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校庭に大きな笑顔を描いてみる 体動かせば分かる数学

使える数学(後編)

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NIKKEI STYLE

ギャルの女子高生が慶応大に合格するまでを描いた「ビリギャル」のモデルとなった小林さやかさんが、様々な分野の専門家に率直な疑問をぶつけます。前回に引き続き、数学編。大学院生になったビリギャルが、あなたにかわって勉強してきます。

「数学は大人になってからも役に立つのだろうか」。東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授の前回のお話は目からうろこがおちまくりだった。割り算と微分を少し使えば、マラソンのスタート所要時間を短縮できるし、うちのお風呂の湯温をちょうどいい感じにもできる。さらにスマホの裏側はサインコサインタンジェントなんだって。でも、大きな疑問があるよね。どうして学校では、「数学は便利に使える」って教えてくれなかったのか? 西成先生にさらに深く聞いてみた。

――数学はなぜ必要なんですか? という最初の疑問はだいぶ解けてきました。でも、どうして学校では「こんなに役に立つよ」って教えてくれなかったんだろう? ひたすら難しい計算をさせられて、楽しいと思えませんでした。

「残念ながら、中学高校の現場の先生の多くは、数学は知っているけれど、仕事の現場でどう役に立っているかをあまり知らないんですね。だからうまく伝えられない。私は中学高校の先生に『数学の教え方』を教える講演をしているくらいですから」

――なんと……数学の先生の数学の先生が西成先生なんですね。それ直ちに全国の全数学の先生たちに聞いてもらいたいです。

「数学の授業って、つまらないことが多いですよね。それには理由がある。今の数学のカリキュラムは、極端なことを言えば数学の専門家をつくるためにあるようなものなんです。だからやたらと難しいし、こなしていく問題がたくさんある。でも、ほとんどの人は数学の研究者にはならないでしょ?」

――まあ、ほとんどの人はならないですよね。わたし友達多いけど数学の研究者になった人、一人もいないもん。

「数学の教科書は数学者が作っているから、研究者への道を歩かせる内容になってしまっている。でも、もし、数学をバリバリ使って、さまざまな社会の実際の問題を解決している人が数学の教科書を作ったら、まったく違うものになるはずです。誤解のないように言うと、数学の研究者ももちろん必要なの。そういう人には道を究めてほしい。でも、そうじゃない、実用的な数学の教え方もあっていいはずです」

「例えば、『マラソンのスタート所要時間を縮めたいから全員アイデア出してみよう! これを考えるにはどうやら微分が必要だな。だったら微分のやり方を覚えようよ』みたいに、解決したい問題を示してから、ではどんな数学が必要なのかを教えたら、勉強したくなるでしょ?」

小中学生に数学、どう教える?

――たしかに、それならなんか想像しながら自分で考えられるし、ただ公式を覚えて計算問題をひたすら解くよりもよっぽど知識になりやすそうです。小学校とか中学校レベルだったら、例えばどんなふうに生徒に問いかけたらいいいんでしょうか。

「図形の勉強なら、『グラウンドに大きな笑顔のマークを正確に描け』という課題を出します。正確に描かなきゃいけないわけだから、生徒たちは必死で考えると思うんです。きちんとした円を描くために、ひもを持ってきてぐるっとまわる子もいるでしょうね。小さいマークを拡大しようと考える子もいるでしょう。数学でいう相似の考え方を学ぶことになる」

「音楽と数学も相性がいい。小学校で理科と数学、音楽を一緒に教えたんですよ。歌を歌いながら、なぜ声が出るかを考えさせる。これは理科で教える振動ですよね。そして、拍子をとるときに手をたたいて分数を教える。4拍子の曲を8拍子で打ってみようって教えればいいんです」

――えー、めちゃくちゃ楽しそう。数学ってとっても便利で万能じゃないですか。なんか悔しいなあ。私、小学校からずっと本当に数学が嫌いだったの。もしこうやって学べていたら理系に進学していたかもしれない。

「実は私も小学校の算数が大嫌いだったんです」

――そうなんですか。先生もつまらないと思ったの?

