コンサートで上京、直前に中止 交通費は請求できる?弁護士 志賀剛一

写真はイメージ=PIXTA
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Case:73 楽しみにしていたアーティストのコンサートが、不可解な理由で直前になって中止になりました。チケットの払い戻しは当然として、地方から上京している私としては交通費や宿泊費もかなりかかっています。これらの請求はできないのでしょうか。

自然災害が理由、返還請求は可能

 1月、マドンナがポルトガルの首都、リスボンで行われるはずだったコンサートを開始直前にキャンセルしたとのニュースを見ました。公演開始のわずか45分前にチケットの所持者にメールで連絡が来たそうです。日本でもコンサートや公演の中止がしばしば報じられています。理由は病気によるものが多いようですが、台風など天候によるものもあります。また、中国では新型コロナウイルスの感染拡大による公演中止も報じられ始めています。一刻も早い収束を願うほかありません。

 さて、公演が中止になった場合にその損失を誰が負担するのかという問題は、公演中止の理由・原因によって考え方が変わってきます。相談のケースは「不可解な理由」とのことで、天候や災害が理由ではなさそうですが、まずは台風や地震など天候や自然災害を理由に公演が中止になった場合、法律関係がどうなるか考えてみましょう。

 公演の主催者とチケット購入者(顧客)の法律関係を説明すると、やや難しい表現ですが、主催者は顧客に対して決められた日時・場所で、決められた出演者による公演を実施し、公演を鑑賞させるという「債務」を負います。顧客は主催者に対し、その対価としてチケット購入代金を支払うという「債務」を負います。通常、チケット代金は前払いなので、顧客の債務はチケット購入時にはすでに完了された状態(履行)となっているはずです。そうすると、残るは主催者の債務だけです。

 民法では、契約当事者双方が対価的な債務を負っている場合、当事者双方いずれの責任でもない事情で一方の当事者が債務を履行することができなくなった場合、公平の見地から他方の当事者の債務も消滅するとされています。これを「危険負担」といいます。このため、台風や地震など主催者の責任とはいえない理由で履行できなくなった場合、他方の当事者の債務、つまり顧客のチケット代金の支払い義務も消滅することになるのです。

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