大泉洋さん「ゴルフするなら、子どもといたかった」
悩み、つまずきながらも子育てに奮闘するママの姿を描いたドキュメンタリー映画「ママをやめてもいいですか!?」が2月末、公開されます。ナレーションを務めたのは映画、テレビをはじめ、活躍の場を広げる大泉洋さんです。自身も娘さんと日々向き合い、一緒にいる時間を何より大切にしてきたと話します。大好きだったゴルフは封印。「1日プレーで潰れるぐらいなら、1日子どもといたかった。そういう自分でラッキーだったとも思います」
楽しく遊べる期間は、後悔しないように一緒に
男性育休がクローズアップされるなど、パートナーと育児をシェアするという意識は確実に広がってきました。積極的に子育てに携わってきた点で、大泉さんは負けていません。
「できることは何でもやりたかったし、実行しました。飲み会に参加できないなんて不満はなく、あれほど好きだったゴルフをやらなくても、苦にならなかった。今も、運動会に行けないなら仕事を断ってと言います」
「全てが分かるわけではないけれど、妻は頼れる部分を僕にお願いしていたんじゃないかな。頼る相手がいないことは本当につらいだろうし、ダメなんて旦那さんがいたら、『それぐらいしっかりやれよ』って突っ込みますよ」
家族で過ごす時間を大切にしてきたけれど、「心が折れた」こともあったそうです。
「料理が好きだから、幼稚園の頃、娘の弁当は早起きして作りました。最初は大変好評。そして2回目は食べたいと言ったおかずを入れたんです。帰って感想を聞くと『おいしかった』って喜んでいました。何がよかったのかなと続けると『ふりかけ』。確かに、かけた。次は? 『ソーセージ』。僕がほとんど料理しないおかずばかり。なんか報われないって……。それ以来、やめました」
「先日この話をしたら、『え、そうなの』。(幼い頃のことだから)覚えていないんですよね。でも、また弁当が必要になったら、パパがやるよとも言いました。撮影で翌日早く出るからとかあるかもしれないけど、そうでなければ必死にやります」
「それより、焦ってるんですよ。娘が『パパパパ』って近寄ってくれる時期は限られていますから。子どもと一緒に楽しく遊べるのは10年もないでしょう。この間ぐらい後悔しないように、できるだけそばにいた方がいいんじゃないかな」
子育てに懸命にぶつかってきた大泉さんにとっても、今回の作品はいろいろ考えることが、そして感動があったそうです。
「妻が豪田トモ監督と知り合いだったことで、ナレーションの話をいただきました。お母さんの大変さというのはもちろん知っているから、新たな気づきなんてないだろうと想像していたんですが、見終わって号泣しました。作品で高校生の時に母親が蒸発した方が、わが子の接し方に悩む姿が映し出されます。僕には計り知れない世界。感動しました」
「子育てはいきなり仮免で外に出されるというコメントも出てきます。本当にその通りで、準備が不十分でも、生まれた瞬間からやるしかない。相手は赤ちゃんで、自分ではどうしようもないことも多い。上手にできるわけではないんだけれど、完璧を求めてしまう人もいる。もっと気楽に、考えすぎず、いい意味でどこか適当にやるしかないのかもしれないですね」
ものをつくるのが楽しそう
「一つだけ映画のお母さんに『それはダメ』と注意したかったのが、(旦那さんに)何か言わないでもわかってよというセリフ。往復ビンタかな(笑)。なし。言わなくて勝手に不機嫌になるのは勘弁してほしい。何度お願いしても直さないのは、こちらがいけないのですが」
ネット社会の現代は子育てに関する情報があふれています。それが逆にママたちを苦しめているのではと映ります。
「妻がネットを見過ぎているなと感じたこともあります。ネット社会ゆえに、いくらでも調べられるから、ママたちの取捨選択が難しくなってきます。ほかの親はこんなことしてる、自分もやらなきゃって。自分がつらくなるほどやり続けなくてもって、思ってしまいます」
「あるとき、おふくろが妻を見て『もう一回子育てをし直したい』とこぼしたことがあります。何もしてあげられなかった、と。例えば、僕たちの子どもの頃はみんな虫歯がありました。おふくろから磨きなさいと注意されても、面倒といったら『うがいだけでもしなさい』。でも磨いてなんてくれなかった。だから虫歯だらけ(笑)。今の親は必死になって磨いてあげる。僕もそうでした。昔に比べれば、十分やっていると思いますよね」
「子どもって親の思い通りにはならない。娘の未来はこうなってほしいという希望は持っていますが、これは娘が決めること。僕の両親もまさかこんな仕事に就くなんてみじんも想像してなかったでしょう。それよりも、少しでも娘が早くやりたいことを見つけてくれればと願っています」
「子どもにすべてをかけてきた面がある」と振り返る大泉さん。子育てが一段落すれば、どんな生活を目指すのでしょうか。
「気づくとアラフィフですからねぇ。さみしいけれど、そうなったらもう少し自分のために何かできるかなって気がします。今は演じること以外に何かしたいとはあまり思えないのですが。やっぱりものをつくるのが楽しそうだなと感じています。プロデュースなのか、監督なのか。漠然とできればいいなと思います。面倒くさがりなので、なかなか自分からは何もしないんですけどね」
企画・監督・撮影:豪田トモ
ナレーション:大泉洋
2020年2月29日(土)より新宿シネマカリテほか、全国の映画館で順次公開
【ストーリー】
大切でいとおしい。だからこそ、ときどき苦しい。産後鬱を乗り越えて、新たな命の誕生を迎えるママ。母の産後鬱による自死と、その傷に向き合うママ。我が子を抱きしめることができないママ……。子育てに奮闘する家族は、それぞれどんな答えを見つけ、歩んでゆくのでしょうか。
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