外し方」に注目してください(以下引用)。

(1)マスク交換時の注意
マスク表面にはウイルスが付着している可能性があります。ゴムバンドのみを触って外し、マスク表面には触らないように注意しましょう。
 
(2)使用済みマスクの廃棄方法
使用済みマスクには、ウイルスが付着している可能性があります。表面や内側には触れないようにマスクを外してビニール袋に入れ、口を閉じて廃棄しましょう。
※マスクを廃棄した後、手にウイルスが付着している可能性がありますので、手洗いを行いましょう。

もし感染していても、これができれば近しい人に感染させずに済む可能性が高まります。

健康な人のマスクによる感染予防効果はあまり期待できない

マスクをしている日本人のほとんどが、感染予防を目的としています。インフルエンザウイルスもコロナウイルスも、直径は100ナノメートル程度ですが、咳やくしゃみと共に飛び出す飛沫は大きいので、不織布マスクで捕捉できる、という考えもあります。しかし、新型インフルエンザ専門家会議の2009年9月の見解[注10]は、以下のようになっていました(一部編集)。

「環境中のウイルスを含んだ飛沫は、不織布製マスクのフィルターにある程度は捕捉されるが、感染していない健康な人が、不織布製マスクを着用することで飛沫を完全に吸い込まないようにすることはできない。よって、咳や発熱等の症状がある人に近寄らない(2m以内に近づかない)、流行時には人混みの多い場所に行かない、手指を清潔に保つ、といった感染予防策を優先して実施することが推奨される」

つまり、自分自身の感染予防のための不織布製マスクの効果はもともと限定的であるため、マスクをしないからといって感染リスクが急激に跳ね上がることはないのです。重要なのは、できるだけ人の多い場所に近づかない、外にあるものをできるだけ触らない、手で顔を触らない、こまめに手指を洗う、または消毒することです。

なお、感染予防の期待を込めてマスクを着用する人も、捨てるときには十分注意してください。表側のみならずゴムバンドにも、ウイルスを含む飛沫が付着している可能性があります。取り外した後の手洗いを確実に行ってください。

もし家族が新型コロナウイルスに感染したら

東京都健康安全研究センターのアドバイス[注11]は非常に有用です。

ポイントは、看護するのは家族のうちの1人にして、それ以外の人は患者に不必要に接触しない、患者が使用したティッシュやマスク、看護人が使用したマスクや手袋はビニール袋に入れしっかりと口を縛る、患者や家族がよく触れる場所(トイレの流水レバーなど)を清掃・消毒する、などです。

QRコードから、小さな子どもにもわかりやすい「ガチャピン・ムックの正しい手洗い」の動画を見ることができます。ぜひ家族で共有してください。

■「濃厚接触者」とは?

 新型コロナウイルスの感染者が出るたびに話題に上るのが、「濃厚接触者」という言葉です。新型コロナウイルスに感染した人と「濃厚接触」があったかどうかで、感染のリスクは異なります。ではこの「濃厚接触」とは、具体的にどのような接触を指しているのでしょうか

 国立感染症研究所によると、「濃厚接触者」の定義は以下のようになっています(病原体によって濃厚接触者の定義は変わります)。

「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」が発病した日以降に接触した者のうち、次の範囲に該当するものである。

(1)世帯内接触者:「患者(確定例)」と同一住所に居住する者

(2)医療関係者等: 個人防護具を装着しなかったまたは正しく着用しないなど、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」の診療、処置、搬送等に直接係わった医療関係者や搬送担当者

(3)汚染物質の接触者:「患者(確定例)」由来の体液、分泌物(痰など〔汗を除く〕)などに、必要な感染予防策なしで接触した者


(4)その他: 手で触れることまたは対面で会話することが可能な距離(目安として2m)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者等

[注9]http://shinsei.minamitohoku.or.jp/medicalpost/post-2822/

[注10]https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0922-7b.pdf

[注11]http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/respiratory/ncov/kango20200129.pdf

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday2020年2月4日付記事を再構成]

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