腸で作られるアンモニアが皮膚から染み出す

アンモニアは肉などに含まれるたんぱく質が分解されてできる。たんぱく質は腸内で消化酵素によりアミノ酸や、これが複数つながったペプチドの形に分解されて体内に吸収される。だが、そのすべてが吸収されるわけではない。「吸収されないまま大腸に届いたアミノ酸や、腸肝循環する尿素が腸内細菌によってアンモニアに変えられ、体内に吸収される」(関根教授)。つまり、アンモニア臭の原因の一つにたんぱく質のとりすぎがある。

アンモニアは他の臓器でもつくられるが、血液中を流れるアンモニアの多くが腸管由来と考えられ、糞便(ふんべん)の臭いの原因物質インドールやスカトールのように、増えすぎると炎症を誘発する一因になる。そのため、肌荒れに関係するフェノールと同様に、腸内細菌が作る有害物質と考えられている。「通常は肝臓で尿素に変換され、尿と一緒に排出されるため気になるほどの臭いにはならない。しかし、加齢や心理的・肉体的ストレスや疲労で肝臓の機能が低下すると、血液中のアンモニア濃度が増し、皮膚からの放散量が増えてしまう。そのためアンモニア臭は『疲労臭』とも呼ばれる」(関根教授)という。体作りのためプロテイン(たんぱく質)飲料などを極端に多くとっている人も要注意だという。

皮膚由来のアンモニア臭はストレスの指標として使われることもあるほど。そのため、高ストレス状態とそれに伴う疲労に気を付けることが重要。そして、もう一つの対策がたんぱく質のとりすぎに気を付け、腸内環境を整えることと言えそうだ。

健常な男女3人に、カツオのたたき170gを食べてもらい、その後の皮膚からのアンモニア放散量を測定したもの。食べて3時間後には明らかに皮膚からのアンモニア放散量が増加していた。(データ提供:関根教授)
50代女性に皮膚表面から放散するアンモニア量を測定する機器と長時間心電図記録器を装着してもらい、心理的ストレスの伴う業務を行ってもらった。その結果、作業が進むにつれ、交感神経指標の増加と副交感神経指標の低下が見られ、皮膚アンモニア量が増加した。交感神経優位の状態は、心理的ストレス刺激や運動などの身体的ストレス刺激によって増加するが、業務は身体的負荷を伴わなかったことから、心理的ストレスが生じたことが、皮膚からのアンモニア放散量が増加した要因と考えられる。(データ出典:産業衛生学雑誌.2018,Vol.60,p543)

さて、自分自身が「疲労臭」を作り出すような生活をしていないだろうか。次ページのチェックシートで振り返ってみよう。

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オリゴ糖で腸内環境を改善、アンモニア臭をブロック