#日経イチグラ 北海道からのクイズに挑戦 Vol.4
「作問」の魅力
今回は北海道地区の第4弾。
「NQP(Night Quiz Project)」「北大クイズ研究会」「札Q」「北海道草クイズ連合」です。
NQP(Night Quiz Project)からの問題
北大クイズ研究会からの問題
札Qからの問題
北海道草クイズ連合からの問題
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NQP(Night Quiz Project)へのコメント
<QuizKnock>
「辞書にひらがなの発音方法が書いてある」という面白い事実に目をつけ、うまく問題文の形に落とし込んだ1問。文頭に「広辞苑によると」を配置することで、解答者の頭には、辞書で「意味」が定義されるような単語が浮かびます。辞書はふつう言葉の意味を説明するものですから。しかし、説明文を聞くうちに疑問が出てくる。意味ではなく発音の方法では、と。そして最後に「ひらがな1文字」が出てきて、答えが発表される。知っていたり分かったりした人は途中で正解できるし、正解できなくても最後まで聞けば、作問者の驚きを追体験できます。早押し向きの問題ですね。(山上)
<徳久倫康>
『広辞苑』では「い」も「う」も同じような説明がなされているので、なぜあえて「あ」なのかの説得性がやや薄いかもしれません。問題文中でどこまで出題価値をプレゼンするかは難題ですが、せっかく『広辞苑』25万語の見出し語の筆頭なわけで、問題文の最後で触れてもよかったのではないかとも思います。解説も素朴すぎてもったいないです。クイズ的には妙に「最後の見出し語」が注目されがち(第7版からは「ん坊」、それまでは「んとす」)なので、素直に「最初の見出し語」に立ち返るという点はいいのですけれどね。
<U22編集チーム>
国語辞典の言葉の定義からの設問は、辞書特有の堅苦しくて遠回りな説明が面白がられてきました。過去にも「靴」や方位(東西南北)の定義を出題したケースがあります。「あ」も50音の最初といった文字上の説明ではなく、発音サイドから説明すると、応募作品のような意外な表現となります。この定義を知らない人にとっては意外感が高いのではないでしょうか。
もともとの素材(『広辞苑』中の説明文)が興味深いので、下手にいじらず、プレーンな構成を選んだ判断がよかったです。ただ、素材主体のつくりだけに、作問者が工夫できる余地も小さいです。考えどころの一つは冒頭の「広辞苑によると」。辞書の定義系設問であることを予告する格好になっているので、解答者による攻め込んだ押し方を呼び込みやすいです。あえて「広辞苑によると」を後段に送る選択肢もありそうですね。
「あ」のほかにも、『広辞苑』では発音法で説明した50音があります。「む」は「両唇を密閉し、有声の気息を鼻腔(びこう)に通じて発する鼻子音(m)と母音(u)との結合した音節」と書かれていました。『広辞苑』を最初のページから読み通す人がいるせいもあって、「あ」はそこそこ有名ですが、別の50音を選ぶ手も面白いです。
北大クイズ研究会へのコメント
<U22編集チーム>
NHK大河ドラマは連続テレビ小説と並んで、クイズ設問の「お約束」的なテーマです。『麒麟がくる』も既に多彩な切り口からの作問が試されていますが、民謡という角度からのアプローチを選んだのは工夫を感じました。後半はストレートにドラマの主人公を尋ねていて、すっきりまとまっています。
「音頭」とあるので、そこまで聞けば分かりますが、「京都府の民謡『福知山音頭』」と「民謡」を早く示すと、解答者の頭にすっと設問が入ってきます。民謡に歌い込まれているのは、光秀へのポジティブな評価です。裏切り者の逆臣というイメージが強い光秀ですが、領国の丹波では領民から慕われていたという評価もあるようです。世間一般で思われている印象をひっくり返すようなエピソードを設問に織り込んでみるというのも面白いかもしれません。
例えば、このような設問も考えらるのではないでしょうか。「民謡の『福知山音頭』が『丹波をひろめ』と歌っているように、一般的な反逆者のイメージとは違って、領民からは慕われていたともいわれる、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で主人公として描かれている戦国武将は誰でしょう?」。
札Qへのコメント
<U22編集チーム>
身近な言葉を正解ワードに据えることは、解答者をハッとさせる効果があります。重箱の隅を突っつくわけでははく、普通に生活していれば答えられるという意味で、多くの解答者に開かれています。
「理想の体を手に入れる」という冒頭は、「狙い通りの体形」と書いてしまうと、確かに「デニーロアプローチ」と混同されやすくなります。作問者は冒頭に絶妙なチューニングを施すと同時に、「漢字4文字」のしばりを書き添えて、丁寧に誤答を回避しようとしています。
ただ、「肉体改造」という言葉の定義や語源をはっきりさせるのに苦労されたのではないでしょうか。オンライン百科事典の「ウィキペディア」には「身体改造」の名前で項目が立っていて、「肉体改造」はその一種という位置づけになっていました。「漢字4文字」の条件に当てはまる「身体改造」「人体改造」を不正解にはしにくいかもしれませんよね。
例えばですが、既存の固有名詞を使う手があります。「肉体改造」は、パーソナルトレーニングが売り物のスポーツジムが宣伝で使ってるようです。CS放送のトレーニング番組でもタイトルになっていたりもします。こうした要素を後段に盛り込むと、形の上では正解ワードを特定できます。
北海道草クイズ連合へのコメント
<U22編集チーム>
セルフ解説でも書かれている通り、雨の日イベントと知らなくても、推理で正解を導ける工夫は、知識のあるなしにしばられない「開かれた問い」です。クイズは「知識量の多さ」を競うものだという世間一般のイメージがありますが、論理的な思考や、生活の中で得た知識などを組み合わせて正解にたどり着けるような設問は、ビギナーや未経験者にもフレンドリーです。
設問の完成度がとても高いです。もしあえて検討するのであれば、「という」「割引」「行われる」が2回ずつ使われていることから、耳で聞いた際に少しまどろっこしさが出てくる点でしょうか。「サンリオピューロランドで毎年6月に実施される『けろけろ割引き』、東京ディズニーランドの特別パレード『ナイトフォール・グロウ』といえば、どちらもどんなお天気が条件になっているでしょう?」という方法で解消は可能です。
ただ、上記のように書いておいてなんですが、このような細部はほとんど気にならないほど、骨組みがしっかりしていると思います。知らないと答えようがない固有名詞(「ナイトフォール・グロウ」)を尋ねずに、自分の言葉で答え方(雨降り、雨天など)を選べるオープンな立て付けがすてきです。日本生まれのテーマパークと輸入されたテーマパークを並べた構成に加え、「ランド」で脚韻も踏んでいます。割引とパレードのずらし加減も目配りが効いていて、細部まで読み込みたくなる素晴らしい出来栄えです。
作問に対する考え方は様々です。コメントはあくまで、それぞれの立場からの見方を示したものです。問題と解答は原則、応募いただいた形のまま掲載しています。
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