コンサートで上京、直前に中止 交通費は請求できる?弁護士 志賀剛一

しかし、多くの公演では「公演中止となった場合、主催者はチケットの購入金額のみ払い戻します」「理由のいかんを問わず、旅費、通信費、その他入場券などの購入に際し支出した費用などを一切請求することはできません」という趣旨をチケット裏面に記載したり、規約の適用を明示したりしています。

そうなると、たとえば出演者の病気が原因で公演中止となったが、それは出演者の不摂生や健康管理に問題があるからではないかというような場合でも、原則的には交通費などの請求は難しくなります。

出演者の故意、重大な過失の場合は?

しかし、公演中止が明らかに出演者の故意や故意に匹敵するような重大な過失による場合も同様でしょうか。この点、消費者契約法では、事業者の債務不履行が「故意または重大な過失」によるものである場合にまで消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項は、無効であると規定しています。

2018年、日本でも往年のスター歌手が公演当日、「契約上の問題」という理由で開演直前にキャンセルし、話題になりました。実際には観客が少ないことに出演者が怒ったからだともいわれていますが、「契約上の問題」といっても顧客はその契約に関係ないはずですから、この件などは出演者の故意によるものといえるでしょう。

報道では、チケット代金のみ払い戻されたようですが、裁判などで争えば交通費なども認められたかもしれません(もちろん、費用対効果の問題があるので、実際に裁判までやることをお勧めするものではありません)。

なお数年前、新国立劇場では出演者の出演時間の勘違いによる遅刻で上演予定だった舞台が中止になる出来事がありました。これは「重大な過失」に当たると思われますが、このとき、主催者側はチケット代金の払い戻し以外に当日の交通費およびチケット購入にかかった手数料についても賠償しています。良心的な対応といえるのではないでしょうか。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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