#日経イチグラ 北関東・甲信のクイズに挑戦 Vol.1
「作問」の魅力
今回は北関東・甲信地区の第1弾。
「松本深志高校Quiz研究会」「SQL」「長野高校クイズ有志の会」「群馬クイズ愛好会」です。
松本深志高校Quiz研究会からの問題
SQLからの問題
長野高校クイズ有志の会からの問題
群馬クイズ愛好会からの問題
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松本深志高校Quiz研究会へのコメント
<廣海渉>
長岡京駅が関西圏でなじみ深いはずなのですが、答えがひねり出せる気がしないです……。早押しクイズをしていると、「3つあるもののうち2つがとても有名で、あと1つが難しいからクイズにしよう」というタイプの問題は非常によくみられます。このタイプの問題の難点として、日ごろから「あと1つは何でしょう」というフィルターでものを見ていない人には答えを出すのが難しくなりがちなことが挙げられます。問題のテーマとなっている題材(この問題であれば鉄道)に詳しい人が取れる問題でなければ、結局「クイズのために作られたクイズ」となってしまい、面白くなくなってしまう可能性は常に留意すべきかなと思います。
<U22編集チーム>
オーソドックスな仕立てで、出題シーンを選びません。本州の動脈線であり、松本深志高校との地縁も感じさせます。一見、「鉄分が多め(=鉄道寄り)」にみえますが、実は遷都の歴史を写し込んであり、「鉄道×歴史」という重層的なこしらえです。
知名度から考えて、妥当な落としどころに着地させています。東京駅・京都駅が有名すぎるせいで、3駅すべてが頭に入っている解答者は、「という漢字」あたりで決めつけて押すかもしれません。ただ、東京駅・京都駅は当たり前すぎて、正解ワードに設定しにくいです。つまり、長岡京駅に落ち着くしかないとみえる諸条件があり、作問バリエーションを用意するのが難しいです。
同じく「本線」と名がつくJR路線では、信越本線に長岡駅があります。パラレル(類似の対比関係を軸に据えた設問形式)を組むことは可能ですが、オンリーワンの組み合わせなので、展開を見切られてしまいそう。せっかく歴史に着目しているのですから、いろいろな歴史情報に目を向けてもいいかもしれません。長岡京駅の名前は意外に歴史が浅いようです。1995年に旧神足(こうたり)駅から改称されています。一方、都としての長岡京は784年に平城京から遷都されています。こうした「長い歴史(長岡京)と浅い歴史(長岡京駅)」の歴史的エピソードを織り込んで、東海道本線とは別の歴史路線に仕立てる手もあるのではないでしょうか。
SQLへのコメント
<徳久倫康>
解説にあるとおり、科学と伝承両面から対象を照らす問題文で、とても完成度が高いです。気候変動の資料として世界的に参照されているとは知らず、驚きました。あえて欠点を挙げれば、文中の神様の名前はおそらく多くのひとにとって聞き覚えがないので、耳で聞くと話題の転換についていくのが難しいこと、くらいでしょうか。
<U22編集チーム>
水津賞に選ばれただけあって、すきのない組み立てです。歴史と科学の交差が全体に深みをもたらしています。「御神渡り」そのものはクイズの基本問題と言えますが、ありきたりではない情報を序盤から並べて、設問の景色を変えています。過去問をオリジナルテイストに仕上げる改作として、参考になるアレンジです。
ただ、やや情報がリッチすぎる感じもあります。耳で聞き取るのが大変そうな「建御名方神(タケミナカタノカミ)が妻の八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)の元に通った」のくだりは、固有名詞を省いて整理してもいいかもしれません。
固有名詞を省いて、漢字連語を減らした場合、次のような形があり得ます。
「1443年から残っている記録は、気候変動を知るうえで世界的にも貴重な観測データとされる、凍りついた湖の表面にできた割れ目が山脈のように連なりあって盛り上がる、諏訪湖の神々しい自然現象は何でしょう?」
