#日経イチグラ 東北からのクイズに挑戦 Vol.2
「作問」の魅力
今回は東北地区の第2弾。
「TQR(東北大学クイズ研究会)」「仙台二高クイズ研究愛好会」「仙台QBB会」「安積高校非公認クイズ研究会・AHQ(アーク)」です。
TQR(東北大学クイズ研究会)からの問題
仙台二高クイズ研究愛好会からの問題
仙台QBB会からの問題
安積高校非公認クイズ研究会・AHQ(アーク)からの問題
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TQR(東北大学クイズ研究会)へのコメント
<U22編集チーム>
テニス好きなら大半の人が知っていそうな言葉で、クイズの経験者でなくても、答えやすい設問です。前半に商品の長所を2点並べて、事情に通じていれば、早く気づくように工夫してあるのは、適切な配慮です。
「オムニコート」はもともとは住友ゴム工業の商品名です。あまりに広く普及しているせいもあって、普通名詞化していますが、サーフェスの一種ではなく、特定の商品である点は念のため明示したほうがよいかもしれません。オムニコートではない、他社製の砂入り人工芝コートも存在します。日本では一般的なコートですが、欧米では少数派だそうです。日本の天候になじむ、水はけのよさや、手入れの容易さ、管理コストの低さなどが普及の背景にあります。
砂入り人工芝コートは管理が楽な半面、国際的プレーヤーの育成には逆風になりかねないという指摘があります。トッププロだった伊達公子さんが早稲田大学院の修士論文で「選手の成長を阻む一因」と論じたことは有名です。評価が分かれる存在でありながら、日本ではガラパゴス的に圧倒的な普及を遂げたというあたりのパラドックス感はクイズの作問に向きます。商品名である点や、日本で突出して普及している点なども設問に意外性を添えてくれるのではないでしょうか。
仙台二高クイズ研究愛好会へのコメント
<QuizKnock>
一見なんの関係もないものを結びつけるとても優れた発想の問題だと思います。答えが「集める」と聞いてすぐに思い浮かぶ切手やコインではなく、少し変わった靴であるというところも面白いです。そしてこの問題のよいところは、サンリオのキャラクターと元フィリピン大統領夫人の趣味を両方知っている必要はなく、片方を知っていれば十分答えることができるという点です。こうすることで多様な人が答えることができますし、片方だけ知っていた人は、新たな学びを得ることができます。クイズの可能性を感じる良い問題でした。
<徳久倫康>
前段にはいま人気のキャラクター、後段には存命だがもはや近現代史上の人物を配置し、ふたつのまったく違う対象を「靴集め」というちょっと変わった趣味で結びつける。たいへん完成度が高いです。悪いところを見つけるとしたら、どのくらい正解が見込めるかがはかりにくいところでしょうか。ちなみに自分だったらポムポムプリンとイメルダに並べて靴泥棒で捕まった人(よくテレビでブルーシートに靴がずらりと広げられているような……)の名前を入れちゃう気がしましたが、もちろんなくてもよい、というか、たぶんないほうがいい問題です。
<U22編集チーム>
ポムポムプリンはこげ茶色のベレー帽がトレードマークのゴールデンレトリバー犬。公式プロフィルに「くつ集めが趣味」と明記されており、趣味と言い切れます。一方、イメルダ夫人の場合は靴好きだったことは間違いないでしょうが、「趣味」と言い切れるかどうか。ポムポムプリンは片方ずつ集めているそうですから、そのあたりを織り込んで変化をつける手もあります。
ポムポムプリンに動詞が添えられていないので、靴集めが趣味だと知っていても、後段を聞くまでは押しにくいです。逆に、ポムポムプリンの趣味を知らなくても、イメルダ夫人の逸話を知っていれば、後段だけで押せてしまいます。ポムポムプリンに関する知識の優位性を押しタイミングに生かしにくいのは、押しどころを散らすうえで、もったいないと映りました。
例えば、「サンリオのキャラクター、ポムポムプリンは片方ずつ集め、フィリピン大統領夫人だったイメルダ・マルコスは左右をそろえて集めていた~」といった具合に、ポムポムプリンの知識を生かしやすい仕立てに変える方法もあります。
仙台QBB会へのコメント
<廣海渉>
問題文の作りや題材に目新しさはあまりないですが、構文がちゃんとしているところ、しっかりと問題が自サークルの紹介になっているところ、解説にも言いたいことが込められているところから「強豪サークルらしさ」を感じたため、いいなと思いました。
<U22編集チーム>
