日経イチグラ 日経賞に滋賀県立守山中高クイズ研究会
団体賞発表 QuizKnock賞は千葉県立船橋高校クイズ研究会部
全国の学生サークルなどのクイズ団体がとっておきの1問を競う「日経1問グランプリ」(略称日経イチグラ)の受賞作が決定しました。日経イチグラは、クイズをつくる「作問」の面白さに焦点を当てた企画です。2月6日から29日までの間、各団体からツイッター経由で寄せられたオリジナルクイズの応募数は、100問超。団体対抗で問題の質を競ってもらいました。参加いただいたすべての団体に心より感謝申し上げます。
問題の着眼点や切り口、構成などについての審査に携わったのは、日本経済新聞の若者向けチャンネルNIKKEI STYLE U22、クイズメディアQuizKnock(代表・伊沢拓司氏)、著名クイズプレーヤーである徳久倫康氏、廣海渉氏、水津康夫氏の各氏です。
厳正な審査の結果、団体賞の日経賞は時事ニュースを明解なクイズに仕立てた「滋賀県立守山中高クイズ研究会」に、同じく団体賞のQuizKnock賞は楽しさと学びを両立させた「千葉県立船橋高校クイズ研究会部」に贈られることとなりました。個人賞の水津賞、徳久賞、廣海賞については3月26日に発表する予定です。
なお、多様なクイズ文化を尊ぶという「日経クイズのとびら」のコンセプトに基づき、各賞の間に序列はありません。
本来は3月20日開催の全日本クイズリーグ(AQL)大会の会場で受賞作の発表と表彰式を行う予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で取りやめとなり、U22上でのお知らせとなりました。
日経賞 滋賀県立守山中高クイズ研究会
団体紹介 略称MQLs、創設2010年、部員約15名。QuarK加盟校として例会への参加・開催、高校生クイズやエコノミクス甲子園、AQLへの参戦などの活動を行なっています。学年・性別に関わらず、仲良くクイズを楽しめることが我々の良い所だと思います。
QuizKnock賞 千葉県立船橋高校クイズ研究会部
団体紹介 「県立船橋高校クイズ研究会部」は1993年に創設された。現在の部員数は40名を超えており、「高校生クイズ」等といったメディアへの出演に加えて「はじめて杯」や「船橋例会」といった大会の開催も手がけている。ほぼ毎日行っている部活で身につけた、素早い早押しが持ち味か。
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日経賞 滋賀県立守山中高クイズ研究会への講評
今回、受賞作の審査をしたNIKKEI STYLEのU22は、ビジネスパーソン向けとみられがちな日本経済新聞の中にあって、明確に学生向けを標榜しています。次世代の担い手である若者とともに歩みたいというシンプルな思いからです。今回様々なご縁から、中高生や大学生、そして社会人の間で盛り上がるクイズという未知の「森」に足を踏み込みました。想像以上の豊かさに率直に驚いています。
クイズの大会にお邪魔したり、練習を見学させてもらったりする中で、1つだけ「おやっ」と感じたことがあります。それは、日々のニュースを下敷きにした出題が思ったよりもずっと少ないことです。もちろんこれは私の主観であり、データの裏付けがあるわけでもありません。ただ、クイズに関係する方々の中からも、同じような問題意識を聞いたのも事実です。
日々生成されるニュースは、同時代を生き抜くうえで必要なものであるとわたしたちは信じています。クイズという「メディア」を通じて、情報に溺れるのではなくいかに乗りこなすのかを若い世代に体得してほしい、そういう願いを込めて今回の賞を選びました。
正解である「サブスクリプション」は、顧客が企業から定額でサービスを受けるという表面上の意味にとどまらず、大量消費社会からサステナブル社会へと移り変わる現代を象徴する重要なキーワードの一つです。日本経済新聞の朝刊と夕刊に過去1年間だけでも121回も登場しており、出題の必然性は申し分のないレベルです。
冒頭から結びまで、軸がぶれることなく、ストレートに正解ワードに向かっていく素直な設問構成で、解答者は問題をスムーズに理解することができます。「サービス名」「定義」「略称」と3段階に分けてしっかりと意味づけされており、正解ワードが確実に1つに定まっています。
序盤から段階的にヒントが配置されていて、知識の正確で豊富な解答者ほど早く押せるという約束事もきちんと守られています。こういった全体への目配りにおいて丁寧に仕上げられている点も高く評価しました。(U22 桜井陽)
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QuizKnock賞 千葉県立船橋高校クイズ研究会部への講評
QuizKnockは「楽しいから始まる学び」をモットーに掲げ、その手段としてのクイズにフォーカスするメディアだ。ゆえに選定基準は「楽しさ」と「学び」となる。その中で、「こういうことを問いたい」という明確なコンセプトがあり、その発想を余剰も不足もない美しい言葉で料理した作品を選んだ。
・文章としてキレイ 提出作品の中には「てにをは」のズレなど日本語表現としてのクオリティーにばらつきがあった。そんな中、スムーズな言葉遣いができている点を評価した。
・発見がある 横断歩道は英語で「ゼブラゾーン」と呼ばれる。問題の前半部分はそれにちなむものであろうが、そのことを知らなくても「横断歩道の柄とシマウマの柄は似ている」というところには、容易にたどりつけるはずだ。ジョージ・チャールズワース氏の知名度はかなり低いと思うが、その名を知らなくても「おお、そういう理由でシマウマ博士なのか!」という発見があり、クイズだけで学びとして完結する。解説を足す必要がほとんどない問題文だ。
・コンセプトの実現度が高い おそらくこの問題は「ジョージ・チャールズワース氏はみんな知らないだろうけど、シマウマ博士というあだ名から推測できるかな?」「横断歩道が発明・運用される過程について思いをはせたことがある人はあまりいないんじゃない?」という視点でつくられた作品だろう。誰もが知っている事物の中にあるほとんどの人が知らない一面にフォーカスするという視点が「へぇ~」という一言を引き出す。
「みんなが知らないことで興味を引く」→「概要を説明してなんとなく頭の中に像が描かれる」→「最後まで聞いてみんなが知っているアレだとわかる」という文章の流れにクイズを落とし込み、「発見」に至る思考の流れを無理なくデザインしている。コンセプト通りの丁寧な言葉選びができていると言えよう。
クイズはどうしても正解/不正解で人を分断する。学びの障壁となる「楽しくない」感情をもたらす可能性があるものだ。そんな中、不正解者でも学びを得ることができるこの問題の姿勢と完成度は、QuizKnockのモットーからみても高く評価できるものである。
なお、その他の作品では安積高校非公認クイズ研究会・AHQ(アーク)の 「flamingo」、浅野クイズ研究同好会の「プルスウルトラ」、洛北高校クイズ研究会の「日本橋口」などの完成度が高かった。問題文の長短は関係なく、「こういう切り口で事実を問いたい」という思いと、それを実現する文章力が兼ね備えられた作品と言えよう。個人的な好みでいうと、仙台二高クイズ研究愛好会「靴」や 桜丘中学校・高等学校クイズ研究部「称光天皇」は大変に好きな作品であった。目のつけどころが素晴らしく、ひとりのプレーヤーとしてぜひ答えたい問題である。
あくまでこの表彰はQuizKnockという立場からのものである。そもそもクイズへの評価というのは大変に難しく、大会などではおおむね「問題群」としての評価がなされることが多い。ほかにも意欲的な作品は多々あったことは重ねて強調したい。これをひとつの良い機会として、クイズを様々な角度から楽しんでいただければ幸いである。(QuizKnock代表 伊沢拓司)
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