体も心もリセット スリランカ・アーユルヴェーダの旅
自発的に日常生活から離れて、体と心をリセットするような旅をしたくなる時がある。スリランカのアーユルヴェーダ施設「カルナカララ・アーユルヴェーダ・リゾート」は、そんな「リトリート」ができる場所だ。医師の診断によって施されるさまざまなトリートメント、体質に合わせた食事など、自分を見直すきっかけにもなるそうだが、どんなものだろう。
アーユルヴェーダは、サンスクリット語で生命を意味する「アーユス」と科学を意味する「ヴェーダ」が合わさった言葉。健康や美の向上のための施術に加え、食、さらに生活時間などを含めた人生の向上を目指す。ツアーを催行する旅行会社PINKによると、「当社は女子旅が多く、半分は一人旅。心と体のにいい旅を求めて、アーユルヴェーダ施設に1人で足を運ぶ人は多い」という。
スリランカへは、成田発着のスリランカ航空の直行便なら約9時間で、夕方到着する。今回滞在したカルナカララは空港から約30分と初日からゆっくりできる。日本人と日本語の話せるスタッフがいて、毎朝の医師の診断や生活アドバイスの時にも通訳をしてくれる。朝にはヨガ、夕方に瞑想(めいそう)、トリートメントは午前と午後の1日2回。さらにクッキングデモンストレーション、アーユルヴェーダワークショップ、伝統衣装のサリーの着付けなどアクティビティーに参加することもできる。
アーユルヴェーダでは、人が持つヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(地)という3つのドーシャ(体質)のバランスを取ることを目指す。持って生まれた体質もあるが、その時の生活の状態などで変わり、バランスが悪いと不調をもたらすという。
施設では、まず医師の問診と、3本の指を手首にあてて感じる脈の強弱で体質を診断する脈診で体質を診断し、それを基に取るべき食事やトリートメントの内容を決める。私の場合は、ヴァータとピッタが強いタイプ。スパイシーなものや酸味の強いもの(パイナップルなど)は避けて、水(白湯)をたくさん飲むようにとのアドバイスだった。ランチには、医師が選んだ食品で野菜や穀物、豆などを使った優しい味のスープに、数種のカレーのメインとコメ、新鮮なフルーツかヨーグルトにココナツのハニーをかけたものが出た。
最初の診断で、体質と体の気になる症状などに対応するトリートメントのプランを組んでくれる。3日間のプログラム中、フルボディーマッサージは2回、温めたハーブボールでマッサージをする「ピンダスウェダ」、額にオイルをたらす「シロダーラ」、ハーブバスなどを実践する。気になっている抜け毛には、「ニルヤーディ」というオイルを使った頭部マッサージ。美容効果も考えて、最後にボディーピーリングやフェイシャルマスクもお願いした。
毎日のスケジュールはほぼ同じで、毎朝6時前からのヨガクラスで1日が始まる。だんだんと夜が明けていくにつれて、体も目覚める感じなのがなんとも新鮮だった。朝食、ドクターチェック、ランチをはさんで午前と午後のトリートメントと続く。大きく開いた窓の向こうは川。風がほおをなでる。鳥のさえずりを聞きながら自然の中で受けるトリートメントは格別だ。夕食の前には瞑想の時間となる。
2日目のシロダーラは、温かいオイルが微妙に位置を変えて額に垂れていく。不思議な心地よさは病みつきになりそうだ。午後には蒸気の上にハーブを並べた木箱のようなスチームバスに。額から汗がどんどん出てきて、浄化されている気になる。
最終日のドクターチェックでは、体質から見た食事や生活のアドバイスをまとめた紙をくれる。「食前食後に水をとる」「同じ姿勢のまま長時間過ごさない」「オーガニックフードがベスト。スパイシー過ぎるもの塩辛いものは避ける」などなど。ここでは毎夕やった瞑想を寝る前に最低10分間、セルフマッサージを5分、運動は30分(ストレッチやヨガでもよい)なども書かれている。
どれも体によいと思えるアドバイスばかりだが、ついいつもの生活に流される。アーユルヴェーダの旅は、特別なトリートメントもあるが、当たり前のアドバイスがもたらす体と心の気持ちよさを思い出せてくれる旅である。
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスに。東京と米国・ポートランドのデュアルライフを送りながら、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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