#日経イチグラ 北海道からのクイズに挑戦 Vol.1
「作問」の魅力
十勝クイズサークル
札幌開成クイズ研究会
札幌南高校クイズ研究会
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十勝クイズサークルへのコメント
<U22編集チーム>
土地柄にちなむ設問のお手本ともいえそうな出来だ。細部の工夫も行き届いている。たとえば、冒頭の「少年時代」は、正解ワードが人物名であることを予告している。導入部から末尾まで、主語が一貫しているので、頭にすっきり収まる。ヒントワードの配置も抜かりがない。押しどころが巧みに分散されていて、実際の出題で使いやすい文章構成に仕上がっている。
アイヌ民族文化への共感を示しているといわれる『シンフォニア・タプカーラ』だけに、伊福部昭の音楽性に触れるくだりがあってもいい気がする。『シンフォニア・タプカーラ』の初演と映画『ゴジラ』の公開年は同じ1954年。幅広い表現力を物語る事例とも映る。
「幼い頃を現在の北海道音更町(おとふけちょう)で過ごし、アイヌ民族文化に根差した交響曲『シンフォニア・タプカーラ』を作曲したほか、『座頭市』『ゴジラ』シリーズの映画音楽も手がけた作曲家は誰でしょう?」「アイヌ民族文化への共感を示した交響曲『シンフォニア・タプカーラ』を初演した1954年に、特撮映画『ゴジラ』の音楽も手がけた、北海道音更町(おとふけちょう)にゆかりの深い作曲家は誰でしょう?」といったアレンジも可能になる。
伊福部昭のおいにあたる伊福部逹・東京大学名誉教授は、NHKが流す緊急地震速報のチャイム音の作曲者でもある。インタビューに答えて、『シンフォニア・タプカーラ』からヒントを得たと明かしている。現代との地続き感を盛り込むうえでは、こうした方面への横展開も視野に入る。
札幌開成クイズ研究会へのコメント
<廣海渉>
寡聞にして初めて知りました。知識として取り入れてからすぐに人に伝えたくなる、クイズの原点を思い起こさせるような問題文です。これは流行るかもしれませんね。あまり正解は出にくそうなので、どっちかというと、早押しよりは筆記クイズやボードクイズで輝く問題かもしれません。前振りが後フリとほとんど同じ内容だったので、もう少し前振りで違う情報を提供できるものであればよかったかなと思いました。
<U22編集チーム>
新しく生まれた言葉は、時代を映す鏡であり、クイズの主要題材だ。作問に慣れた人は日々、新聞やニュースサイトで新語の発見を心がけている。「ノモフォビア」は日本語版ウィキペディアには単独項目が立っていないが、英語版には既に項目がある。『ケンブリッジ英語辞典』にも2018年に採録された。スマートフォンが身近になった結果、不安を引き起こすまでに至ったという現象は同時代性が高く、作問テーマにふさわしいとみえる。ニュースにしっかり目配りしている点でも優れた設問だ。
「病気」は扱いが難しい言葉だ。2019年には世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を国際疾病分類に加えるというニュースが話題を集めた。何が病気かに関しては、専門家が十分な議論を重ねて結論を出すようになっていて、不調や異常のすべてを「病気」と呼ぶことはできない。ノモフォビアに関しては研究や議論が始まった段階のようで、「病気」と呼ぶのはまださしさわりがあるかもしれない。
ノモフォビアという言葉を知らない人には、正解を導きようがないので、初心者フレンドリーに仕立てるなら、設問の流れをひっくり返して、携帯電話・スマホを正解ワードに据えるアレンジも意味がある。
「フォビアというのは恐怖症を意味する接尾語ですが、ノモフォビアの人が体から離したり、電源切れになったりすると、不安を感じてしまう物は何でしょう?」というような形だ。「接尾語のフォビアは、特定の言葉に続いて、『恐怖症』を意味します。ゼノ、アクロ、アゴラなど、直前に添えられる言葉には大抵、"何"語の言葉が使われているでしょう?(正解は『ギリシャ語』)」といった、フォビアそのものの使い方に切れ込ませるアレンジも可能だ。
札幌南高校クイズ研究会へのコメント
<U22編集チーム>
広く知られた「どうぶつしょうぎ」という入り口から、イメージが遠い四字熟語に向かう筋立てが面白い。「軟から硬」への遷移が柔軟な思考を呼び覚ます。すべてがひらがなの「どうぶつしょうぎ」から始まり、すべてが漢字の「先手必勝」に落ち着くメタモルフォーゼ(変身)も味わい深い。
双方が最善を尽くせば、後手必勝だと証明されているそうだが、必ずしも誰もが知る事柄ではないので、後手必勝を知らない解答者にとっては、問いの向かう方向がやや見極めづらい。もちろん、このブレーキングは作問者の狙いなのだろう。伏せられている「後手必勝」は、実質的に正解ワードを特定する働きを任されているが、文中に「後手必勝」の言葉が示されていない以上、「先制攻撃」「先即制人」などの類語を不正解と判定できる条件付け(クイズ用語でいうところの「限定」)が必要かもしれない。
問いの向きを逆転させて、「どうぶつしょうぎ」を尋ねてもいいだろう。「勝負事は先手必勝といわれますが、理想的な指し手が続くと、このセオリーが成り立ちにくいゲームで、女流棋士の北尾まどかさんがルールを考え出したミニ将棋を何というでしょう?」といった体裁であれば、着想源の「後手必勝」を織り込める。「女流~出した」の部分は「3×(かける)4の盤面と、8枚の駒で遊ぶ」と差し替えても成り立つ。
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