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U22
ビリギャルもう1回勉強するよ

2020/2/6

ビリギャルもう1回勉強するよ

本当に必要なことだけ短時間で学ぶ

――でも、西成先生みたいにもともと数学に興味があったり数学的思考を生まれつき持った選ばれし人だけだったりしないの? 数学って、だれでもわかるようになる? 数学に向いてない頭の人もいますか?

「数学が特殊なのは、初歩から積み上げていかないと、絶対理解できないところです。でも、小学校の算数で勉強する四則演算とか小数、分数は必要だけど、中学以降だと2次方程式、三角関数あたりをおさえておけば十分。そこがわかると微分が使えるなってこともわかるようになります」

「絶対に必要な幹の部分だけ、短時間で勉強すればいい。そうすれば、浮いた時間で、現場の問題解決にどれだけ数学が使えるか、実践の勉強をすればいいんです」

――わたしも受験で一番大切にしていたのは「基礎から固める」だったけど、それだけで西成先生のように『マラソンのスタート時間短縮には微分が使える』って気づける数学プロみたいな人になるんだろうか?(自信なさ過ぎて疑いの目)

「ものすごく極端なことを想像してみると、案外見えてくるものです。マラソンの例なら、全員のすきまがゼロのぴったりくっついた場合と、一人一人の間隔が1キロも離れた場合とかね。で、両極端の間のどこかに必ず答えがあるはずだと考えて、頭の中に曲線が浮かぶ。そうすると、あ、これは微分だな、と思いつきます」

――うーん。でも、それが思いついても、私には計算できない気がする。

「いいんです。計算は得意な人に任せればいい。数学がすごく得意でどんどん計算できる人が世の中にはたくさんいます。もっといえば、これからは人工知能(AI)の力を借りることだってできる。大切なのは、この問題解決にはあの数学が使えるんじゃないか? と想像できるかどうか。AIは計算できても、ビジョンは描けない。人間の出番です」

――そうか、計算は別にしなくてもいいのか! 人間がしなくちゃいけないのは、考えること、想像すること、いろんな知識をつなげること、ですね。そういえば、公立はこだて未来大学の松原仁教授は「AIは人間の友達だ」っておっしゃっていました。AIと人間はそうやって手を取り合って新しいものを想像したり、今ある問題を解決したりしていかなきゃなんですね。

「数学って、効率化のために生み出された人類の知恵です。大昔の人たちが、向こうの山までの距離を知りたいといった問題に直面して、それがもとでいろんな定理が生み出されました。数学はいつも、まず実際の課題があって、それを解こうとしてきた営みです。だから、我々はそのバトンを引き継いでありがたく使っていけばいい」

「私は数学を使って問題を解決したときの皆さんの笑顔を見るのがうれしくて、それでずっと数学を続けているんです。数学は社会をハッピーにする。それが伝わるような数学の教育が、これからはできるといいなと願っています」

西成活裕さん
1967年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。山形大、龍谷大、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授。専門は数理物理学。様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書「渋滞学」(新潮選書)は講談社科学出版賞などを受賞。2007年JSTさきがけ研究員、2010年内閣府イノベーション国際共同研究座長、文部科学省「科学技術への顕著な貢献 2013」に選出、東京オリンピック組織委員会アドバイザーにも就任している。趣味はオペラを歌うこと、合気道。著書に『とんでもなく役に立つ数学』(KADOKAWA)、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(かんき出版)などがある。
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。2019年4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。
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