「小学校4年生くらいから、数学の授業はほとんど聞いていないです。高校のころは数学の時間は机を後ろに向けてましたね。耳栓までして」

――それは過激だ、わたしより早めにぐれている(笑)。でも東大に入って、数学を教えているじゃないですか。

「数学って、図形を扱う幾何、数字は代数、変化は微分積分と、きちんとそれぞれの体系があるんですよ。でも、小学校の算数や中学校の数学は、それぞれの分野をちょこちょこつまみ食いするように教えるだけで、全然ストーリーとしてつながっていない。で、勉強する気がなくなっちゃった」

――なんかぐれる理由がちゃんとしていてかっこいいな(笑)。

「そのかわり、自分で観察したり調べたりしていました。父に聞いたり、大きな書店で専門書を立ち読みしたり。理科で出てくる『オームの法則』なんかも、そうやって覚えました。かなり変わった人生を歩んできました」

本当に必要なことだけ短時間で学ぶ

――でも、西成先生みたいにもともと数学に興味があったり数学的思考を生まれつき持った選ばれし人だけだったりしないの? 数学って、だれでもわかるようになる? 数学に向いてない頭の人もいますか?

「数学が特殊なのは、初歩から積み上げていかないと、絶対理解できないところです。でも、小学校の算数で勉強する四則演算とか小数、分数は必要だけど、中学以降だと2次方程式、三角関数あたりをおさえておけば十分。そこがわかると微分が使えるなってこともわかるようになります」

「絶対に必要な幹の部分だけ、短時間で勉強すればいい。そうすれば、浮いた時間で、現場の問題解決にどれだけ数学が使えるか、実践の勉強をすればいいんです」

――わたしも受験で一番大切にしていたのは「基礎から固める」だったけど、それだけで西成先生のように『マラソンのスタート時間短縮には微分が使える』って気づける数学プロみたいな人になるんだろうか?(自信なさ過ぎて疑いの目)

「ものすごく極端なことを想像してみると、案外見えてくるものです。マラソンの例なら、全員のすきまがゼロのぴったりくっついた場合と、一人一人の間隔が1キロも離れた場合とかね。で、両極端の間のどこかに必ず答えがあるはずだと考えて、頭の中に曲線が浮かぶ。そうすると、あ、これは微分だな、と思いつきます」

――うーん。でも、それが思いついても、私には計算できない気がする。

「いいんです。計算は得意な人に任せればいい。数学がすごく得意でどんどん計算できる人が世の中にはたくさんいます。もっといえば、これからは人工知能(AI)の力を借りることだってできる。大切なのは、この問題解決にはあの数学が使えるんじゃないか? と想像できるかどうか。AIは計算できても、ビジョンは描けない。人間の出番です」

――そうか、計算は別にしなくてもいいのか! 人間がしなくちゃいけないのは、考えること、想像すること、いろんな知識をつなげること、ですね。そういえば、公立はこだて未来大学の松原仁教授は「AIは人間の友達だ」っておっしゃっていました。AIと人間はそうやって手を取り合って新しいものを想像したり、今ある問題を解決したりしていかなきゃなんですね。

「数学って、効率化のために生み出された人類の知恵です。大昔の人たちが、向こうの山までの距離を知りたいといった問題に直面して、それがもとでいろんな定理が生み出されました。数学はいつも、まず実際の課題があって、それを解こうとしてきた営みです。だから、我々はそのバトンを引き継いでありがたく使っていけばいい」

「私は数学を使って問題を解決したときの皆さんの笑顔を見るのがうれしくて、それでずっと数学を続けているんです。数学は社会をハッピーにする。それが伝わるような数学の教育が、これからはできるといいなと願っています」

西成活裕さん
1967年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。山形大、龍谷大、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授。専門は数理物理学。様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書「渋滞学」(新潮選書)は講談社科学出版賞などを受賞。2007年JSTさきがけ研究員、2010年内閣府イノベーション国際共同研究座長、文部科学省「科学技術への顕著な貢献 2013」に選出、東京オリンピック組織委員会アドバイザーにも就任している。趣味はオペラを歌うこと、合気道。著書に『とんでもなく役に立つ数学』(KADOKAWA)、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(かんき出版)などがある。
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。2019年4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。

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