「自分たちの小さなアイデアが世界の課題解決への足がかりになった。感動したし、モノづくりの素晴らしさを実感した」。参加した2年生の男子学生はこう話した。

ハッカソンは今後も継続して開催する予定だ。

「自分たちで試行錯誤することが楽しい」。高専起業部に参加する男子学生はこう笑顔を浮かべる。「入学した頃は卒業したら就職するつもりだったが、今は起業も選択肢として考えるようになった」とも。

自分たちが興味を持った技術やサービスで起業を模索。中には全長2メートルで積載量がある物流向け大型ドローンの試作に取り組む学生もいる。

ビジネス感覚、磨く場に

そんな学生らに、滝本氏は「失敗したら学業に戻ればいい」と笑って背中を押す。

滝本氏自身、北九州高専時代に起業家精神を学んだ。恩師は「ビジネス感覚を持て」と言って、青色発光ダイオード(LED)開発で知られる中村修二氏の講演を聴きに行かせるなどして、後押ししてくれた。滝本氏が高専起業部を立ち上げたのも、「今度は自分が」という思いがある。

ネクストテクノロジー代表の秦氏も北九州高専の卒業生だ。秦氏は技術者であり創業者という高専生ならではの起業スタイルに注目する。「高専生はとにかく技術が好き。そして技術がよくわかっている。いわば(米アップル共同創業者の)スティーブ・ウォズニアック氏のような人材がたくさんいるはず」。

北九州高専では起業家育成の講義も拡充している。19年11月から「スタートアップ概論」を開始。希望する学生に全15回で学ばせる。講師には自動車メーカーやコンサル、スタートアップ支援企業などから現役のビジネスパーソンが登壇。授業では「高専生による高専受験予備校はどうか」といった起業のアイデアを話し合いながら、プレゼンや議論をするなど、起業に必要なセンスやアイデアを磨く。正式に単位認定もする。

講座を支援するデロイトトーマツベンチャーサポート(東京・千代田)の池尚大氏は「高専生はアイデアをモノに収められる強みがある。北九州から全国の高専にこの動きが広がることを期待している」と話す。

地元のサポートも厚い。北九州市と北九州高専、日本政策金融公庫の北九州支店は8月、地元就職や起業人材の育成で連携協定を結んだ。日本公庫が地元中小の具体的な人材ニーズや事業課題を持ち込み、高専生が就労体験する仕組みだ。北九州高専の原田信弘校長は「地域が求めるグローカル人材を育て、約10%の地元就職率を20~30%に引き上げたい」という。

滝本氏らの狙いは、高専起業部を全国の高専生が集うプラットフォームに発展させることだ。「互いに刺激し合って切磋琢磨(せっさたくま)したり、情報交換やプロジェクトのメンバー集めにも活用できる」と見る。

北九州高専以外からの参加者も徐々に増えており、名を連ねる「部員」は現在では10高専で計45人。製造業のまちから全国へ、さらに世界へ。広がる舞台の先に、ビジネスチャンスが待つ。

(福本裕貴、北九州支局長 山根清志)

[日経産業新聞 2020年2月3日付]

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