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異色のダブルシェフ 個性かけあうイタリアンの魅力

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地球と宇宙をイメージしたという、有田焼の窯元が特別に作った美しい青に彩られた器。盛られた料理に添えられているのはハチミツを思わせる甘味のあるミリンだ。どんな懐石料理の一品かと思われそうだが、これは横浜市のイタリアンレストラン「SALONE2007(サローネドゥエミッレセッテ)」のシェフ、弓削啓太さんが生み出した一品。

昨年、イタリアの食品会社バリラが主催する「パスタ・ワールド・チャンピオンシップ2019」にて彼を見事優勝に導いた料理だ。ゴルゴンゾーラを用いたイタリアの伝統的パスタ料理「ペンネ・ゴルゴンゾーラ」にノリ、サンショウなど和の素材を加え独自の世界を築き上げた。同レストランは、昼夜共、月替わりのコース1本で勝負するが、11月にはディナーコースに同メニューが特別に組み込まれ、海外からの来客も、舌鼓を打ったという。

イタリア料理を極めてきた結果と思いきや、実は料理と同じぐらい弓削さんの経歴もユニークだ。高校時代はサードを守る甲子園球児。卒業後は、英語を学ぼうとワーキングホリデーで訪れたカナダで、生活のためにイタリアンレストランで皿洗いのアルバイトを始めた。レストランで働くのは初めてで何もかも新鮮、皿洗いでさえ楽しいと思ったという。

「言葉は分からないけど、教えられたことをしっかりこなしていたら、料理長にそんなに動きがいいなら料理学校に行ってみたらと言われた」(弓削さん)ことが、料理人となるきっかけ。どんな動きをしていたのだろうと聞くと、「ただ与えられた仕事を自分なりに完璧にこなしていただけ」と言う。「例えば洗い物が流しに山積みになる前に自ら取りに行き、これを洗っていいかと聞いていました。まだ英語がつたなくそんなことしか聞けなかったので、とにかくしゃべりたいという気持ちもあったんです」

カナダで料理を2年学んだ後帰国。門をたたいたのは老舗フレンチ「シェ・イノ」だった。親に送ってもらった雑誌を読み込み、「一流の店で働きたい」と選んだ3店のうちの一つだ。いずれもフレンチの名店だったが、最初にOKの返事が来た同店に迷いなく飛び込んだ。雑務からのスタートだったが、店に入って2カ月目でフランス人のシェフパティシエのアシスタントとして働くことに。

「菓子のことは全く分からず、足手まといもいいところ」と振り返るが、懸命に働き3年でフランス菓子をしっかり学んだという。「シェフパティシエが食材とか街並みとか、フランスのいいところをとてもよく話してくれて。聞けば聞くほどこの目で見なきゃ、体感しなきゃと思って、フランス行きを決意しました。あの時期があったから、今の自分がいるんだと思います」(弓削さん)

フランスでの修業先選びも、「シェ・イノ」の時と同様。フランス料理の一番いい店を見たいと、ミシュラン三つ星の店12軒に手紙を出し、OKの返事がきた2軒のうち最初の1軒、パリの「ギー・サヴォワ」の一員に加わった。「お店では、一流ってこういうことなんだということを実感できました。調理人、食材はもちろんですが、ロッカールームでぼうっとしたようなサービスマンでも、営業中は自分で超一流のサービスマンの姿をイメージして最大限の『演技』をしている。仕事に携わるプライドを持っているんです」(弓削さん)

こうしてフランス料理の「王道」を歩んできた弓削さんだが、フランスから帰国後は一転、イタリア料理の世界に足を踏み入れることになる。「働きたいと思っていたフレンチレストランが一時休業中だったので、ほかに行くならイタリアンを学んでみようかと思って」

2011年、「SALONE2007」の属するイタリアンレストラングループ、サローネグループに入社。少し学ぶつもりが、入社2年目には同グループの大阪初の店「QUINTOCANTO(クイントカント)」の初代シェフを務めることになり、その後現在のポジションに就いた。「パスタなどは、本当に全く知らない料理で、この州にはこんなパスタがあるんだといった、ごく初歩から勉強しました。パスタは突き詰めがいがある。例えば、お菓子を作っているような感覚で、手打ちパスタ作りから最後の仕上げまで一貫してやれる面白みがあるんです」(弓削さん)

実は「SALONE2007」は、シェフが2人いる「ダブルシェフ」というユニークな体制を取っている。メニューは弓削さんが最初に大枠を作るが、その後、相方のシェフである青木一誠さんとのキャッチボールで、実際のメニューに落とし込んでいくのだ。青木さんも、もともとは介助犬の訓練士を目指していたというユニークな経歴。ところが、アルバイトをしていたファミリーレストランのイタリアンフェアでパスタを作ったことから、イタリア料理に興味を持った。

パスタ作りはどこが面白かったのか尋ねると「カッコいいからじゃないですかね」と屈託がない。そして、いくつか日本のイタリア料理店で働いた後、29歳でイタリアに旅立つ。「直前にお世話になったシェフがすごく北イタリアが好きで影響されました」と、修業をすることになったのはピエモンテ州の州都トリノ近郊のミシュラン一つ星店「リストランテ・ガルデニア」。現地ではあふれんばかりの未知の食材や郷土料理に魅了された。

ダブルシェフのコンビは「夫婦漫才のよう」と2人は口をそろえる。絶妙なキャッチボールで料理が完成し、コースが組み上がっていくという意味だ。青木さんが「これぞイタリア!」という料理を提案すると、弓削さんは「こうした方が楽しいのでは」と、「SALONE2007」ならではの料理としてのアイデアを出す。

「もちろん、逆のパターンもあります。1月のディナーには、青木さんがとてもおいしいイノシシのタヤリン(平たく細いリボン状の手打ちパスタで卵黄を多用する)を作ってくれて。こんなにパスタがおいしいなら、パスタを前面に出したシンプルな料理にした方がいいと。それで、パスタをシンプルにした分、前後の料理を面白くしようと考えました」(弓削さん)

同月のコース料理の、ソバ粉を使ったイタリア版クレープ「クレスペッレ」も、青木さんのアイデアにはっとした。「ソバ粉のクレープをコースに入れようと決めたものの、もともとは緩めのソースで炊いて、しっとりした状態で食べる料理のイメージだった」と弓削さん。

しかし、このメニューを任された青木さんは、ウサギ肉を巻いたクレープをオーブン焼きにした。「クレープの端の部分がパリパリとして香りが立つ。中のしっとりした部分とのコントラストが際立ち、僕のイメージとは全く違う仕上がりでした。『夫婦漫才』だから、新たなこの料理の面白みを発見できたんです」(弓削さん)

小気味のよい夫婦漫才の掛け合いのように、ダブルシェフ体制の料理で楽しみたいのは、掛け合いの妙。2人の個性がどんな風にコースとして1つのストーリーを描くに至ったのか。想像を膨らませるのも、同店の料理ならではの醍醐味だろう。

(フリーライター メレンダ千春)

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