実は身近に300万人超 日本はすでに「移民社会」国士舘大学 社会学 鈴木江理子(1)

国士舘大学のキャンパスは、東京都世田谷区の行政の中心である区役所のすぐ隣にある。鉄道ファンに人気のある東急世田谷線(いわゆる「軌道線」だが、現在は路面ではなく専用軌道を走る)の世田谷駅から歩くと、区役所の前を通り過ぎて徒歩1分か2分、といったところだろう。

鈴木さんの居室は、1階にアトリウムを持つ今風のビルの上階だ。古くからの住宅や寺社が立ち並ぶ、とても「日本的」とも思える風景を見下ろしつつ、まずは「研修」「技能実習」「留学」「特定技能」といった概念のレベルから、頭がこんがらがっていると正直に伝えた。

「たしかにこの問題はマニアックなんですよ」と鈴木さんは笑いながら応えた。

「この前も私が共同代表をつとめた全国フォーラムにご登壇くださった外国にルーツをもつメインスピーカーの方たちが、『専門家しか語れないのはよくない』と言っていました。『実は、身近なことなのに、ふつうの人が語れないっていうのはよくないし、身近に感じたことを口にできるほうがいいんだ』って言われたのが、すごく頭に残っています。確かに、専門家がちょっとマニアックになりすぎているなって思っていたところです」

川端裕人さん。

というわけで、鈴木さんも「マニアックになりすぎているかも」と思っていたところに、ぼくがちょうど「関心があるが複雑でよくわからない」とやってきたものだから、お互いのニーズがここで一致した。ぼくは、初歩的なところから話を整理していく「大義」を得て、本当に基本的な質問から始めることにした。

まず最初に、「移民ってなんですか」だ。

「特定技能」の制度が導入されるにあたって、様々な議論があった昨年(2018年)、それが「移民政策か否か」が問題になった。外国から労働者を受け入れるというのは、素朴に考えれば「移民の受け入れ」につながっているだろう。しかし、政府の見解は常に「移民政策は取らない」「移民政策ではない」というもので、多くのメディアがその矛盾を報じていた。

では、そもそも「移民」とは何を指すのだろう。

「国連が統計のために使用している移民の定義には、ロングターム(long-term)とショートターム(short-term)があって、ロングタームの場合には、12カ月以上、通常の居住国を離れている人を指しています。でも、これはあくまでも統計を取るためのもので、12カ月以上いたら移民だと言われると、えっ、となりますよね」

たしかに、12カ月以上、よその国に住んだだけで「移民」と言われると、大学留学などで1年以上のコースを取っている人たちなども軒並み「移民」になる。ちょっと違和感がある。しかし、国連の統計だから、「移民の定義」として、よく言及されているものではある。

「ただ、この場合、英語と日本語訳との違いもあると思います。日本語では、『移民』とは別に『移住者』という言葉もありますが、英語では区別しません。1年でも別の国に移動しているなら、それは『移住者』なんだと言えば、日本語として納得しやすいですよね。けれど、『移民』というと、生活の実態がもう少し求められるので、やはり違うような気がすると」

日本語と英語では、「移民」という概念をめぐって、かなり違いがある。

日本語的には、「移民」というと、違う国に行ってそのまま根をおろして定着することを指すように聞こえるが、それよりも定着度が低く、また別の国に移ったり帰国することもありそうな「移住者」も含めて、英語のカテゴリーとしてはimmigrants/emigrantsだ。

「移民というと、1回受け入れたらもう帰ってもらえない人だっていうふうなイメージなんですね。それで、日本の場合、入国時点で必ず在留期間が設定されるので、いつか帰る人として『外国人』と呼ぶ。在留期間を延長していく中で定住化する人たちが出てくるわけなんですが、入る時点では『帰る人』という位置づけなので、多分、『移民』とは呼びたくないんだと思います」

そんな「気分」が、「移民政策ではない」というこだわりの背景にあるのかもしれない。

では、「日本の移民政策」の専門家としての鈴木さんは、「移民」をどう捉えているのだろうか。

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