ビジネス書が生産性を上げる

自分が持ち合わせているリソースだけで事態を打開しようと試みるのも、解決を遠ざけてしまいかねない。「現状を前提条件として意識しすぎると、望ましいゴールよりも実現できそうな低めのゴールを設定してしまいやすい」(寺下氏)。必要に応じて前提を見直し、チーム構成や向き合い方を柔軟に変えるのが結果を出すコツだ。時には大がかりに人や資金をつぎ込まないと、解決策を講じにくいケースもある。決裁権を持たない現場担当者では打つ手がないと思えるケースは珍しくない。その場合は現場担当者が1人で抱え込まず、決裁権者や上長と相談して支援を仰ぐことも必要になってくる。

上司とのコミュニケーションは解決力を大きく左右する。報告を欠かさず、こまめに相談することによって、上司を巻き込んだチームづくりが可能になる。「上っ面の進捗確認ではなく本気で課題を解決したいという態度で上司に向き合えば、リソースを引き出しやすくなり解決に道が開ける」と寺下氏は上司の巻き込みを勧める。上司との折り合いの悪さを理由に転職を考え始める人もいるが、「上司とのぶつかり合いを逃げていては、上司を味方に付けるスキルを養えない。転職先でも上司トラブルを起こしかねない。『上司』という社内課題の解決は、もっと大きなビジネス課題の解決を後押ししてくれる」(寺下氏)。

解決力を高めるために寺下氏が勧める、すぐに始められるセルフトレーニングは「ロングセラーのビジネス書を読む」だ。自らも20代はビジネス書をほとんど読まなかったそうだ。しかし、30代に入り、ビジネス書を読み始め、1年間に15万円程度を自己投資に費やすようになってから、「生産性が格段に上がり、失敗も減った」。体系的にまとまっている名著は「先人の知恵が凝縮されていて、自己流ではたどり着けない知見を手軽に得られる」(寺下氏)。上手に仕事をこなしている先輩や同僚のふるまいをまねするのは「生きたお手本」となる。「妙なプライドから、自己流に走らないで、頼りになるメソッドは進んで取り入れるほうが結局は解決に近づく」という寺下氏の言葉は、経験者ならではの説得力を帯びていた。

寺下薫
 Create Career(クリエイトキャリア)代表、キャリアコンサルタント。サイバー大学客員講師。外資系企業を経て、ヤフーに入社。人材開発の責任者として6年間従事。問題解決養成塾「SV 研究会」を2013年に立ち上げた。18年にCreate Careerを設立し起業。組織開発、人材育成などに取り組んでいる。著書に『世界一速い問題解決』。
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