修飾フレーズを最後まで連ねるのではなく、中段でいったん「中締め」したほうが、解答者の混乱を避けやすいと考えれば、「室町時代の1443年から残っている記録は、気候変動を知るうえで世界的にも貴重な観測データとされる、神々しい自然現象で、凍りついた湖の表面にできた割れ目が山脈のように連なりあって盛り上がる、諏訪湖のケースが有名なのは何でしょう?」という整え方もあります。
情報量が多い素材は、あえて省くことを検討してみるのもいいかもしれません。
長野高校クイズ有志の会へのコメント
<U22編集チーム>
「リンゴ」「スキー場」を織り込んで、長野県らしさを出しています。「体重」「身長」とあるので、生き物やキャラクターだという予想はつきます。決定的なヒントの「長野県のPRキャラクター」を最後に置く並び順で、しっかり正解へ導いています。4個のヒントのうち、序盤の2個がリンゴがらみ。1個は別の方向からでもよかったかもしれません。冒頭の「その」はなくても通じます。
全国のキャラクターが競う「ゆるキャラグランプリ2019」では長野県PRキャラクターの「アルクマ」がグランプリ(ご当地ランキング)に選ばれました。知名度は高まりましたが、それでもアルクマ自体を知らないと、正解する手立てがありません。類推の余地を残すという意味では、身長・体重を示すリンゴや、収集が趣味のかぶりものなどを、正解ワードに据える選択肢もあります。「長野県のPRキャラクター、アルクマは体重が70個分と設定されている、地元名産のフルーツでは何でしょう?」(正解は『リンゴ』)といったバリエーションも成り立ちます。
推理の手掛かりを提供するなら、「いつもリュックサックを背負って、信州の各地を足で巡り、地域の魅力を世の中にクマなく広めている、長野県のPRキャラクターは何でしょう?」といった手があります。「長野県のPRキャラクター、アルクマがクマなのに寒がりなので、いつも身につけているトレードマークで、リンゴをはじめ、信州の名産品をかたどっているのは何でしょう?」(正解は『かぶりもの』)という形で、固有名詞を尋ねない方法もあります。
群馬クイズ愛好会へのコメント
<U22編集チーム>
「横綱大関」は38年ぶりという異例の措置で、関心を集めました。このような危機管理的な制度が大相撲に用意されていることには意外感があります。肩書が四字熟語のように並ぶ字面の風変わり感も手伝って、問いの趣が深くなっています。
大関隼(おおぜき・しゅん)アナウンサーの名前に引っかけた冒頭は、話題を立体的に演出する、ややトリッキーな仕掛けと映りました。「大関」という名字が伏せられているので、大関アナを知らない人には、唐突に感じられるかもしれません。隼が名字とも聞こえるからです。
「思いつきはさておき、」は設問の方向が大きく変わる印象を与え、解答者にダイナミックな発想の転換を促します。作問者はこうした効果を織り込み済みで、あえてクイズに慣れた人向けにウイットを込めた出題を試しているのでしょう。
設問文中の指示代名詞に関しては、様々な見方があります。既に示された事柄を受けるのが一般的な使い方ですから、「これ」「その」といった指示代名詞の指す内容が正解ワードになるような使い方は避けるほうがよいという考えもあれば、重要な要素を正解ワードとして隠し持つクイズ文法は通常のルール通りに考えなくてもよいという考えもあります。今回は「これ」「こう」の2度にわたるので、さらに入り組んで見えます。
横綱が番付表の上で便宜的に大関を兼ねるという、一般的にはあまり知られていなかった仕組みだけに、復活の事情や用語の意味を設問に組み込むと、解答者の理解を助けやすくなります。「有力力士の相次ぐ欠場に伴い、今年の大相撲春場所で復活した、横綱が別の地位も兼ねるという異例の扱いを、2つの番付を並べた漢字4文字で何というでしょう?」といった形もあり得るのではないでしょうか。
作問に対する考え方は様々です。コメントはあくまで、それぞれの立場からの見方を示したものです。問題と解答は原則、応募いただいた形のまま掲載しています。
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