コンサートで上京、直前に中止 交通費は請求できる?弁護士 志賀剛一

通常、チケット代金は先払いされているものと思われますが、チケット代金の支払い義務の消滅で、主催者が受領した代金は法律上原因のない利得になるので、顧客は不当利得返還請求として主催者にチケット代金を返すよう求めることが可能です。

「特約」を設ける主催者も

民法どおりであれば私が述べたような解決になるはずですが、これとは別の特約があれば(多くの場合、チケットの裏面に記載された事項、あるいは主催者やチケット販売会社のホームページに表示されている規約)それに従うことになります。

この点、多くの公演主催者が適用している一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)「ライブ・エンタテインメント約款」でもチケット代金の払い戻しは当然の前提としています。ところが、中には「天災時など、やむを得ない理由により中止となった場合でもチケットの払い戻しなどは致しませんので、あらかじめご了承ください」と約款などで明示している公演もたまに見受けられます(多数のアーティストが出演するいわゆる「フェス」と呼ばれるイベントに多いような気がします)。

これに従うなら、当事者双方いずれの責任でもない事情によって一方の当事者(主催者)が債務を履行することができなくなった場合でも、他方の当事者(顧客)の債務だけが存続し、支払い義務を負うことになります。しかし、このような約款などは「消費者の義務を加重する消費者契約の条項で、消費者の利益を一方的に害するもの」であり、消費者契約法により無効と解される余地があるように思われます。

主催者側の原因ならば債務不履行だが…

では、公演中止の理由・原因が出演者を含めた主催者側(もちろん、出演者と主催者間の契約でも賠償が問題になりますが、ここでは出演者も主催者側ととらえ、対顧客との関係のみ説明します)にある場合はどうなるでしょうか。この場合は危険負担ではなく、主催者が顧客に対し、決められた日時・場所において、決められた出演者による公演を実施し、公演を鑑賞させるという「債務」の不履行であると解されます。

債務不履行の場合、公演中止と相当因果関係のある範囲で顧客が被った損害の賠償がなされるのが原則ですので、会場までの往復交通費などは賠償に含まれるでしょう(宿泊費は状況によると思われます)。

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