#日経イチグラ 北関東・甲信のクイズに挑戦 Vol.3
「作問」の魅力
今回は北関東・甲信地区の第3弾。北陸の1件も同時掲載です。「宇都宮高校クイズ研究同好会」「独協医科大学クイズ研究愛好会」「山梨クイズ連合」「新潟大学クイズ研究会NNQ」です。
宇都宮高校クイズ研究同好会からの問題
独協医科大学クイズ研究愛好会からの問題
山梨クイズ連合からの問題
新潟大学クイズ研究会NNQからの問題
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宇都宮高校クイズ研究同好会へのコメント
<U22編集チーム>
大きく分けても、5項目の要素が詰め込まれていて、読みごたえがあります。歴史、地理、逸話など、複数のジャンルにまたがる「越境系」の設問は、解答者にとって気づきポイントが豊富で、手持ちの知識と組み合わせて、押し方をデザインしやすいです。
要素が豊富な分、やや詰め込みすぎの感があります。いわゆる「長文易問(設問の文字数が多めで、正解ワードは割と難易度が低い)」のパターンとしては十分に「あり」ですが、いくらか表現を間引いてもいいかもしれません。読み上げられる設問を聞きながら解答者が頭の中で整理できる情報量には限りがあり、多すぎると、最初のほうで聞いた要素を忘れてしまいやすくなります。
滝の絶景を楽しめる観瀑台まで、岩盤を貫いたエレベーターが設置されています。本問の「人工的に流れが制限される」も一般にはあまり知られていない要素でしょう。一方、「五時の教判」はこの言葉自体を知らないと、耳で聞いた場合、聞き取りにくい言葉です。出題する相手や場面に合わせて、盛り込む要素を取捨選択すれば、構成がすっきりして、解答者が聞き取りやすくなります。
独協医科大学クイズ研究愛好会へのコメント
<U22編集チーム>
今では誰もが知るようになりましたが、募集した2月の段階では、まだこういうストレートな形で出題できる情報でした。医科大学らしいアプローチで、余計な飾り気を避けた構成は、まっすぐに解答を引き出します。医療や健康にかかわる設問はとりわけ丁寧で誠実な作問態度が求められますが、さすがの抑制が利いた構成に整えられています。
外見に由来する語源で、しっかり限定してあります。現時点では、もう一段踏み込んだ切り口も可能です。2020年に入って世界に感染が拡大した新型コロナウイルスの呼び名は「SARS-CoV-2」。一方、「COVID-19」はこのタイプのコロナウイルスが引き起こす感染症の名前で、今でも混同されています。ウイルス自体は名前が示す通り、SARSと遺伝子構造が近いとみられています。「SARS-CoV-2」の冒頭4文字を尋ねるというのも、ありなのではないでしょうか。
ラテン語の「corona」が英語のクラウン(crown=王冠)の語源であるといわれる点も応用可能です。セルフ解説にある「エンベロープ」を出題することもできるでしょう。あるいは「アメリカの疾病対策センター、CDCが、丁寧な手洗いにかける時間の目安として例に挙げているのは、どんな歌を2回歌える程度の長さでしょう?(正解は『ハッピー・バースデー』)」といった仕立て方もあります。
山梨クイズ連合へのコメント
<徳久倫康>
上手です! 前フリの情報に口語的な表現を持ち出して親しみやすさを持たせつつ、多くのひとが知るディズニーのメジャーなアトラクションへつなげていく構成が見事。問題文はどうしても辞書の説明文のようになりがちで、かといってへんに崩すと違和感のもとなので、こういうテクニックが使えると幅が広がりますね。
<廣海渉>
全体的にうまいな~という印象を受けました。今回フィーチャーしたいのは前振りの入れ方のうまさです。「~という意味がある」というフレーズを問題文中に挟むにあたり、「~」の部分を辞書サイトなどの情報源からそのまんまコピペする問題が多い中、耳で聞いてもわかりやすいように書き換えられています。上位プレーヤーにとっては当たり前のことですが、こういう問題作りの知識ってなかなか成文化されないので触れておきます。