ご当地クイズの形式でありながらも、片足が東京にあるという、地域に閉じない構成が巧みです。ヒントワードの「萩の月」を後方に置く配置も練られていますね。「おいでよ宮城」はこの種のアカウントとしてはかなりの知名度を得ていますが、そこまで一般的ではなく、出題する場や相手を選ぶかもしれません。
ツイートの中身を3本、列挙していますが、「選択肢は、ない」はやや意味を読み取りづらかったです。2本でも構わない気がします。「ある県」と示しているのに、正解が宮城県ではないのは、一般的な設問文法からみると、戸惑う人も出そうです。通常は「ある人物」「ある国」とあれば、それぞれの人物、国が正解ワードになることが多いですよね。作問者が問い読み(早押しクイズ設問を声で出題する人)を務めるのでない場合も考慮して、「Twitter」のような、カタカナで書ける言葉は「ツイッター」と書いておくほうが問い読みを困らせないで済みます。
「ある県」と置かれているせいで、問いの方向が2つに分かれて見えます。正解ワードを求める本筋の問い以外に、別の問いを盛り込むと、解答者が方向感を失いがちです。「ある県」を「宮城県」に変えれば、難易度がぐっと下がるうえ、一本道にまとまります。
例えば、「今は東京に住んでいる『中の人』が「地下鉄が高くてタクシーが安い」「過剰包装 萩の月」といった、ユーモアや言葉遊びを織り交ぜた物言いで、宮城県への来訪を呼びかけているツイッターアカウントは何でしょう?」という形です。
宮城県を尋ねれば、さらに解答できる人が増えます。「~物言いで、故郷への来訪を呼びかけているツイッターアカウントの名前は『おいでよ"何"県』でしょう?」(正解は『宮城県』)とすれば、「萩の月」が生きてくるのではないでしょうか。
安積高校非公認クイズ研究会・AHQ(アーク)へのコメント
<QuizKnock>
実際に曲を流さないクイズで曲名を問う場合、受賞歴や何かのドラマの主題歌だったといった皮相の情報で問題が構成されがちです。この問題はそういった構成とは一線を画し、踏み込んで曲を分析して特徴が挙げられている点で秀逸です。米津玄師という旬のアーティストの問題であり、曲を知っている人ならすぐに答えられ、知らなかった人も聴いてみたくなる良い問題です。もし一つ注文をつけるとすれば、列挙される言葉にもう少し曲の中での必然性や法則性があっても良かったことぐらいでしょう。
<徳久倫康>
一見つながりがつかみづらい列挙問題、好きです。腕が問われる技法ですが、かなり上手で、歌詞の魅力をうまく捉えた問題文に仕上がっています。歌詞をそのまま抜き出すのは簡単ですが、たんに言葉をなぞるのではなく、再解釈して構成し直しているのも魅力的。知らなかった曲が聞きたくなる問題、開いたことのない本が読みたくなる問題はなかなか作れるものではなく、感心しきりでした。
<廣海渉>
全然つながりがないようなフレーズがつながって1つになっていく、ボール球から変化してストライクゾーンに入ってくるような、独特の読後感の問題でした。今後この構文はまねされそうだなと思いました。少し旬を過ぎているかなという印象はありますが、まあ問題はないでしょう。
<U22編集チーム>
列挙式の設問は、作問者のセンスが問われます。「イ段で終わる」という枠をはめ、印象深い和語をそろえてあるのに加え、設問文そのものから米津玄師テイストが薫ります。
本問では歌詞に登場する順番を踏襲していますが、必ずしも登場順である必要はありません。「雨曝し、花曇り」はもともとの歌詞でも連続しているので、気づかれやすいでしょう。「御目通り」「虚仮威し(こけおどし)」「ねこじゃらし」などの言葉は歌詞では割と珍しいので、盛り込んでもいいかもしれません。
列挙式の場合、あまり素直に並べてしまうと、早くに底が割れてしまいます。むしろ、いったん別の方向に、解答者の頭を誘導するという組み立て方も選べます。「ねこじゃらし」あたりから始めると、解答者は浮かんでしまったイメージからの軌道修正に手間取るでしょう。
「泥仕合、花曇り」と続ければ、雰囲気の異なる要素の連打を手がかりに、列挙式設問と把握しやすくなりそうです。せっかく「雨曝し、花曇り、泥仕合」と、ニュアンスを帯びた表現を選んでいるので、残りの要素も味わいの豊かな言葉を選んで全体のテイストをまとめると、さらに趣の深い問いになりそうです。
作問に対する考え方は様々です。コメントはあくまで、それぞれの立場からの見方を示したものです。問題と解答は原則、応募いただいた形のまま掲載しています。
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