多くの企業で講演や研修をこなしてきた寺下氏の目から見ると、解決力をおおむねマスターしているビジネスパーソンは「ほぼ100人に1人の割合しかいない」という。理由を尋ねると、「人はなかなか自分の考え方や行動パターンを変えられない」(寺下氏)という答えが返ってきた。たとえば、自然に腕を組んでいる人に左右の腕を上下逆にしてもらうと、最初の数分は逆組みを保てるがやがて元に戻ってしまう。この例が示す通り、「その人にしみついた思考パターンや行動スタイルは、新しいルールを覚えても、体が覚えるまで続けないと、程なくぶり返してしまう」(寺下氏)。

寺下薫氏

だから、寺下氏の研修では教えた解決策を4度も繰り返させる。「1回や2回ではすぐ忘れてしまう。習慣化するレベルまで繰り返し、さらにその後もずっと意識し続けることが肝心」と、継続の大切さを訴える。解決力を発揮できる人と、そうでない人との違いは「ちゃんと身についているから、いつでもすぐに手順を再現できるかどうかの違い」とみる。解決力はスキルだから、使い続けていないと腕が落ちる。「たった20パターンでいいのだから、使える場面では積極的に使ってほしい。不断の繰り返しがスキル維持につながる」という。

「取り組んだふり」になっていないか

成長ペースが見劣る人は「自己流を好む傾向がある」と寺下氏は見抜く。仕事のこなし方にオリジナリティーを盛り込んで悪いわけではない。しかし「ひたすら自己流で取り組むのは生産性が悪い。効率的に処理しやすいパターンがせっかくあるのだから、柱に据えて、自己流は後から味付けに使うほうがスムーズに運ぶ」と行き当たりばったりの行動を戒める。「自己流が結果を出しやすいという裏付けはない」という現実を受け入れ、過去に大勢がおかした失敗に基づく方法論を取り入れるのは、「解決力アップの第一歩」のようだ。

「本当の原因としっかり向き合う」というのは、解決力を高める最重要の態度だ。寺下氏にいわせると、「解決策が見付からないと思われている多くのケースでは、原因の特定に失敗している」という。たとえば、ある商品の売り上げが伸びない理由を探す際、売り込み先へのアプローチや、セールス担当者の熱意など、割と簡単に思い浮かびやすい理由に飛びついてしまいがちだ。その正しくない原因究明に基づいて、的外れの解決策を講じても、望んだ結果は得にくい。「容易に取り組めそうな解決策を求める意識が働いて、手近な原因を求めてしまいやすいが、それでは『取り組んだふり』に終わってしまう」(寺下氏)

取引先が買ってくれない理由は売り込みテクニックのまずさにあるのではなく、先方の購買戦略が変わったせいかもしれない。その場合、こちらが手を変え品を変えと、アプローチを変えても結果はかんばしくなさそうだ。結果が出ないまま無駄に提案を重ねるのは徒労感が大きい。このケースでは売れない理由を勝手に想像したところにミスがある。「本当の原因を見抜くのは、解決に至るうえで最も大切。間違った『にせ原因』に突進しても、解決は遠ざかるばかり。解決が難しそうな原因であっても真正面から向き合う必要がある。解決できそうな『そこそこの原因』で安易に手を打ってはいけない」と、寺下氏は原因特定での妥協を禁じる。

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