<U22編集チーム>
作問の動機や意図を、セルフ解説で読むと、心を打たれる思いがします。ポジティブでありつつ、平和を大切に考える作問意識が全体に通底していて、一貫性が備わっています。英語の会話表現と、ディズニーパークのアトラクション名というまたがり方も申し分がないです。見事な設計に、感心するばかりです。
「世間の狭さとその素晴らしさを実感する」という、生活体験から自然にわいた着想が素晴らしいです。感情や感覚を早押しクイズ設問に写し込むのは、なかなか難しいのですが、本問では慣用句とアトラクション名という二重の限定をはめて、きっちり正解ワードを固定しています。
ウォルト・ディズニーの設計思想までうかがえるような本質への目配りが、全体を支えています。ウォルトがユニセフから依頼を受けて製作を指揮した、ニューヨーク万国博覧会(1964年)のパビリオンが原点。このパビリオンが博覧会閉幕後、ディズニーランド(米国カリフォルニア州)に移設されたといいます。「戦争のない平和な世界=子供たちの世界」というウォルトの思想に触れる機会となり得る、屈指の良問です。
新潟大学クイズ研究会NNQへのコメント
<徳久倫康>
解説で笑いました。ただ現状の構成だと、「皮肉」という言葉を答えにするためにちょっと無理な問題文を作っているような印象を受けました(「何肉というでしょう?」という聞き方はいかにも苦しい)。多少くどくはなりますが、むしろ問題文を「お肉は食べると幸せになるものですが、言われると悲しくなる意地悪で遠回しな非難のことを~」というふうに、もうちょっと露骨に主観を入れた問題文にしてしまう手もあるかなと。皮肉じゃないです。
<U22編集チーム>
「~にもいろいろありますが、」は早押しクイズでよく使われる導入部分です。主な使い方は、一般的ではない方向への切り返し。「肉にもいろいろありますが、」という形であれば、正解ワードは通常の食用になる鶏肉や豚肉ではなく、「朱肉」のような食べない肉や、「苦肉(の策)」のような実体の存在しない肉が着地点になることが多いようです。今回の皮肉もこのパターンで落ち着いています。
作問にあたっては、自分の頭を使って、「肉」で終わる漢字連語を思い浮かべるほかに、検索機能を使う方法があります。「goo辞書」のようなインターネットサービスを使えば、後方一致形式の検索が使えます。「肉」を検索語に指定して、後方一致検索をかければ、「骨肉」「ぜい肉」「羊頭狗肉(ようとうくにく)」など、「肉」で終わる言葉が見付かるはずです。
グーグル検索も使えます。「皮肉 骨肉 朱肉」といった具合に、「食用ではない肉」の検索ワードを複数指定して検索すると、正解候補の言葉がヒットしやすくなります。ただ、辞書に載っていない言葉で、おもしろい単語もあります。たとえば、日清食品のカップ麺「カップヌードル」の具材に使われている、通称「謎肉」は上記の辞書検索サービスでは見当たりません。おもしろい言葉を見付けたタイミングで作問すれば、このような「検索で見付けにくい言葉」も取り込めるでしょう。
皮肉という言葉は、曹洞宗系のサイトをみると、達磨大師の教えと伝えられているようです(諸説があると思われます)。教えの表面的な部分を皮、もう少し深い内容を肉、基本的な考えを骨、最も重要な思想を髄と呼んだそうです。つまり、皮と肉は中身が異なるわけです。こういう語源要素を使った、別の切り口でも作問が可能でしょう。
作問のプロセスで、いろいろと下調べをしているうちに、関連する情報が得られたら、作問の方向性を変えるのは、よくあることです。下調べや裏取り(事実関係の確認)そのものも、知識が広がるきっかけになり、作問の楽しみとなりやすいでしょう。
作問に対する考え方は様々です。コメントはあくまで、それぞれの立場からの見方を示したものです。問題と解答は原則、応募いただいた形のまま掲載しています。
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